赤字決算のメリット・デメリットとは?種類や対応策を徹底解説

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会社を経営していくうえで赤字決算は大きな問題です。上手に乗り切ってすぐに黒字化できれば良いですが、時間がかかる場合もあります。 今回は赤字決算とはどういうものか、資金ショートの違い、メリットやデメリット、税金の扱い、赤字脱却への改善策などを解説していきます。 |
赤字決算とは?
赤字決算とは、決算期間(通常は1会計年度)において、収益よりも費用が上回り、最終的に損失が発生している状態の決算を指します。貸借対照表(B/S)上のどの部分が赤字であるかにより、原因や問題点、対処方法が違ってきます。
また、赤字決算以外に会社の財務状況を表すものに、以下のものがあります。
債務超過・・・貸借対照表(B/S)上で純資産がマイナスになっている状態
資金ショート・・・支払期日に現金・預金が不足し、支払いができない状態
黒字倒産・・・損益計算書上は黒字なのに、資金ショートを起こして倒産すること
これらについては下記で詳細に説明します。
債務超過との違いは?
赤字決算は、1年間の事業活動の結果、損益計算書(P/L)がマイナスになった状態です。
これに対し「債務超過」は、これまでの事業活動の結果、貸借対照表(B/S)上の純資産がマイナスになってしまっている状態です。言い換えれば法人の資産より借入が多い状態です。
赤字決算は、1年間の問題であるため、連続ではなく一時的な赤字ならすぐに深刻になるとは限りません。企業によっては現金や資産が十分にある(体力がある)場合もあります。一方、債務超過は、過去の赤字の積み重ねで起こっていることが多く、借入ができなくなると倒産につながる可能性が高い(体力がない)ため、より深刻な状況にあると言えます。
資金ショートとの違いは?
赤字決算は、1年間の事業活動の結果、損益計算書(P/L)がマイナスになった状態です。
これに対し「資金ショート」は、支払期日に手元資金(現金・預金)が不足している状態をいいます。給料・仕入代金・家賃・税金などが払えない状態です。決算の赤字・黒字に関係なく、手元に資金があるかどうかで起こります。資金ショートが起こる原因として、売掛金の回収ができていない場合や、短期間に支払いが集中してしまった場合などに起こる可能性が高くなります。
資金ショートを防ぐために重要なのがキャッシュフローです。キャッシュフローとはお金(現金・預金)の出入りのことで、実際に手元にある現金の動きを示すため、企業の財務状況を正確に把握するために非常に重要視されます。キャッシュフローをみて手元資金を把握し、資金ショートを起こさないように管理することが経営の生命線です。
黒字倒産との違いは?
決算が黒字であっても、資金ショートにより企業は倒産することがあります。これを「黒字倒産」といいます。取引上の利益が出ても、実際に現金が入るまでの期間のずれが大きな要因となります。逆に赤字であっても、手元資金があればすぐに倒産するということはありません。企業の倒産は赤字決算で起こるのではなく、資金ショートで起こるのです。
<黒字倒産が起こるメカニズム>
①売上が発生(掛取引)
売上計上 → 利益が出るが、現金はまだ入らない。
多くの企業は「月末締め・翌々月払い」など後払いのため、売掛金の回収が遅れる。
↓
②売掛金・在庫が増加
売上の拡大に伴い、在庫を先に仕入れる必要があるなど売掛金が増加。
回収が追い付かず、手元資金が出ていく。
↓
③支払いが先行する
仕入代金以外にも、人件費・家賃・外注費・借入金の返済・税金など現金の支出は待ってくれない。
↓
④資金不足(資金ショート)
売掛金はあるが、手元に現金がなく、支払期日に資金が足りなくなる。
↓
⑤黒字倒産…手形不渡り、支払不能などにより事業停止・倒産。
黒字倒産は売上拡大時(成長期)に運転資金の確保が出来ていないと起こり得ます。事業の拡大時期ほど資金繰りには慎重にならなければならないのです。
赤字の種類とは?
