個人事業主の年金は厚生年金の代わりに何がある?種類と節税対策を解説

個人事業主の年金は厚生年金の代わりに何がある?種類と節税対策を解説

 

個人事業主は原則として国民年金に加入しますが、将来の受給額を増やすための対策を検討されている方も多いと思います。

本章では、国民年金に上乗せできる年金制度について説明していきます。各年金制度によって節税額・受給額の違いがありますので、各制度の仕組みを理解した上で自分に合った年金プランを選択することが大切です。

 

 

個人事業主が厚生年金に加入できない理由は?

日本の公的年金制度では、加入する年金が「働き方」で分かれています。

自営業・フリーランス・個人事業主 → 国民年金(第1号被保険者) 

会社員・法人役員 → 厚生年金 

という区分になっています。

 

なぜ個人事業主は厚生年金に入れないのか。

それは、厚生年金がもともと「会社などに雇われる人向け」の制度として設計されているためです。特徴は次の通りです。

・保険料を会社と従業員で半分ずつ負担する 

・給与額に応じて保険料・将来の年金額が決まる 

・事業主が給与から天引きして納付する 

つまり、「雇用主」と「雇われる人」がいる前提の制度です。

 

個人事業主は自らが事業主であるため、会社員のような「雇用関係」がありません。そのため、

・保険料を折半する相手がいない
・給与から天引きする仕組みがない
・社会保険の事務を行う事業所が存在しない

といった理由から、原則として厚生年金には加入できません。

 

<例外あり>

個人事業でも、従業員を雇って一定条件を満たすと、事業所として厚生年金の適用対象になります。たとえば常時5人以上の従業員を使用する一部業種では、社会保険への加入義務があります。

 

個人事業主が厚生年金の代わりに加入できる5つの制度

個人事業主は会社員のような厚生年金に加入できないため、自分で老後資金を準備する必要があります。代表的な代替制度は次の5つです。

 

国民年金:日本の公的年金制度の一つで、基礎的な年金です。日本に住む20歳以上60歳未満の人が原則加入する年金制度です。

国民年金基金:国民年金に上乗せして受け取れる公的な年金制度。掛金は全額所得控除。 

iDeCo:自分で積み立て・運用する私的年金。節税メリットが大きい。 

小規模企業共済:個人事業主向けの“退職金制度”として人気。廃業・引退時に受取可能。 

付加年金:国民年金に月額400円を追加して、将来の年金額を増やせる制度。 

 

それぞれ「節税重視」「元本保証」「自由度」「受取時期」が異なるため、

・節税を最大化したい → iDeCo + 小規模企業共済 

・公的年金を増やしたい → 国民年金基金 + 付加年金 

という組み合わせがよく使われます。また、柔軟に資産運用したい人は、新NISAとの併用も有効です。

以下、各制度について詳しく説明いたします。

 

①国民年金(基礎年金)

日本年金機構 が運営する、日本の公的年金制度の土台です。

20歳〜60歳の全国民が原則加入します。

基本構造:日本の年金は「2階建て」と言われ、1階部分:国民年金(全員共通) 、2階部分:厚生年金(会社員など) となっています。

 

国民年金は「第1号被保険者」となる自営業・フリーランス・学生などが加入対象となり、保険料の全額を自分で納付することになります。 

 

<保険料の仕組み>

国民年金は「定額制」です。所得に関係なく、基本的に同じ保険料を支払います。

特徴

・保険料は毎年度見直される

・40年間(20〜60歳)納付で満額に近づく

・ 免除・猶予制度あり 

 

<国民年金の給付内容>

1. 老齢基礎年金

最も基本となる老後年金です。条件は原則10年以上の加入期間が必要で 通常65歳から受給が開始されます。 

特徴:納付期間が長いほど増える。 満額は40年納付ベース。 

 

2. 障害基礎年金

病気やけがによって一定以上の障害状態になった場合に支給される年金です。初診日に国民年金の被保険者であることなどの要件を満たし、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。支給対象となるのは、原則として障害等級1級または2級に該当する方です。

特徴:若い世代でも対象。 子どもの加算あり。 

 

3. 遺族基礎年金

加入者が死亡した場合、遺族に支給されます。主な対象者は、子のある配偶者、子どもとなります。 

特徴:子どもの人数で加算あり 

 

②国民年金基金

国民年金基金は、主に自営業者やフリーランスなど「国民年金(第1号被保険者)」の人向けに作られた、公的な上乗せ年金制度です。
老後の「基礎年金だけでは不足しやすい部分」を補う目的があります。

 

