老後破産とは何?回避できる?原因と現状から学ぶ5つの対策と最後の手段

老後破産とは何?回避できる?原因と現状から学ぶ5つの対策と最後の手段

 

「健康で長生きしたい」というのは誰もが願うことですが、生きていくうえではお金が必要です。老後に備えた資産が十分にないと「老後破産」に陥る可能性もあります。

本コラムでは、老後破産とは何か、破産するとどうなるのか、老後破産する主な原因や老後破産を起こしやすい人の特徴、破産を回避する対策などについて解説しますので参考にしてみてください。

 

 

 老後破産とは?その実態と破産後の生活

老後破産とは、定年後・高齢期に入ってから、年金収入や貯蓄だけでは日常の生活費や医療費・介護費などを賄うことができず、生活が立ち行かなくなる状態を指します。

多くの人は自分には関係のない話と考えがちですが、老後破産は特別な人だけの問題ではなく普通に働いてきた人にも起こり得る、ということが重要です。

日本弁護士連合会が公開している「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産申立てを行った人の3割弱が60歳以上となっており、高齢者の経済的困窮は社会的な問題となっています。

老後破産が起こる社会的要因、老後破産の実態、万が一破産した場合その後の生活がどうなるのかについては後ほどで解説します。

(出展:日本弁護士連合会「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」

 

単なる借金苦ではない?老後破産の本当の意味

破産と聞くと借りたお金を返済できず、どうにもならない状況をイメージされることが多いでしょう。高齢者の破産の中にはそのような理由によるものももちろんありますが、以下のような高齢者特有の理由もあります。

・収入の不足・・・退職して収入の中心が年金になったにもかかわらず、生活水準が現役時代と変わらず生活費が不足

・医療・介護費の増大・・・高額な医療費、介護保険の自己負担、施設入所費用など

・住宅費の問題・・・住宅ローンの残債や固定資産税、または家賃負担が重い

・他にも、子や孫への経済的支援など

これらの要因が複合的に重なり、老後破産が起こることとなります。

 

データで見る老後破産の実態

日本弁護士連合会が公開している「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産申立てを行った人の3割弱が60歳以上となっており、60歳代が約16.7%、70歳代以上が約11.8%となっています。

<破産債務者の年代別割合>

年代 2014年調査 2017年調査 2020年調査 2023年調査
60歳代 18.71% 16.40% 16.37% 16.71%
70歳代 8.63% 7.51% 9.35% 11.84%

 

調査記録を遡ってみると、60歳代は同程度の割合となっていますが、70歳代以上は近年増加傾向にあることが分かります。

多くの人が想定する「安定した老後」は、年金収入、貯蓄、健康、家族関係といった複数の要素が同時に維持されることを前提としていますが、現実にはこれらが維持できない状況の人が多いと言えます。先にも述べた、公的年金だけでは生活費を十分に賄えないケース、高齢期に医療費や介護費用が急増するケース、住宅関連費用が長期に渡り家計を圧迫するケース、子どもの生活支援や借金の保証、同居による生活費負担、孫への教育費援助など、善意からの支出が経済的破綻につながる例も少なくありません。

このように、老後破産は個人の浪費や失敗だけで説明できる問題ではなく、誰もが直面し得る身近な問題であると言えます。

 

もし破産したらどうなる?資産や家族への影響

もし自分が老後破産してしまった場合はどうなるでしょうか。

破産して生活が立ち行かなくなると誰もが不安になります。国は憲法で定めた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために生活保護制度を設けています。

<生活保護の受給条件>

①収入が最低生活費を下回っていること

ここでいう収入とは、年金・給与・仕送りなどあらゆる収入が対象です。最低生活費は
世帯人数・年齢・地域によって異なります。収入があっても最低生活費を下回っている場合、その差額が生活保護費として支給されます。

②資産を活用しても生活できないこと

原則として、預貯金、不動産(自宅以外)、高額な車、生命保険の解約返戻金などは生活費に充てる必要があります。例外として、住んでいる家や最低限の家財は処分不要です。

③働ける場合は働いていること

病気や高齢で働けない場合は支給対象になりますが、働けるのに働いていない場合は、原則として支給対象外になります。

※ 就職活動中・短時間労働でも考慮される

④他の制度を使っても足りないこと

生活保護を受ける前に利用できる制度は先に利用します。年金、障害年金、児童扶養手当、失業給付などを利用し、それでも足りない場合は支給対象になります。

⑤扶養義務者から援助を受けられないこと

親・子・兄弟姉妹が対象。ただし、援助が困難な場合や、関係が断絶している場合は受給が可能。

 

