マンション不動産担保ローンのメリット・デメリット、利用時のポイント解説

マンション不動産担保ローンのメリット・デメリット、利用時のポイント解説

 

このコラムでは、不動産担保ローンの内、担保物件がマンションの場合についてお話します。不動産担保ローンの仕組みや住宅ローンとの違い、マンション担保ローンのメリット・デメリット、申し込みから融資実行までの流れ、審査のポイントなどについて解説していきます。

 

 

 マンション担保ローンとは?仕組みや住宅ローンとの違いを解説

マンション担保ローンとは、不動産を担保に融資を受ける不動産担保ローンの中でも、担保物件がマンションである場合のことを指します。不動産担保ローンの仕組みや、住宅ローンとの違い、融資額の目安などを順に解説します。

 

マンション担保ローンの仕組み

まず、不動産担保ローンの仕組みについて。不動産担保ローンとは、不動産を担保にして借り入れをするローン形態の一つです。戸建やマンションなどの居住用不動産はもちろん、更地や駐車場などの土地、アパートやビルなどの収益物件を含めた、幅広い不動産を担保にすることができます。金融機関によりますが、ご自身が所有する不動産だけではなく、ご親族・法人役員・法人名義で所有している不動産やこれから購入する予定の不動産を担保にすることも可能です。マンション担保ローンとは、この不動産担保ローン融資の中で、担保物件がマンションのことを指しています。一般的には戸建やアパートを担保にする場合と大きな違いはありません。

マンションをはじめとした不動産の評価方法については、当社コラムの「不動産担保ローンの担保評価額の決定方法とは?目安の算出方法について詳細に解説」や「不動産担保ローンの審査基準とは?審査通過のためのポイントや借入までの流れを解説」のページをご参照ください。

 

住宅ローンとの違いを比較

住宅ローンとは、居住用不動産の購入や建物の建築・増改築をする時に利用できるローンのことです。原則として、契約者本人や家族が居住するための住宅を担保とする商品であるため、賃貸中の不動産や遊休地を担保として住宅ローンを利用することはできません。不動産担保ローンとの主な違いについては下記のとおりです。

 

  住宅ローン 不動産担保ローン
対象者 個人 個人・法人
資金使途

居住用不動産の購入

居住用の建物の新築・増改築

原則として資金使途自由

金利

(2025年7月現在)

変動金利 年0.5%台~

固定金利 年1%台後半~

変動金利 年0.9%台~

固定金利 年1.9%台~15%

審査基準 個人の信用力を重視

個人・法人の信用力

担保不動産の評価額

借入期間 最長35年 最長30~35年

 

自身の自宅として居住用マンションを購入する以外は、マンションを担保に借入れを行う不動産担保ローンということになります。

 

マンションでいくら借りられる?融資額の目安

マンションの評価額は、立地、分譲会社、築年数、間取り、眺望、管理・修繕状況などにより同じ建物内でも評価額に差があります。では、借入可能額はどのくらいになるでしょうか。

不動産担保ローンの借入可能額は、一般的に担保不動産の評価額の60~80%が限度とされています。例えば担保評価額が1億円で担保掛目が70%なら、借入可能額は最大7,000万円となります。この担保掛目は、金融機関がリスクを管理するための重要な基準であり、物件の個別要因や申込者の信用情報などを総合的に判断して設定されます。また、担保掛目の基準には金融機関により差があります。都市銀行や大手信託銀行は、審査が厳しい分、優良な不動産に対しては高めの掛目(70~80%)を設定することがあります。一方、地方銀行や信用金庫、ノンバンク系では、エリアや顧客属性に応じて柔軟に対応する場合もありますが、リスクを抑えるために50~70%程度にとどめることも少なくありません。つまり、同じ不動産でも、どの金融機関に申し込むかによって借入可能額が異なるため、複数の金融機関を比較検討することが重要です。

 

 マンション担保ローンのメリット

マンションを担保に融資を受けるメリットにはどのようなものがあるでしょうか。主なメリットを4つ紹介します。①金利が低い、②高額な借り入れが可能、③資金使途が原則自由、④長期の返済計画が立てやすい。以下、解説していきます。

 

①金利が低い

不動産を担保にするため、無担保ローンと比べると低金利での借り入れが可能です。無担保のカードローンやビジネスローンの場合、金利の幅が1%台~18%位となっていますが、不動産担保ローンの場合は概ね1%台~10%位となっています。不動産担保ローンのの方が全体的に金利の幅が狭くなっています。同じ借入れ年数で金利が低ければ、返済総額が少なくなるため、重要なポイントです。