赤字決算といっても、損益計算書のどの項目が赤字なのかで意味合いが異なります。
・売上総利益の赤字・・・ビジネスモデルに問題あり。
・営業利益の赤字・・・本業で利益が出ていない状態。
・経常利益の赤字・・・本業以外の損益、借入金の支払いなどを加え、経営全体でみて利益が出ていない状態。
・当期純利益の赤字・・・経常利益に一時的な損益である特別損益を加味し、法人税等の支払いを行った結果。
以下で詳しく見ていきます。
①売上総利益の赤字
売上総利益(粗利益) = 売上高 − 売上原価
この段階がマイナスということは、商品やサービスを売るほど損をしている状態。例えば、売値1,000円の商品に原価が1,200円かかっていた場合、一つ売れる毎に200円損をしていることになります。売れば売るほど損失が広がります。この原因としては、原価が高すぎること、売値の価格設定ミスなどが考えられます。人件費や賃料などの経費支払いが原因ではありませんので、仕入れ価格や販売価格の見直しが必要になります。
新規事業の開始当初などでは起こりがちですが、原因を改善できない場合は、そもそもの事業モデルが成立していないことになるため、かなり深刻な状況と言えます。事業モデルの見直しや事業継続の判断が急務になります。
②営業利益の赤字
営業利益 = 売上総利益 − 販売費・一般管理費
売上総利益がプラスでも、営業利益の段階でマイナスになる場合、本業の営業活動で利益が出ていないことになります。原因として考えられることは、人件費・広告宣伝費・賃料などの経費(特に固定費)が大きな負担になっているケースが多くあります。スタートアップの企業や売上拡大期ではよくあることで、将来への先行投資として考える場合もありますが、黒字化の見通しが立たない場合や、売上高や粗利益が決まった範囲でしかない場合は、経営環境の見直しが必要です。
・売上構造の見直し・・・主力商品・サービスは何か、利益を生んでいる顧客は誰か、赤字商品を惰性で続けていないかなど、「全部売る」ではなく「儲かるものを集中して売る」へ。
・固定費の適正化・・・売上規模に対し人員配置が適切か、拠点や設備が過剰でないか、外注と内製のバランスは適切かを見直し、固定費を変動費化できる部分がないか検討する。
・販管費の費用対効果(ROI)の確認・・・広告費1円あたりの売上・利益の推移、採用コストが成果につながっているか、「なんとなく続けている支出」がないかなどを見直し、効果が測れない支出はやめて効果の出ているものへ集中する。
・損益分岐点の把握・・・月次の損益分岐点売上はいくらか、現状売上とのギャップはどれくらいかを把握し、あとどれだけ売れば黒字化するかを明確にする。
③経常利益の赤字
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
経常利益とは、本業+金融活動など通常の経営活動全体の成果です。
主な営業外収益・・・受取利息、受取配当金、補助金収入、為替差益、雑収入
経常利益が赤字になるパターンは2つ
パターン①:営業利益は黒字だが、経常利益が赤字
営業外費用の負担が重い(借入金利息が多い、為替差損、支払手数料・保証料が多い)→
借入依存体質・財務構造に問題がある。
パターン②:営業利益が赤字で、経常利益も赤字
営業外収益力の不足(受取利息・配当金が少額、補助金・助成金が一時的、為替差益などが継続しない)→借入金の利息負担が重い会社に多い。会社の通常の経営活動全体が不調。営業外収益に頼る経営は不安定になる。このパターンが連続で続くと経営が危ぶまれる。
経常赤字の見直しのポイント
・営業外費用の圧縮・・・借換え・金利交渉による利払い軽減、過剰借入の整理、為替リスク管理
・営業外収益の位置づけ整理・・・あくまで「補助的」な収益、あればプラス程度のもの、事業計画に過度に組み込まない
・本業の立て直しが最優先・・・経常黒字のためには、営業収益の安定化し本業で利益を出すことが最も重要
④当期純利益の赤字
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 − 特別損失
特別損失(災害損失、固定資産の売却損など一時的要因のもの)で赤字になるケース。