生活保護の申請・受給には保証人や連帯保証人は一切不要です。家族・親族・知人などが責任を負わされることはありません。また、生活保護は「給付」のため、原則として返還の義務はありません。例外として、不正受給が発覚した場合や、後から収入や資産を得られた場合は返還が必要になる場合があります。

 

 老後破産の原因

老後破産に陥る主な原因については先にも触れましたが、「収入の減少」「想定外の支出」「家計運営の問題」「資産の目減り」の4つの観点から、以下で詳しく解説していきます。

 

原因1:定年退職による収入の減少

厚生労働省が公表している令和5年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、日本の公的年金の平均受給額は、国民年金(老齢基礎年金)の全体平均:約69.1万/年(5.7万円/月)、厚生年金(老齢厚生年金 + 国民年金)の全体平均:約175.2万/年(14.6万円/月)となっています(男女別や加入期間によって個人の受給額は大きく異なります)。一方、日本の民間企業の平均給与は、国税庁の調査(2024年分)によると478万円/年(39.8万円/月)となっています。仮にこの平均給与と比較した場合の収入差は302.3万/年(約25.2万/月)となり、現役時代の年収と比べると大きく下がることが分かります。

年収が下がったにもかかわらず、現役時代と同じ生活水準を維持しようとした場合、収支は大きく赤字となり、老後資金として残しておいた貯蓄などを取り崩すことになるでしょう。収入に見合った生活水準に変えていかないと、家計が早々に破綻することになるでしょう。

 

原因2:医療費・介護費など想定外の支出増

老後破産の大きな原因の一つが、医療費や介護費といった予測しにくい支出です。定年後は収入が限られる一方で、これらの費用が家計を圧迫しやすくなります。

高齢期には病気やけがなどによる医療費が増加しやすくなります。加齢とともに、通院や入院の回数が増えると、治療費、薬代、入院・手術費用などが継続的に発生します。公的医療保険で自己負担は抑えられていても、長期化すると大きな負担になります。

また、介護費用も長期で高額になりやすい支出です。介護が必要になると、介護サービスの利用料、介護用品の購入費用、施設入所費用などが発生します。特に介護期間が長引くと、年金だけでは賄えないケースが多く、貯蓄を取り崩していくことになります。自分だけではなく、親や配偶者の介護があるとなおさらです。

けがや病気は突発的に起こるため、一時的な高額の出費、その後の継続的な出費があると、老後の資金計画が崩れる要因になります。

 

原因3:現役時代の感覚で続ける家計運営

年金生活になり収入が減ったにもかかわらず、現役時代と同じ感覚で家計を運営してしまうと、家計が赤字に陥りやすくなります。収入が減っても支出は意外と減らないことに注意が必要です。住居費(賃貸では家賃、持ち家でも修繕費・固定資産税や住宅ローン返済)は固定の支出としてかかるうえ、医療費や介護費の増加、手術や入院により突発的に高額の支出が生じる場合もあります。

このような状況において、外食や旅行の頻度を変えない、趣味や嗜好品にお金をかける、高額な保険の見直しをしない、車を複数台保有するなどをしていれば、家計が赤字になり貯蓄を取り崩すことになるため、収入に見合った生活水準に見直す必要があります。

 

原因4:退職金の運用失敗や詐欺被害

退職金を増やそうとして、知識がないままリスクの高い金融商品に投資して資産を失うケースが増えています。また、高齢者をターゲットに巧妙な手口でだまして財産を奪う投資詐欺や還付金詐欺といった事件も後を絶ちません。老後生活のための大切な財産を失ってしまわないよう注意しましょう。

以下では高齢者をターゲットにした詐欺の手口を例に挙げますので、十分注意してください。

●投資詐欺・・・公的機関・有名企業・専門家を名乗り、未公開株、新技術、海外事業などへの投資話を持ち掛け、「元本保証」や「必ず儲かる」などのあり得ない好条件を強調する。「年金の足しになる、老後も安心」などと説明し、最初は少額から始めて利益を返金し、信用させてから高額を要求する。