<基本の仕組み>

国民年金基金は、毎月「掛金」を払って、65歳以降に「年金」として受け取る制度です。

イメージ:国民年金(1階部分)、国民年金基金(2階部分・上乗せ)という構造であり、

会社員が加入する厚生年金の“代わりの上乗せ”を、自営業者向けに用意した制度と考えると分かりやすいです。

 

<加入できる人>

主に「自営業」「フリーランス」「個人事業主」「農業・漁業従事者」「学生納付特例を使っていない第1号被保険者」など。

逆に、「会社員(厚生年金加入者)」「公務員」「厚生年金加入中の配偶者(第3号)」は原則加入できません。

また、iDeCoの掛金と合算した上限があります。

 

<受け取り方>

複数の「型(A型・B型など)」を組み合わせて設計します。

大きくは「終身年金(生涯受け取れる)」「確定年金(10年・15年など一定期間)」 があります。一般的には「終身年金」が中心です。

 

<掛金>

加入時の「年齢」「性別」「選んだ給付タイプ」で決まります。

特徴は、掛金が基本的に加入時点で固定されることです。つまり、若いうちに入るほど掛金が安く、後から入り直すと高くなるという保険的な仕組みです。

 

<税制メリット>

掛金は「社会保険料控除」として、全額所得控除になり所得税・住民税の節税効果があります。これはiDeCoの「小規模企業共済等掛金控除」とは別枠です。

 

③付加年金

付加年金は、日本年金機構 の国民年金(第1号被保険者)が利用できる「上乗せ年金」です。毎月の国民年金保険料に400円を追加で納めることで、将来の老齢基礎年金に加算されます。

 

支払う額:国民年金保険料 + 400円/月 (4,800円/年)

将来もらえる金額:老齢基礎年金に次の額が毎年上乗せされます。

付加年金額=200円×付加保険料納付月数

(例)1か月納付 → 年額200円増 

   10年(120か月)納付 → 年額24,000円増 

加入できる人:主に自営業・フリーランス・学生・無職などの「国民年金第1号被保険者」

加入できない人:会社員・公務員などの「厚生年金加入者」及び「第3号被保険者」、 「国民年金基金 加入者」(付加年金と国民年金基金は併用不可) 

 

④iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は、日本の個人型確定拠出年金で、自分で積み立てて自分で運用する老後資金の制度です。

 

<基本の流れ>

①毎月お金を積み立てる(掛金最低5,000円〜)

②自分で運用する⇒投資信託や定期預金などから選んで運用 

③60歳以降に受け取る⇒一時金 or 年金形式で受け取れる 

 

<3つの大きな特徴>

① 税金が大きく優遇される

掛金→全額所得控除(節税)、運用益→非課税、受取時→控除あり(税負担軽い) 

※つまり「積む・増やす・受け取る」すべてで税メリットあり

② 自分で運用方法を選ぶ

元本確保型(定期預金など)、投資信託(株式・債券など) 

※リスクを取れば大きく増える可能性あり

③ 原則60歳まで引き出せない

 

イメージ:節税しながら投資で増やす老後資金 

向いている人:節税したい人、老後資金をしっかり準備したい人、長期投資ができる人 

注意点:60歳まで基本引き出せない。元本割れの可能性あり。手数料が少しかかる。 

 

⑤小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や会社役員向けの「退職金制度」です。
国の機関である 中小企業基盤整備機構 が運営しています。

 

<仕組み>

1. 毎月積み立てる

掛金:1,000円〜70,000円(500円単位)で自由に設定

納付方法: 原則、個人預金口座からの口座振替。「月払い」「半年払い」「年払い」が選択可能。

 

2. 掛金が全額所得控除

例:例えば年間84万円(7万円×12ヶ月)掛けると、課税所得が84万円減る⇒所得税・住民税が軽くなる。 

 

3. 共済金の受け取り

受取額: 掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80%〜120%相当額が受け取れます。

元本保証の目安: 240か月(20年)以上の加入で、100%以上の返戻率となります。

受取方法: 「一括」「分割」「併用」から選択。廃業・退職時は「退職所得」または「公的年金等の雑所得」として扱われ、税制優遇があります。

 

4. 注意点

240か月(20年)未満の任意解約の場合、掛金合計を下回る(元本割れ)可能性があります。加入資格は従業員数20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主や役員です。

 