毎年でなければ「一過性赤字」と判断される。
当期純利益 = 税引前当期純利益 − 法人税等
最終的に当期純利益がマイナスになると「赤字決算」となる。企業業績の最終結果であり、金融機関・株主が最も重視する数字。赤字は自己資本が直接減る。
赤字分は繰越欠損金として翌期以降に影響が残る。
赤字決算の主なメリット
営利企業にとって赤字決算は喜ばしいことではありません。ただ、赤字決算になってしまった場合に受けられる税務上の優遇措置があります。法人税の軽減、欠損金の繰越、繰戻し還付制度が該当します。法人税は課税所得がマイナスであれば当然課税されません。欠損金は青色申告法人なら最大10年間、将来の所得から赤字を控除可能。欠損金の繰戻還付は、去年は黒字・今年は赤字の場合に使え、前期に納めた法人税の一部が還付されます。
以下で詳しく見ていきます。
法人税を節税できる
大事な前提として、「赤字=法人税が免除」ではありません。正しくは、課税所得がマイナス(欠損)なら法人税額が0円になるということです。
法人税は「会計上の利益」ではなく「課税所得」にかかります。
企業会計利益(会計上の利益)とは、決算書(損益計算書)に出てくる利益のことで、企業会計基準に基づきます。課税所得とは、法人税を計算するための利益で、法人税法に基づきます。企業会計利益と課税所得は一致しないのが普通です。
課税所得の計算方法:会計上の利益+ 税務上、損金にならない費用- 税務上、益金にならない収益=課税所得
この計算結果が、プラス → 法人税がかかる、マイナス → 法人税はかからない(欠損金)ということになります。したがって、会計上は赤字でも税金が出るケースや、会計上は黒字でも税金が発生しないケースがあります。
赤字の時に法人税がかからない理由は、免除や特例ではなく、あくまで計算結果です。赤字決算の時は多くの場合、会計上の利益⇒マイナス、税務調整後の課税所得⇒マイナス、になるため、課税所得がない=税率をかける対象がない⇒ 結果として法人税額が0円になります。
但し、法人住民税の均等割については赤字でも必ず発生しますので注意してください。
欠損金を繰り越せる(最も大きな優遇)
欠損金の繰越控除とは、赤字(課税所得上のマイナス)を将来の黒字と相殺できる制度です。
【条件】
青色申告法人であること
控除期間:欠損金が発生した事業年度の翌期から10年
控除上限:中小企業 100%、大企業 50%
法人の場合、青色申告法人であることが前提で、最大10年間、将来の所得から欠損金を控除可能です。但し、法人の規模により控除額の上限が異なります。中小企業(資本金1億円以下など)は所得の100%まで、大企業は所得の50%までが控除上限です。古い欠損金から順に使われ、10年を超えた分は時効で消滅します。
欠損金は将来の節税効果:欠損金は繰延税金資産として会計上は資産計上されることがある。但し、将来黒字化の見込みがないと計上できず、監査でかなり厳しく見られる。
欠損金の還付を受けられる
欠損金の繰戻し還付制度(法人税)とは、前期が黒字で当期に赤字が出た場合、欠損金を前期に「繰り戻し」て、前期に納めた法人税を返してもらえる制度です。原則として、青色申告をしている中小企業(資本金1億円以下など)が対象となり、1期分のみ繰戻しが可能となります。
適用条件としては、当期・前期とも青色申告であること、前期に課税所得があり法人税を納付していること、当期に欠損金が発生していることが必要で、手続きとして申告期限内に確定申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出することが必要になります。
赤字決算の主なデメリット
赤字決算は単に業績が悪かっただけではなく、経営を取り巻く環境にも悪影響を及ぼします。例えば、以下のようなデメリットが生じます。
・信用力の低下・・・取引先や金融機関からの信用低下。取引条件の悪化や取引停止。
・融資審査への影響・・・信用力低下による金融機関の債務者区分の低下。融資条件の悪化や新規融資の停止。
・従業員の士気の低下・・・業績不振による従業員のモチベーションの低下、それに伴う生産性の低下、人材の流出。
以下で、より詳しく見ていきます。
信用力が低下する