  無担保ローン 不動産担保ローン

金利

年1%台~18%位 年1%台~10%位

 

例えば、500万円を借りた場合、年利10%の無担保ローンでは年間利息は約50万円、対して不動産担保ローンで年利3%なら約15万円となり、大きな差が生まれます。

 

②高額な借り入れが可能

無担保ローンには銀行系や消費者金融系などがあり、借り入れ限度額は概ね500~1,000万円程度となっています。但し、実際には借主の年収による借入限度額が設けられており、借入額の合計が銀行系で年収の1/3~1/2以内、消費者金融などノンバンクは年収の1/3以内を目安にしているところが多いようです。

一方、不動産担保ローンでは、担保となる不動産の資産価値が考慮されるため、借り入れ限度額が高くなります。取り扱う金融機関により異なりますが、不動産の評価額によっては、最大10億円位の資金でも借り入れすることができます。マンション価格はここ数年で大きく値上がりしており、一戸数億円という物件も多くなりました。担保によってはマンション一戸でも数千万~数億円の借入が出来る可能性があります。

 

③資金使途が原則自由

住宅ローンの場合、資金使途が「居住用不動産の購入や増改築」に限定されますが、不動産担保ローンは原則として資金使途に制限がありません。運転資金や開業資金のような事業性資金、納税資金、リフォーム資金、教育資金、投資資金など幅広い資金ニーズに対応することができます。毎月の返済負担が重い既存の借り入れを長期返済にし、返済金額を減らしたいというご希望も叶えることができるかもしれません。所有している不動産を上手に使って資金調達に活かすことが出来ます。

 

④長期の返済計画が立てやすい

不動産担保ローンでは、資金使途にかかわらず返済期間を長期に設定することができます。銀行融資の場合、法人・事業者向けの運転資金は5年程度、設備資金は耐用年数までとなっているのに対し、不動産担保ローンの場合には20年~30年(金融機関によっては35年)の返済期間を設けています。返済期間が長ければ、毎月の返済額を低く抑えることができるため、余裕を持った返済計画を作ることができます。ただし、返済期間が長くなると返済総額は増えますので注意が必要です。毎月の返済金額を低く抑えつつ、余裕ができた時に繰り上げ返済ができるような金融機関を選びましょう。

以下に返済シミュレーション例を記載しますので参考にしてください。

例)借入金額1,000万円、金利7.8%固定、元利均等返済

 

借入期間 月々の返済額 返済総額
20年 82,403円 19,776,720円
25年 75,861円 22,758,300円
30年 71,987円 25,915,320円

 

 マンション担保ローンのデメリットと注意点

不動産担保ローンは、まとまった資金を低コストで調達したい場合に非常に有利です。しかし、デメリットも理解した上で、利用を検討することが重要です。デメリットとしては次のようなものがあります。①万が一返済が出来ない場合に担保マンションを売却する必要がある、②融資実行までに時間がかかる、③手数料などの諸費用がかかる。以下、解説していきます。

 

①返済できないとマンションを失うリスク

不動産担保ローンは住宅ローンと同じく不動産を担保にしています。どちらのローンの場合でも、金融機関は担保となる不動産に抵当権や根抵当権の設定登記をして融資を行います。返済が滞ったとしてもすぐに競売にかけられるわけではありませんが、支払いの延滞が続き、回収が困難と判断された場合には、金融機関から一括返済の督促状が届き、不動産の競売手続きを申し立てられる可能性があります。不動産競売で売却されると、その売却代金の中から金融機関へ元金や利息などの支払いが行われ、余剰資金は所有者の手元に残ります。ただ、不動産競売による売却の場合、一般的に市場価格より低い価格で落札されることが多く、手続き費用などもかかるため、手元に残る資金は多くないかもしれません。そのような事態を招かないためには、余裕を持った返済計画を立てることが重要です。

 

②融資実行までに時間がかかる

審査が即日完了する無担保ローンとは違い、不動産担保ローンではお借主様だけではなく担保になる不動産の調査も行います。融資金額も高額になることが多いため、返済能力も精査しなければなりません。そのため、審査の早いノンバンクでも最短で3営業日から、多くの場合は1~2週間程度の時間がかかりますし、審査が厳しい銀行や保証会社付きの融資になると1ヶ月以上の審査期間がかかる場合があります。資金を急いでいる場合には、必要なタイミングに間に合わない可能性がありますので特に注意が必要です。