 

●還付金詐欺・・・市役所・税務署・年金機構などを装い、「医療費・保険料・税金が戻る」と説明。ATM操作を指示するのが決定的な特徴。よくある流れとして、電話で「還付金がある。手続きの期限が今日まで。」と焦らせる。銀行のATMへ行かせ、携帯電話で操作を指示。実際には還付を受けるのではなく、送金をさせられている。

 

「あなたが特別に選ばれた」「限られた枠しかないから急いで」など、特別感を出して判断を急がせる手口が多い。投資経験が少なく内容の真偽について判断がつかなかったり、身内や第三者に相談せずに進めてしまうと引っ掛かりやすいので、少しでも変だと感じたらまずは身近な人に相談するようにしましょう。

 

 老後破産リスクのセルフチェック

どのような人が老後破産に陥りやすいのか、ご自身で危険度をセルフチェックできるようなチェックリストを以下に紹介しますので参考にしてみて下さい。

 

あなたの危険度は?今すぐできる10項目のセルフチェックリスト

簡易な危険度セルフチェックリストを用意しましたので、「はい/いいえ」で回答して下さい。

<老後破産リスク・セルフチェック項目> 

①公的年金の受給見込み額を把握していない

②退職後も働かないと生活できないが、働く当てがない

③老後資金としての貯蓄がほとんどない

④投資の仕組みやリスクをよく理解していない

⑤住宅ローンが老後も残る予定

⑥毎月の支出額を正確に把握していない

⑦収入が減ったときの生活水準調整を考えていない

⑧医療費・介護費がどれくらいかかるか知らない

⑨貯蓄や保険で介護費用をまかなえる見込みがない

⑩子どもや家族に経済的に頼る前提で考えている

 

セルフチェック判定の目安

・0~3個「はい」:リスク低 リスクは低いですが油断せずに定期的に見直すことをお勧めします。

・4~7個「はい」:リスク中 要注意ゾーンです。早めに生活を見直し、今後の対策を考えておきましょう。

・8~10個「はい」:リスク高 老後破産の危険度が高くなっています。早急な支出の見直しを推奨します。

 

 老後破産を回避する5つの対策

老後破産を回避するためにはどうすればよいでしょうか。老後破産を回避するために、今からでも実践できる具体的な対策を5つ挙げます。

「家計」「健康・仕事」「資産形成」「住居」「相談」という5つの観点から、具体的な対策を解説していきます。

 

対策1:「家計の見える化」で現状を把握する

◆家計の見える化

家計費を見直すうえでまず大切なことは、「家計の見える化」(現状の把握)です。

家計の見える化の目的は、お金の流れを把握し、「固定費」「変動費」「無駄」を区別することです。支出がどのようになっているかを正確に把握しないと、どこに無駄があるかわからず、何から手を付けてよいのか対策のしようがありません。

一般的な手順としては以下のような方法があります。

手順

1.直近3か月分の支出を集める

・クレジットカード明細、銀行口座の入出金履歴、レシートなど

2.支出を3分類する

・固定費:通信費、保険料、家賃、サブスク

・変動費:食費、日用品、交通費

・特別費:旅行、家電、冠婚葬祭など

3.毎月必ず出ていく金額(固定費合計)を把握

・見直し効果が最も大きいのはこの部分

 

◆家計簿アプリの活用

家計簿アプリとは、収入・支出・貯金などのお金の流れをスマホやパソコンで簡単に管理できるアプリのことです。代表的なものとしては、マネーフォワード ME、Zaim、Moneytree、OsidOriなどがあります。

アプリ選びのポイントとしては、銀行・クレジットカードと自動連携できること、支出の自動分類があること、サブスクや固定費を一覧表示できること等が挙げられます。使い始めに希望の形に分類されるように調整を加えて、あとは月に1回程度は確認するように習慣化しましょう。

 

◆固定費の見直し

家計の見直しを行ううえで効果が大きいのが固定費の見直しです。

以下では特に大きな割合を占めるものについて例を挙げます。

<通信費>

通信費を見直す際のチェック項目は次のような点です。

・契約キャリア(大手/格安SIM)