赤字(特に連続赤字や債務超過)になると企業の総合的な信用力が下がります。その理由としては、収益構造に問題があると判断される、将来の成長性・継続性に疑問を持たれる、自己資本の減少による財務体質悪化の懸念、などが挙げられます。信用力が低下した結果として起こることは、取引先・顧客・採用市場からの評価の低下、与信枠(信用取引の限度)の縮小、「リスクのある会社」というレッテルを貼られる、などがあります。
具体的な影響として、取引先に不安を持たれると、支払遅延や不履行のリスクを警戒されるため、掛取引から現金取引へ変更や支払機関の短縮といった取引条件の見直しを求められる可能性があります。さらに、新規取引や取引拡大の見送り、場合によっては取引自体の停止の可能性もあります。
また、取引先金融機関における影響として、新規融資が通りにくくなる、追加融資を断られる、金利引き上げ・担保や保証の要求、既存融資の条件変更などを求められる可能性があります。特に、本業の赤字や経営改善計画を示せていない場合などは厳しい対応をされる可能性があります。
逆に、赤字でも一時的な要因であることが明確で、今期に回復する根拠が具体的に示せれば、信用力の低下は抑えられると言えるでしょう。
融資審査に影響する
赤字決算による金融機関への影響として、融資審査への影響は上記でも述べましたが、注意したいのは金融機関内部の債務者区分引き下げにつながる可能性です。金融機関は融資取引先を財務状況や返済能力を基に評価・格付けしています。主な区分は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」で、これに基づいて融資の可否、金利、貸倒引当金が決定されます。
単年の赤字決算ではなく連続赤字・債務超過の場合や、実質無返済(利息のみ支払い)、返済原資が明確でない、改善計画が形骸化している場合などに債務者区分が下がる可能性があります。一度債務者区分が下がると、回復させるにはかなりの時間がかかることになります。
赤字決算時の実務的な対策として出来ることは以下のようなことです。
・赤字要因の明確化・・・一過性要因(投資・災害・特殊損失など)なのか、構造的要因(原価高騰・売上減少)なのか明確にする。
・改善計画の提示・・・売上回復策(単価・数量・新規先)、コスト削減策(固定費・変動費)、黒字化の時期を明示、キャッシュフロー改善計画。
・金融機関との早期コミュニケーション・・・決算前・赤字確定前の事前説明、不利な情報ほど先に出す、定期的な進捗報告、金融機関からみて「管理できている会社」という印象を持たせる
・債務者区分引き下げ回避の点・・・元金返済を継続し、実質無返済状態を避ける。リスケは最後の手段。
従業員の士気が下がる
赤字決算による影響は会社内部の従業員にも及びます。従業員であれば会社の経営状態が悪いことは敏感に察知します。従業員のモチベーションに与える具体的な影響は次の通りです。
・将来への不安が強まる・・・赤字で会社は大丈夫なのか、雇用が守られるか、給与が下がらないか、など生活や将来への不安が強まる。
・昇給・賞与への期待がなくなる・・・赤字決算になるとボーナスカット・不支給、昇給の見送りが現実的になり、頑張っても報われない・努力しても意味がないという気持ちが生まれやすくなります。
この結果、従業員の主体性や意欲が低下し、最低限の仕事しかしなくなる傾向があります。また、社内ではコミュニケーションの減少、ネガティブな噂や憶測の広まり、責任の押し付け合いなど、職場の雰囲気そのものが悪化していきます。そして、優秀な人材ほど
会社の将来に見切りをつけ転職していき、会社に残るのは不安を抱えた人材だけという悪循環に陥る場合があります。
赤字決算時の税金
赤字決算(課税所得がマイナス)の場合に各種税金の取扱いはどうなるでしょうか。
この場合、課税が無い税金と支払い義務が生じる税金とがあります。前者は法人税で、後者は消費税や法人住民税です。
法人税・・・課税所得に対して税金が発生する。課税所得がゼロかマイナスならかからない。
消費税・・・課税売上>課税仕入の場合に支払いが発生する。
法人住民税・・・均等割(赤字・黒字に関係なく定額課税される)
法人税割(利益が出た場合のみ課税される)
法人税はどうなるか?