各制度の比較/自分に合った制度の選び方

前条で説明した各制度を下記表のとおりまとめました。自分に合った制度を選ぶことが重要になります。 

制度 目的 掛金の所得控除 受取方法 主な特徴
国民年金 基礎年金 社会保険料控除 年金 全員加入の土台
国民年金基金 年金上乗せ 全額所得控除 年金中心 自営業版の厚生年金に近い
付加年金 少額上乗せ 社会保険料控除 年金 月400円と低料金
iDeCo 自分で資産形成 全額所得控除 一時金・年金 投資運用型
小規模企業共済 退職金づくり 全額所得控除 一時金・年金 個人事業主の退職金制度

 

個人事業主が年金を増やし節税するための賢い方法

個人事業主が年金を増やしながら節税するなら、ポイントは前納・家族分支払い・制度の組み合わせで所得控除・割引を最大限に生かすことです。

 

① 国民年金の「前納」で即節税+割引

国民年金は、「6か月前納」 「1年前納」 「2年前納」が可能です。

メリット

1. 支払額が安くなる(2年前納が割引最大)。2. 支払った年に全額「社会保険料控除」。

例:2年分まとめ払いすると割引が受けられる他、その年の所得控除が大きくなる。

 

② 家族分を払うと、自分の控除にできる

生計を一にする家族の国民年金を払うと、支払った人の社会保険料控除にできます。

 

③制度の組み合わせ
複数制度を役割分担して組み合わせると、「将来受取額」 「節税」 「インフレ対策」 「流動性」 「遺族保障」 を同時に強化できます。

特に日本では、「公的年金」 「私的年金」 「税制優遇制度」 が別々に存在するため、組み合わせ効果が大きいです。

 

①国民年金保険料の前納制度を活用する

国民年金保険料は「前納(まとめ払い)」すると割引があります。
割引額は、支払方法(口座振替・現金・クレジットカード) と前納期間(6か月・1年・2年)で変わります。

2026年度(令和8年度)の主な割引額は次の通りです。

 

口座振替の割引額(最もお得)

前納付期間 支払額 割引額
毎月(口座振替割引) 毎月 17,860円 毎月 60円
6カ月前納 106,300円 1,220円
1年前納 210,530円 4,510円
2年前納 417,150円 17,370円

 

現金・クレジットカード納付の割引額

前納期間 支払額 割引額
6カ月前納 106,650円 870円
1年前納 211,210円 3,820円
2年前納 418,510円 16,010円

 

一番お得なのは「口座振替の2年前納」となり、割引額は約17,370円です。 

個人事業主に特に重要な点:前納すると支払った年に「社会保険料控除」を受けることができるため高所得の年に使うと節税効果が大きいです。

 

②家族分の社会保険料も支払って控除を受ける

生計を一にする家族の国民年金保険料を支払うと、支払った人の「社会保険料控除」にできます。

例:あなたが配偶者・大学生の子・親の国民年金を年間20万円払った場合。

所得税率20%、住民税10%なら、約6万円前後税負担が軽くなるケースがあります。

 

家族の国民年金保険料が社会保険料控除の対象になる条件は、シンプルに言うと次の2つです。

① 生計を一にしていること+② あなたが実際に支払っていること

 

対象になる家族条件は「生計を一にする」こと。

対象になりやすい典型例:同居配偶者・仕送りしている学生の子・同居の親 

別居でも可能な場合の例:大学進学で一人暮らし・生活費を援助している親 

NGになりやすい例:完全に自立して別世帯で生活・経済的援助なし 

 

生計を一にする家族の国民年金保険料を支払った場合の社会保険料控除の確定申告方法は、やること自体はシンプルで「誰の分をいくら払ったか」を申告書に入れるだけです。

<手続き方法>

① 控除証明書を準備・・・日本年金機構から毎年送られます。

② 申告書の「社会保険料控除」に入力

③ 家族分として合算して申告

所得税の申告書「社会保険料控除」欄に支払総額(自分+家族分)を記入します。

 

③複数の制度を組み合わせて効果を最大化する

国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済は、どれも「掛金が所得控除になる制度」ですが、全部を無制限に使えるわけではなく、特にiDeCoの上限と制度間の制約が重要です。

 

iDeCoの掛金上限は、加入区分(会社員・公務員・自営業など)によって違います。

※2026年7月時点

区分 月額上限
自営業・フリーランス(第1号被保険者) 68,000円
会社員(企業年金なし) 23,000円
会社員(企業型DC・DBなど企業年金あり) 20,000円
公務員 20,000円
専業主婦・主夫(第3号被保険者) 23,000円

※企業年金ありの場合は
「55,000円 − 会社のDC掛金等」の範囲内という条件もあります。 また、最低掛金は月5,000円で、1,000円単位で設定できます。 

 

(組み合わせの基本形)

