リスケジュールとは?メリット・デメリットや注意点について解説!

リスケジュールとは?メリット・デメリットや注意点について解説!

 

最近すっかり定着したリスケジュール(リスケ)という用語をご存知でしょうか。一般的には「約束した日時の変更」をする時に用いられますが、金融用語では「返済条件の変更」を意味し、金融機関が融資先の経営改善や資金繰りを立て直す目的で返済条件を緩和することを指します。今回は、リスケジュールについてメリット・デメリット、注意点などを織り交ぜながら詳しくご説明します。

  リスケジュールとは?  

金融業界でリスケジュールというワードが使われるようになったのは、2009年に「中小企業等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)」が施行されてからです。時限立法のため、2013年3月末に期限を迎えましたが、金融庁は現在も金融機関に対して継続して円滑な資金供給や貸付条件の変更を行うことを求めています。

 

リスケジュールの具体的な手法として、返済期限の延長や返済金額の減額などの方法があります。多く見受けられるのは、毎月の元金の返済期限を半年~一年延長し、その期間は利息のみの支払いとする方法です。毎月の返済金額を減らすことによってキャッシュフローの改善が見込まれ、経営の立て直しを図ることができます。

 

通常の銀行融資の場合、定められた金額が返済できなければ、当然ながら倒産リスクが高まることになりますが、リスケジュールが認められれば一定期間は返済不能による倒産リスクを減らすことができるため、事業者も営業活動に時間を割くことができます。キャッシュフローが悪化している事業者は、リスケジュールの申請を検討したいところです。

  リスケジュールのメリット  

リスケジュールは、毎月の元金返済分の支出を減らしキャッシュフローを改善すること以外にも2つのメリットがあります。

 

1.新規融資と同等の効果がある
リスケジュールをしたことによって減免された元金返済金額については、新規融資を受けたことと同様の効果があります。なぜなら、元金返済金額は売上の中から手当てしているものだからです。仮に毎月利息の他に元金100万円を返済していた場合、1年間利息払いとするリスケジュールが承認されると、年間1,200万円の元金返済を止めることになります。その資金はそのまま運転資金として利用することができるため、新規融資を獲得したことと同じくらいの価値があるのです。
新規融資と違いまとまった資金を得ることはできませんが、新たな利息がかからずに同等の効果が得られるため、借り入れ以外の運転資金の獲得方法として考えてもよいかもしれません。

 

2.経営改善するための時間的猶予の確保
金融機関がリスケジュールを承認すると、その期間は差押えや競売等の法的手続きをとらなくなるため、経営者にとって再建のための時間的猶予が確保されます。金融機関に無断で返済金額を減額したり延滞したりすると、法的手続きのもと回収措置が図られることになるため、必ず承認を得ましょう。
時間的猶予が確保されれば、抜本的な経営改善の見直しに着手することができ、倒産を回避できる可能性が高まります。リスケジュール期間は有限であることを前提に、取引先拡大のための営業活動や経費の見直しなどに時間を使い、経営を上向かせることが必要です。

  リスケジュールのデメリット  

1.新規融資を受けられない
最大のデメリットは、リスケジュール期間中は新規融資を受けられなくなることです。リスケジュールは、現在の借入金の返済が厳しいことが背景にあるため、新たな融資をしても返済の実現性が見出せないことが主な理由です。

 

銀行や信用金庫等は、融資取引先に対して信用格付けを行い、債務者区分を決定します。一般的に融資を受けられるのは、正常先と要注意先であり、破綻懸念先以下は新たな融資を受けられません。リスケジュールをすると、要注意先の中の要管理債権に区分されます。リスケジュール期間中に経営が改善されれば要注意先、改善されなければ破綻懸念先となることを意味しているため、リスケジュール期間中は様子見とされてしまうのです。また、銀行は新規で融資取引をする際、保証協会付きとすることが一般的です。既存の保証協会付き融資をリスケジュールしていると、新規融資に対する保証協会の承諾が得られなくなるため、融資を受けることは難しいとされています。

 