赤字(欠損)の場合、原則として法人税は発生しません。
その理由は、法人税は「課税所得」に対して課税されるため、赤字=課税所得がゼロかマイナスの場合、課税の対象が無いので税金が発生しません。
法人の場合、青色申告法人であることが前提で、最大10年間、将来の所得から欠損金を控除可能です。但し、法人の規模により控除額の上限が異なります。中小企業(資本金1億円以下など)は所得の100%まで、大企業は所得の50%までが控除上限です。古い欠損金から順に使われ、10年を超えた分は時効で消滅します。
消費税はどうなるか?
赤字決算でも消費税は発生します。
その理由は、消費税は「利益」ではなく、「取引(売上・仕入)」に課税されるためです。そのため、会計上赤字=消費税ゼロではありません。赤字でも消費税を納税するケースはよくあります。原則課税(実額計算)の場合、支払う消費税は「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて計算します。
納税になるケース・・・課税売上に係る消費税 > 課税仕入に係る消費税
赤字でも消費税を納付する可能性がある典型的な例
・人件費・減価償却費等(固定費)の割合が多い業種(製造業、運輸業、情報通信業など)は、コストが下がらず、売上高減少時に赤字になりやすくなります。人件費や減価償却費は消費税の課税仕入にないため、仕入税額控除を受けられず、納付する消費税額が多くなる傾向があります。
・仕入や外注が少ない業種(IT、コンサル等)は、経費の主体が消費税の課税仕入にならない人件費や地代家賃、通信費などが占めるため、課税売上に係る消費税の支払いが多くなる傾向があります。
・簡易課税で「みなし仕入率」が低い業種(第4種~6種:サービス業、不動産業など)の決算では、実際の経費(仕入・外注費・備品)が少ない場合には原則課税より大幅な節税になる一方、大規模な設備投資や外注費が多いと、納付額が原則課税より増える可能性が高くなります。
法人住民税はどうなるか?
赤字決算でも法人住民税は発生します。
法人住民税は地方税で、国に納める法人税とは異なり、事務所や事業所、または一定数以上の従業員がいる場合、その全ての所在地で納税義務が発生し、各都道府県・市町村に納めます。
法人住民税は均等割と法人税割の2つで構成されています。
・均等割…資本金の額や従業員数に応じて定額課税される。赤字でも必ず支払う税金。一般的な目安としては、資本金1,000万以下(従業員50人以下)で年5万円、資本金1,000万超(従業員50人以下)で13万円~となっています。最低納税額としては均等割5万円になることが多い。
・法人税割…計算方法は、法人税額×法人市民税率=税額で、法人税額がゼロなら、法人住民税額もゼロになります。
赤字決算・赤字経営から脱却するための対策
赤字経営の状態から黒字転換するための基本的な改善策として、次の点が挙げられます。
・売上高の向上・・・売上が伸びる構造かを確認し、現状を把握する。
・コスト削減・・・闇雲に手を付けず、割合の大きい固定費・間接費・変動費から見直し、無駄を可視化する。
・資金管理・・・将来の入出金の動きを把握するため、資金繰り表を作成し、資金ショートに備えた行動をとる。
・経営改善の方向性・・・
以下で詳しく見ていきます。
コストの削減
コスト削減の前に、まず現状の確認が必要です。売上はあるが儲からないのか、そもそもの売上げが足りないのかを把握する必要があります。利益以前に売上が伸びる構造かを確認しましょう。既存顧客の深掘り、価格戦略の見直し、取扱商品・サービスの選択と集中、新規顧客獲得チャネルの最適化などを行い、利益以前に売上が伸びる構造かを確認します。
続いてコスト削減の検討です。闇雲に手を付けることはせず、経費の割合の多い固定費から着手するのが鉄則になります。優先順位として、固定費(人件費・家賃・外注費)、間接費(通信費、システム、サブスク)、変動費(仕入・物流)の順にみていくと良いでしょう。具体策としては、不採算部門・業務の停止、外注→内製(または逆)の再検討、人員配置の最適化(生産性基準)、契約条件の再交渉などを検討のうえ実行します。コスト削減は、我慢をすることではなく、無駄を可視化することで改善につなげることです。