個人事業主の最適な構成

基本3点セット:国民年金基金(または付加年金)・iDeCo・ 小規模企業共済 

→ ただし「全部満額」ではなく、合計のバランス設計が重要

 

(組み合わせの考え方)

パターン①:バランス型(おすすめ)

小規模企業共済:月3〜5万 

iDeCo:月2〜3万 

国民年金基金:必要なら少額 or 付加年金 

<特徴>資金拘束が分散。節税と流動性のバランスが良い。 

 

パターン②:節税最大化型

小規模企業共済:MAX(月7万) 

iDeCo:MAX(月6.8万) 

国民年金基金:最低限 or 使わない 

<特徴>所得控除の最大化。キャッシュはかなり拘束される。 

 

パターン③:安定年金重視

国民年金基金:厚め 

iDeCo:中程度 

小規模企業共済:中程度 

<特徴>終身年金重視。投資リスクは少なめ。 

 

個人事業主の年金に関する手続きと確定申告

個人事業主が国民年金に加入する場合、会社員が退職し国民年金に切り替える場合、基本的には「加入手続き」と「確定申告での社会保険料控除」の2つを行います。

 

国民年金の加入手続き:原則として、住所地の市区町村役場です。

基本的な必要書類:マイナンバーカード、本人確認書類、基礎年金番号通知書または年金手帳。会社を退職した場合は離職票・退職証明書・健康保険資格喪失証明書など退職日が確認できる書類が必要です。

 

確定申告での控除方法:国民年金保険料は、「社会保険料控除」として全額所得控除されます。確定申告書の社会保険料控除欄に入力します。控除対象になるのは1月1日〜12月31日に実際に支払った金額です。未払い分は対象外です。

 

控除を受けるために必要な書類:毎年、日本年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」。マイナポータル経由で電子データ受取も可能です。 

 

国民年金の加入・切り替え手続き

会社員から個人事業主(フリーランス・自営業)になった場合は、厚生年金を抜けて「国民年金 第1号被保険者」へ切り替える手続きが必要です。

<必要な手続き>

1. 国民年金への切り替え

退職すると会社の厚生年金資格がなくなるため、自分で加入手続きをします。

手続き場所:市区町村役所の国民年金窓口 またはマイナポータル電子申請 

必要書類:マイナンバーカード等の本人確認書類、基礎年金番号がわかるもの(年金手帳・基礎年金番号通知書)、退職日確認書類(離職票・退職証明書・健康保険資格喪失証明書など) 

手続き期限:退職後14日以内が目安です。 

 

配偶者がいる場合:会社員時代に扶養に入っていた配偶者は、第3号被保険者ではなくなる可能性があります。その場合、配偶者も:国民年金第1号への切替が必要です。 

 

確定申告での所得控除の手続き方法

国民年金保険料は、支払った全額が「社会保険料控除」として確定申告で所得控除できます。本人分だけでなく、家族分を支払った場合も控除対象です。 

<控除を受けるために必要なもの>

1. 控除証明書

毎年、日本年金機構から「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が送付されます。 

通常、

1〜9月に支払った人 → 11月頃発送 

10〜12月に初めて支払った人 → 翌年2月頃発送 

 

2. 追加支払いの領収書

控除証明書発行後に追加納付した場合は、その領収書も使えます。 

 

<確定申告での入力場所>

確定申告書の「所得控除」→ 「社会保険料控除」の欄に入力します。

e-Taxなら「社会保険料控除」「国民年金保険料」を選択して、支払額控除証明書記載額を入力します。

 

よくある質問

個人事業主は年金を払わないとどうなりますか?

個人事業主は、原則として日本年金機構の国民年金に加入し保険料を納める義務があります。払わない状態が続くと、次のような影響があります。

①老後にもらえる年金が減る/受け取れない
②障害年金・遺族年金が受け取れなくなる可能性

③督促・差押えの対象になることがある

 

個人事業主におすすめの年金制度は何ですか?

個人事業主におすすめされることが多いのは、次の5つです。

①国民年金、②国民年金基金、③iDeCo、④小規模企業共済 、⑤付加年金

 

まとめ

この章では個人事業主の方の年金制度の基本的な仕組み及び複数の制度についての特徴について説明してきました。各制度によって受給額の違いや節税方法があることが理解いただけたのではないでしょうか?ご自身のライフプランにあった年金制度を選択し、将来の資産形成を進めるうえで参考になれば幸いです。更に詳しい内容をお調べになりたい方、ご自身にはどのような施策が適切なのかを相談したい場合には専門家にご相談されることをお勧めいたします。

 

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