 

③手数料などの諸費用がかかる

一般的に不動産担保ローンで融資を受ける際には手数料がかかります。概ね融資金額の2%前後としている金融機関が多いようです。その他に、抵当権や根抵当権の設定登記費用、契約書に貼る収入印紙代などの諸費用がかかります。また、金融機関によっては、不動産の調査費用・鑑定費用もかかる場合があります。

以下に参考例を記載します。

 

  費用 備考
融資事務手数料 融資金額に対し0~3.3%程度 各金融機関やローンの種別により異なる
登記費用 数万円~数十万円 契約金額により異なります。登録免許税という税金と司法書士報酬を合算した金額となります。
収入印紙代 数千円~数万円 契約金額により異なります。

 

 マンション担保ローンの審査

マンション担保ローンの審査で特に重要な点は、「申込者の返済能力が十分にあるか」、「不動産の価値が担保として十分にあるか」の2点です。

 

審査で見られる2大ポイント

まず、申込人の返済能力について。法人であれば決算内容、キャッシュフローの内容、今後の事業見通しなどが重要になります。また、個人の場合、個人事業者であれば法人と同じような点がポイントになりますし、給与所得者であれば収入に対するローンの返済比率、勤続年数、年齢などを確認し、安定して返済できる条件が備わっているのか審査します。また過去の返済履歴や今現在の借入状況も審査の対象になるため、これまでに返済が滞った履歴があると審査が通りにくくなることがあります。

次に、担保となる不動産の価値について。土地と建物を別に評価することになります。土地については公示地価や基準地価、路線価、現在の取引事例などをもとにして評価額を計算します。建物については、新たに建物を新築した場合にかかる費用(再調達価格)を算出し、延べ床面積と法定耐用年数を用いて、建物の評価額を計算するのが一般的です。

 

審査に通りにくい主な理由

不動産担保ローンは、申込者の信用力を担保によって高めることが出来るため、審査が有利になるのは確かですが、実際には担保を差し入れても審査に通らないケースも珍しくありません。各金融機関によって審査基準が異なるため一概には言えませんが、審査が通りにくい理由としては、担保評価不足、信用情報に延滞歴などがある、売上げや収入が不安定である、などの理由が考えられます。不動産担保ローンとはいえ、不動産だけを審査している訳ではありませんので、売上げや収入の確実性がどのくらいあるのか、これまでの借入において延滞等の履歴はないかというのは、重要な審査ポイントです。また、担保の価値が十分でなければ不動産担保ローンではなく信用取引と同じになってしまいますので、担保価値が低いとやはり審査は通りにくくなります。

 

 マンション担保ローン利用までの5ステップ

マンション担保ローンを利用する際の大まかな流れと、所要日数の目安は以下の通りです。※各金融機関により所要日数は変わりますのでご注意ください。

①相談・事前審査(即日~1週間)

②本申し込み

③本審査・物件調査(2営業日~2週間以上の場合もある)

④ご契約手続き

⑤ご融資実行

 

ステップ1:金融機関への相談・仮審査

審査を受けるためには、金融機関へ問い合わせ、仮審査の申し込みをすることがスタートとなります。金融機関へは、「窓口に行って相談する」「直接電話をする」「ホームページ内の申し込みフォームを利用する」などの方法があります。窓口や電話でのご相談の場合は、お客様のご要望を伺った上で、必要なことをヒヤリングする形となります。

相談時に準備しておく情報としては、「お客様の情報」「年収」「家族状況」「会社情報」「資金使途」「担保にする不動産の情報」「借り入れ状況」などは最低限必要となりますので、審査をスムースに進めるためにも予め準備しておくと良いでしょう。

 

ステップ2:本申し込み・必要書類の提出

仮審査の通過後、担当者と面談し、本申し込みを行います。来店型・訪問型と対応は金融機関によって異なります。金融機関によっては、郵送やインターネットのみしか受け付けていないこともあるのでご注意ください。本申し込みに必要な書類は下記のとおりです。

≪各金融機関で共通の必要書類≫

・本人確認書類(運転免許証・パスポート・マイナンバーカード等)

・収入・売上のわかるもの(確定申告書・源泉徴収票等・決算書・事業計画書・事業内容がわかるもの)

・借り入れ状況の分かるもの(ローンの返済予定表など)