・データ容量(月に何GB使っているか)

・家族割・セット割の有無

・不要なオプション加入有無

見直し手順

1.実際のデータ使用量を確認(過去3か月)

2.プランが過剰でないか判断・・・20GB未満なら格安SIMの検討余地あり

3.自宅Wi-Fiとスマホの二重契約がないか確認

4.解約可能なオプションをすぐに削除する

<保険料>

見直す前の準備として、加入中の保険証券をすべて集め、月額・保障内容・保障期間を書き出しておきます。

保険料を見直す際のチェック項目は以下のような点です。

・公的保険でカバーされる内容と被っていないか

・医療保険が「一生型(終身型)」になっていないか

・10年以上前に入った保険を放置していないか

見直し手順

「何のための保険か」を1つずつ確認
目的不明な保険は候補から外す
必要最低限の保障額に減額、または解約
比較は必ず複数社で行う
<サブスクリプションサービス(サブスク)>

自分でも何を利用しているか忘れている場合がありますので、Apple/Googleアカウントのサブスク一覧で確認するか、家計簿アプリの「毎月同額支出」やクレカ明細の定額請求などから利用状況を洗い出しましょう。そのうえで本当に必要なサービスか否かを判断し、使わないものはすぐに解約しましょう。

解約の判断基準として、過去1か月で使ったか、代替サービスはないか、「あれば便利、いつか使う」は結局使わない。

見直し手順

・全サブスクを一覧化

・使用頻度を3段階で分類(週1以上/月1以下/未使用)

 → 未使用・月1以下は即解約

・必要なものだけ残す

 

対策2:健康寿命を延ばし、長く働き続ける

健康寿命とは、「介護や大きな制限なく、自立して元気に生活できる年数」のことです。健康寿命を延ばし、長く働き続けることは、個人にも社会にも大きな価値があります。

■健康寿命を延ばすことの大切さ

健康で元気でいられれば、趣味や旅行、家族との時間を楽しむことができ、充実した老後を送ることができるでしょう。長生きすること=苦しいではなく、自分らしい生活を守ることができます。また、病気や要介護の期間が短ければ医療費・介護費の負担を減らすことができ、自分自身だけでなく家族の負担も軽減されます。さらに、社会全体の医療・介護費の抑制にもつながります。

■長く働き続けることの大切さ

 長く働き続けることには次のようなメリットがあります。

①経済的な安定・・・安定した収入が続くことで、年金への依存を減らし、貯蓄の取り崩しを遅らせることができる。また、将来の金銭的な不安が軽減される。

②心身の健康維持・・・仕事による適度な運動や思考、人との交流を保つことで、生きがいや社会とのつながりを維持し、認知症やうつ病の予防にも効果がある。

③社会への貢献・・・経験や知識を次世代へ伝えることができ、労働力不足の解消に貢献できるなど、社会全体の活力を保つ一因になれる。

 

健康だから長く働ける、長く働き続けることで健康を保てる、健康でいることと働くことは深くつながっているのです。

 

対策3:NISA・iDeCoで賢く資産形成する

日本政府は「貯蓄から投資へ」を掲げ、早期・長期の資産形成を促進しています。その背景としては、少子高齢化で公的年金だけでは老後資金が不足しやすい状況があるためです。つまり、老後資産の形成は日本政府が国民に自助努力での資産形成を促していると言えます。

政府主導の主な制度としてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)があり、税制優遇制度を活用し、少額からでも始められる投資を推奨しています。

主な特徴は以下の通りです。

■NISA(少額投資非課税制度)

・投資による利益が非課税

・2024年から新NISA(恒久化・非課税枠拡大)

・資産形成の中心的制度

■ iDeCo(個人型確定拠出年金)

・掛金が全額所得控除

・運用益も非課税

・受取時も税制優遇あり→ 節税効果が非常に大きい

・老後資産を確実に貯めたい人に向いている

 

<資産形成の基本思想>

「長期・積立・分散」が重要とされる理由は次の通りです。

【長期】

・投資は時間を味方につける行為

・短期の値動きは予測不能だが、長期では経済成長の恩恵を受けやすい

・複利効果により、10年以降で差が大きくなる

【積立】

・毎月同額を投資することで、高い時は少なく、安い時は多く買う「ドルコスト平均法」が働き平均購入単価が平準化される

・感情に左右されない仕組み作り

【分散】

・国・資産・時期を分ける

・「1つがダメでも全部はダメにならない」状態を作りリスクを分散する

 