リスケジュールをすると、今後一切の融資が受けられないわけではありません。経営が改善し、元の返済条件に戻すことができれば、新たな融資を受けられる可能性が高まります。しかし、新たな融資を行った後に再度リスケジュールとなることを避けるために、今後の事業計画や経営改善状況、資金繰りについて厳しく審査されるため、ある程度の時間を要するでしょう。

 

2.経営を改善させなければならない
経営を改善するための時間的猶予が確保できるメリットがある一方で、改善できなければ金融機関は債権回収を図ることとなります。一度に認められるリスケジュール期間は最長で1年ですので、そのプレッシャーはデメリットと言えるでしょう。

 

リスケジュールは、実現可能性の高い経営改善計画書を金融機関に提出し、承認を得た上で開始されます。資金繰りを改善するために、役員報酬や社員の給与カット、リストラを始めとする様々な経費削減を行い、利益率が低かったり管理コストに見合わない取引先の整理や条件交渉など、会社の内側から外側まで改善する必要があります。ある程度の水準で計画を達成できていれば、リスケジュールの期間を延長する交渉はできますが、金融機関が満足する水準で達成できていなければ、延長されません。

 

リスケジュールの目的は、金融機関への返済金額を減らすことではありません。経営を改善することです。そのための手段として利用するのであれば、目的を達成するために、これまで以上の努力は必要になると言えるでしょう。

  リスケジュール交渉のやり方  

実際にリスケジュールを金融機関に依頼するには、どのような手順で行えばよいのでしょうか。ここでは、一般的なリスケジュールの手続きの流れを説明します。

 

1.リスケジュールの希望を取引銀行に申請する
融資取引のある金融機関に対し、リスケジュールの希望を申し出ます。取引銀行が複数ある場合、最も支援してくれているメイン銀行から相談すべきです。メイン銀行であれば、事業者のことを最もよく理解してくれているため、どの部分の改善が必要かという客観的な意見もくれるはずです。また、メイン銀行が認めた経営改善計画であれば、実現可能性は高いことが推測できるため、その他の取引銀行も認めてくれる可能性も高まります。リスケジュールは金融機関に対するお願いであるため、電話やメールではなく、アポイントを取って窓口に出向いて意向を伝えるのがベストでしょう。

 

2.資料を提出する
リスケジュールの申請をする際に、現在の経営状況や今後の事業計画書がなければ、取引銀行も判断することができません。準備すべき書類の典型的なものは、次のとおりです。

 

・経営改善計画書
リスケジュールを申請するにあたり、最も重要な書類です。売上や利益率をどのようにアップさせ経費を削減していくのかを具体的に示し、その結果どのような経営改善が図られるのかを数値で表すことになります。単純に取引先を増やす、価格を上げるなどの表面的な情報ではなく、新たな取引先となる見込みの先数や具体的な商談状況、価格を上げることに対する取引先との交渉状況など、書面を見た金融機関の担当者がイメージできるような説得力のある内容が必要です。理想の数値を掲げるのではなく、現状の実績を踏まえた実現可能性の高い計画でなければ、金融機関は応じてくれません。現在の事業の実態を俯瞰し、リスケジュール期間終了後のあるべき姿を考え、改善できることを細かく分析して作成するようにしましょう。

 

・資金繰り表
現状の返済金額のままでは、今後資金不足に陥ってしまうことを具体的な数値で表します。さらに、リスケジュールが承認された場合の資金繰り表を作成し、リスケジュール期間終了後の資金繰りも盛り込みます。資金繰り表が独り歩きしても説得力がないため、上記の経営改善計画書の内容に沿って作成することが重要です。細かいものであっても収入と支出の金額をしっかり落とし込み、無理のない計画を立てるようにしましょう。

 

・決算報告書
前期までの決算書類は、すでに金融機関に提出されていると思いますが、進行年度の決算や経営改善後の決算見通しについても提出することが必要です。進行年度については、直近の月末締めの試算表と本決算の数値予定を示し、経営改善計画書の内容が実行された場合の来年度の決算予想を数値で示します。繰り返しになりますが、予想ではあるものの実現可能性の高い内容であることが求められます。