・認印

≪金融機関によっては必要な書類≫

「印鑑証明書」「実印」「納税証明書」「土地建物評価証明書」「不動産登記簿謄本」「公図」「地積測量図」「建物図面」「(法人の場合)商業登記簿謄本」

その他、担保となる不動産がマンションであれば「間取図」や「管理費・修繕積立金の金額がわかるもの」、不動産購入の場合には「売買契約書」や「重要事項説明書」、建物新築・増改築の場合には「工事請負契約書」、担保となる不動産が収益物件であれば「賃貸借契約書」、などが必要になります。

事前に全ての書類が必要になるか、面談後に提出する方法でも良いかは、金融機関によって異なります。また、申し込み内容によっては上記以外の書類が必要になることもありますので、担当者に確認するようにしましょう。

 

ステップ3:審査・物件の現地調査

本申し込みを経て、審査が行われます。金融機関では一般的に「与信審査」と言われており、審査内容は「返済能力の有無」を判断することとなります。金融機関により、法人と個人では異なった基準を設けています。

併せて、担保になる不動産の調査・評価も行われます。不動産の現地調査を行い、利用状況は申告通りか、法令上の問題点が無いかなどを確認し、不動産価値がどのくらいになるのか査定を行います。算出方法についても金融機関によって異なります。

 

ステップ4:契約手続き

本審査が通った後、決定した借り入れ条件の説明を受けます。融資金額、金利、期間、手数料等の諸条件の説明と、契約時に必要となる書類の説明がされます。内容で不明な点があれば、必ず質問し確認しましょう。必要書類を持参の上、金融機関へ訪問し契約します。不動産担保ローンで借入をする場合、金銭消費貸借契約書のほかに(根)抵当権設定契約書を締結し、担保になる不動産に(根)抵当権を設定します。契約時にも契約書の内容について説明がされます。契約時には、事前に説明を受けた借り入れ条件に相違が無いかはもちろんですが、「期限の利益」を喪失してしまう条項は特に重要ですのでよく確認しましょう。不明点があれば遠慮なく質問をし、分からないまま契約をすることが無いようにしましょう。

 

ステップ5:融資実行

金融機関との契約が無事に終わりましたら、融資実行日にお客様が指定した銀行口座に融資金が振り込まれます。それと併せて、担保となる不動産にあらかじめ合意した抵当権または根抵当権の登記が設定されます。これにより担保ローン融資が無事に完了したことになります。

金融機関により異なりますが、最初の相談から融資の実行まで、ノンバンクなどの早いところで3営業日~、審査に時間がかかる銀行などの場合は2週間~1ヶ月以上かかることもあります。

 

 よくある質問

不動産担保ローンの審査が通らない理由は何ですか?

審査は、主に与信と担保不動産の2点があります。与信は本人の収入や年齢、返済負担率などが一定の基準を満たしているのか、不動産は融資の担保として十分な価値があるのかを審査します。この時点で基準を満たしていないと判断されると、仮審査の段階で落ちることになるでしょう。個人の信用情報も確認されるため、過去に長期の延滞や破産した経歴などがあると、仮審査の時点で断られることもあります。

 

絶対に借りられる不動産担保ローンはありますか?

「絶対に借りられる」不動産担保ローンはありません。仮に「絶対融資します」などとうたっている融資会社があるならば、信用しない方が良いでしょう。まともな金融機関であれば必ず審査がありますので、絶対融資しますとは言いません。

ただし、以下の点を満たしていれば審査が通る可能性はかなり高くなると考えられます。

  1. 返済計画をしっかり整理し、審査担当者に説明できる状態にする。
  2. 書類・納税状態を完璧にしておく。
  3. 借入希望額は担保価値の50%以内に抑える。
  4. 複数金融機関へ同時申し込み。審査基準が比較的柔軟なノンバンクや信販系も視野に入れる。

融資審査に絶対はありません。融資を受けたいと考えている場合は、余裕をもって金融機関に相談しましょう。

 

 まとめ

マンション担保ローンの審査は、お客様自身に対する与信審査と、不動産に対する審査との2本立てになっています。但し、金融機関の審査基準は公表されていないため、本審査が下りるまで安心できないと感じる方は多いかもしれません。

審査基準は金融機関によって異なるため、万が一に備えて複数の金融機関に相談し、必要書類や申し込み方法を確認しておくようにしましょう。審査基準について明確な返答が得られないとしても、借り入れについてアドバイスや柔軟な対応をしてもらえることもあります。

不動産担保ローンは長期間の契約になることが多く、金融機関との付き合いも長くなります。融資条件はもちろん大切ですが、最終的には、信頼関係を構築できると感じた金融機関に相談するのが良いでしょう。

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