投資に「絶対儲かる」はありません。投資した元本が減ってしまう「元本割れ」のリスクが必ずあることは忘れないで下さい。特に生活資金まで投資に充てて元本割れになると、将来の生活資金が不足する可能性があります。投資は自身が許容できる範囲内で無理なく行うように心掛けて下さい。

 

対策4:住まいにかかる費用を最適化する

生きていく上で住居費は必ず必要になります。特に退職後は収入が減り、年金+貯蓄の取り崩しになるため、住宅ローンが残っていると毎月確実にかかる固定費になります。この住居費を抑えるほど老後の生活は安定するため、可能であれば定年前に住宅ローンの繰上返済をし、完済するかローン残高を減らしておくことが重要です。特に変動金利で借入している場合、金利の上昇局面では収入が減っているのに返済金額が増えるという状況になってしまうため、ローン残高を可能な限り少なくすることで金利上昇リスクを減少させることも重要になります。

定年前の繰上返済は老後の固定費リスクを減らす大きな手段です。但し、手元資金に余裕がなくなってしまっても生活が不安になります。完済にこだわらず、余裕をもって返済できる金額まで減らすことを目指しましょう。金融機関によっては返済金額の軽減に応じてもらえる場合もあります。返済期間は延びますが、月々の返済を軽減することで生活にゆとりを持たせることができます。他にも、持ち家を資金化する方法として、「リースバック」や「リバースモーゲージ」という選択肢もあります。今の家に居住したまま持ち家を資金化する手段です。(詳しくは別コラムで解説していますのでご参照ください。)

【初心者向け】リースバックとは?その仕組みやメリット・デメリットを徹底解説

リバースモーゲージとは?仕組みやリスクを解説!他の資金調達との違いまで

老後資金を確保する方法は退職前に様々なパターンをシミュレーションしておくと良いでしょう。

 

対策5:一人で抱え込まず専門家や家族に相談する

お金の悩み(家計・借金・生活費・金融トラブルなど)について相談したいが、どこに相談してよいか分からない・費用はかけたくないという時に、無料で相談できる相談先があります。相談内容によって最適な窓口が異なるので、目的に合わせて選んで下さい

①ファイナンシャルプランナー(FP)への無料相談

FPは、中立的に家計・貯蓄・保険・教育費・老後資金などのお金全般の相談にのる専門家です。自治体や非営利団体が主催する無料相談会を活用できます。

 FPへの相談で扱えること・・・家計の見直し、生活設計、借入・返済計画策定など

※無料相談は自治体のイベントや公的機関との連携で開催される場合があります(FP協会など)

注意点:すべての「無料相談」が中立的で無料のまま終了するものとは限りません。紹介型のFPサービスでは後から有料商品を勧められることもあるので、主催者(自治体・NPOなど)の信用性を確認しましょう。

②自治体が提供する相談窓口(無料)

各市区町村では、生活相談・家計相談・借金相談などの無料相談窓口を設けています。役所に行って「生活相談」「多重債務相談」「家計相談」と言えば案内してもらえます。

※自治体ごとに内容・頻度は異なるため、まず役所の窓口で相談日時を確認しましょう。

③法テラス(日本司法支援センター)

法テラスは、借金・債務整理・契約トラブル・消費者問題などの困りごとについて、 法律の専門家につなぐ総合案内窓口です。経済的に余裕がない人は、弁護士・司法書士への無料法律相談(最大3回・1回30分程度)が利用できます。条件に合えば専門家の費用の立替も可能。

ポイント・・・法律の悩みだけでなく、「どこに相談したらよいか分からない」ときの最初の窓口としても有効

 

誰しもお金の悩みは他人に知られたくないものです。ただし、問題が深刻化してからでは手遅れになってしまう可能性もあります。そうなる前に、早めに専門家や信頼できる家族に相談しましょう。

 

万が一の時に知っておきたい公的支援と最終手段

生活が困窮した場合の相談先や様々な公的制度について触れてきました。それでもどうしても生活が困窮した場合の最終手段として、「生活保護制度」があります。

生活保護制度とは、日本国憲法第25条に基づき、生活に困窮する人に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。