 

上記3種類以外にも金融機関から提出を求められることがあります。複数の取引銀行がある場合には、バンクミーティングという説明会を行うこともあるため、プレゼンテーション用の資料も必要です。バンクミーティングは専門的な話が出る場合があるため、顧問弁護士や事業再生専門の弁護士に同席を依頼し、法的な見解や第三者としての意見を述べてもらうなどの協力を仰ぐこともできます。複数の金融機関に説明する際に同席してもらえれば、精神的な負担も軽減できることとなるでしょう。

 

3.必要であれば何度でも足を運ぶ
リスケジュールは、現場の担当者の独断で決定できるものではありません。担当者は上司に報告し、上司は本部に稟議申請をして承認するかどうかの判断を仰ぎます。取引金額や担当者の能力次第ではありますが、上司が会って直接話を聞きたいというケースもあるでしょう。金融機関によっては必ず役職者が面談するルールになっていることもあるため、担当者には全部話してあるからといって依頼を拒んではいけません。リスケジュールは金融機関にお願いするものであるため、依頼があれば何度でも足を運ぶようにしましょう。また、リスケジュールが承認された後も、担当者にはこまめに連絡をして経営改善の進捗状況を伝えるようにしてください。

  リスケジュールを利用する際の注意点  

リスケジュールの注意点を3つご紹介します。

 

1.ニューマネーが入ってこない
デメリットでもご説明しましたが、銀行等から新たな融資を受けられなくなります。経営改善計画はそれを踏まえたものであるとはいえ、何か突発的なトラブルが起こらないとも限りません。トラブルがあった際に、資金調達ができないのは事業者にとっては大きなリスクとなります。
しかし、ノンバンクが提供する不動産担保ローンであれば、今後の事業計画を重視して返済能力を判断するため、まとまった金額の資金調達ができる可能性があります。アサックスでは、リスケジュール中の事業者の方への融資実績が豊富にあるため、お気軽にご相談ください。

リスケジュール中に追加の運転資金を借り入れした事例

 

2.リスケジュール期間中に減額した元金返済分はどうなるか
リスケジュールによって毎月の元金返済については延長されますが、一括返済期限である最終弁済期日は延長されません。したがってリスジュール解消後は、毎月の返済金額が増額されるか、リスケジュール期間中の元金返済分を最終弁済期日に一括して返済することになります。リスケジュール前と比べて返済金額が多くなることはリスクになりますので、事前に確認するようにしましょう。

 

アサックスでは、リスケジュール解消後の返済負担を軽減するために、現状のキャッシュフローに合わせた返済金額を提案しておりますので、お問い合わせいただければ幸いです。

返済リスケジュール中のローンを不動産担保ローンに借り換えした事例
毎月の約定返済金額が大きく、キャッシュフローが厳しい

 

3.社内外への信用低下
リスケジュールは、資金繰りが苦しい現状であることを意味します。社員が知れば、今後の雇用に不安を覚え、貴重な人材が流失してしまうかもしれません。また、取引先が知れば、発注した仕事の不達成や代金支払い不能が想起され、取引が打ち切られる可能性もあります。経営改善は社内外の協力が必要なため堂々とやるべきですが、金融機関とのリスケジュールの交渉については限られた人で行った方がよいでしょう。

  まとめ  

現状の資金繰りが不安定な方は、リスケジュールを活用することによってキャッシュフローが改善できると同時に、経営改善にも着手することができます。反対に言えば、経営改善に着手しなければ倒産する可能性があるということです。リスケジュールを目先の返済負担を軽減する目的で利用し、経営や商売の根本の問題解決を先延ばしにすると、必ずそのツケは後から回ってきます。経営改善という攻め、キャッシュフロー改善という守りの両方を実行する前提で、リスケジュールを検討するようにしましょう。もちろん、取引銀行としっかりコミュニケーションを取り、客観的な意見も取り入れた上で判断するようにしてください。

おすすめ記事