次のような状況で、資産や能力、他の制度を活用しても生活が成り立たない場合に対象となります。

・収入が最低生活費に満たない

・病気や障害、高齢、失業などで働くことが難しい

・預貯金や不動産など活用できる資産がない

・年金・手当・扶養など他の支援を受けても不足がある

●主な扶助の種類・・・

生活扶助(食費・光熱費など日常生活費)、住宅扶助(家賃(上限あり))、教育扶助(学用品・給食費など)、医療扶助(医療費(原則自己負担なし))、介護扶助(介護サービス費用)など。

●相談窓口・・・

市区町村の福祉事務所(生活保護担当)、生活困窮者自立相談支援窓口、社会福祉協議会、弁護士・司法書士(法テラス等)があります。

※申請は国民の権利です。相談のみでも可能です。相談したこと自体で不利益を受けることもありません。

 

■参考:年金の繰下受給制度(公的支援制度)を利用して将来の受給額を増やす方法

年金の繰下受給とは、本来の受給開始年齢(原則65歳)よりも受け取り始める時期を遅らせることで、年金額を増やせる制度。

対象となるのは老齢基礎年金・老齢厚生年金で、それぞれ別々に繰下げすることも可能です。

・繰下げできる年齢と増額率

繰下げ可能な年齢・・・66歳~75歳まで(1ヶ月単位で選択可能)

年金額の増額率・・・1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額

最大75歳まで繰下げ → 84%増額

例)70歳まで繰下げた場合→ 60ヶ月(5年)×0.7%=42%増額

75歳まで繰下げた場合→ 120ヶ月(10年)×0.7%=84%増額

※増額された年金額は一生続きます。

【注意】一度繰下受給を開始すると、後から変更できません。

・繰下受給のメリット・デメリット

メリット

・生涯受給額が増える可能性が高い(長生きするほど有利)

・受給開始後は安定した高い年金収入

・働き続けて収入がある人は税・社会保険の調整がしやすい場合もある

デメリット

・繰下げ期間中は年金を一切受け取れない

・早く亡くなった場合、総受給額が少なくなる可能性

・生活費や医療費を別の収入・貯蓄で賄う必要がある

繰下受給が向いている人

・65歳以降も働く予定がある

・貯蓄に余裕があり、当面年金がなくても生活できる

・長寿の家系などで長く生きる可能性が高い

・老後の収入をできるだけ安定させたい

 

 よくある質問

老後破産しやすい人の特徴は何?

次のような点に該当すると老後破産する可能性が高くなります。

公的年金の受給見込み額を把握していない、退職後も働かないと生活できないが働く当てがない、老後資金としての貯蓄がほとんどない、投資の仕組みやリスクをよく理解していない、住宅ローンが老後も残る、毎月の支出額を正確に把握していない、収入が減ったときの生活水準調整を考えていない、医療費・介護費がどれくらいかかるか知らない、子どもや家族に経済的に頼る前提で考えている。

 

65歳でいくら貯金しておけばいい?

目安として、単身世帯で1,000~2,000万、夫婦二人世帯で2,000~3,000万と言われています。

考え方として、月々の生活費と年金の差額×20~25年分+まとまってかかるお金(医療・介護費、自宅修繕費、家電製品の買い替え、葬儀・お墓の費用、子や孫への援助など。

(例) 仮に差額月5万×300ヶ月=1,500万

まとまってかかるお金=500万程度

合計2,000万程度

※金額はあくまでも目安であり、賃貸か持ち家か、住宅ローンの有無、年金額、65歳以降も仕事をするかなど、個々の条件により大きく変わりますので注意してください。

 まとめ

老後破産は一部の人だけの問題ではなく、誰もが直面し得る身近な問題になっています。そうであるからこそ、適切な事前準備と対策を行い、リスクを軽減することが重要になります。問題を先送りせず、家計費の分析を行い、固定費を見直し、自身の健康管理にも目を向けるなど、出来ることから始めていきましょう。

老後の不安は誰にでもあります。不安だから何もできないではなく、不安を軽減する行動をしていきましょう。また、どうしても困ったら一人で抱え込まず、分からないことは信頼できる家族や専門家に相談するようにしましょう。

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