キャッシュフローの見直し
キャッシュフローの見直しは最重要です。資金繰りが安定していれば、赤字になっても経営を続けられます。チェックすべきポイントとしては、売掛金の回収サイトが長すぎないか、在庫が滞留していないか、支払条件が不利になっていないか、などが挙げられます。
資金繰り改善のための具体的な方法は、売掛金回収条件の短縮(前受金・分割請求)、在庫圧縮・受注生産化へのシフト、支払条件の交渉(支払サイトの延長)などが挙げられます。利益より現金の確保を優先します。
資金繰り表の作成と活用。資金繰り表とは、将来のお金の動きを月別で見える化した表です。最低でも向こう6ヵ月〜12ヶ月分作ります。作成のポイントは、実際に入出金が生じる日付で作成することです。売上は請求月ではなく入金月で記載、借入金返済は元金+利息の合計額、税金や賞与の支払い日は忘れがちのため要注意です。
資金繰り表が出来たら、いつ資金が足りなくなるか、毎月いくら足りないか、一時的か・構造的かをチェックします。資金不足が見えたら早期の対応が重要です。資金繰り改善の具体策として、借入金のリスケ交渉(返済猶予・期間延長)、返済額>営業キャッシュフローになっていないか確認、税金・社会保険の猶予相談などを行い資金不足に備えます。前述しましたが、黒字でも倒産は起こり得ます。黒字倒産の原因は、資金繰りの管理不足から起こることがほとんどです。
資金の調達方法を増やす
資金調達先が銀行融資だけでは、借入ができなくなった際のリスクが大きくなります。資金調達方法を増やしておくことは、倒産を回避するうえでも重要な対策です。
企業の資金調達には一般に次のような方法があります。銀行(プロパー融資、保証協会付)、日本政策金融公庫、補助金・助成金、ファクタリング(売掛債権売却)、出資(エクイティ)などがあります。
金融機関の融資や補助金・助成金はご承知の通りですが、あまり馴染みがないファクタリングと出資について以下に説明します。
・ファクタリングとは、企業が持っている売掛金をファクタリング会社に売却して、
入金前に現金化する資金調達方法です。借入金(融資)ではありません。仕組みは、企業が取引先に請求書を発行→その売掛金をファクタリング会社に売却→手数料を差し引いた金額が即入金→取引先からの入金はファクタリング会社へ。ファクタリングには2社間ファクタリング(取引先に知られずに売却が可能)と3社間ファクタリング(取引先の承諾がある場合)があります。ファクタリングのメリットは、最短即日で資金化、赤字・税金滞納があっても使える場合がある、借入枠に影響しない、決算書に載らないなどがありますが、デメリットとして、手数料が高い、継続利用すると資金繰りが悪化しやすいという点があります。
・出資とは、投資家が会社に資金を入れ、その見返りとして株式(持分)を受け取る資金調達方法。最大の特徴が返済不要という点です。出資には、ベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、事業会社からの出資(CVC・資本提携)、クラウドファンディング(株式型)などの種類があります。出資のメリットは、返済不要、財務体質の強化(自己資本増加)、投資家の知見・人脈を使える、大きな成長資金を確保しやすい等があります。デメリット・注意点としては、株式の希薄化、経営の自由度が下がる可能性、短期的な成長を求められる、株主対応の手間が増えるなどがあります。特に株主構成・議決権をどうするかを誤ると、資金は入ったが自分が経営を出来なくなるということにもなりかねないため注意が必要です。
経営改善計画の策定
経営改善は、「現状把握→課題特定→施策立案→実行・管理」の循環で進めます。
① 現状把握
・財務分析・・・損益(売上・粗利・営業利益の推移)、固定費・変動費の内訳、キャッシュフロー(資金繰り)
・非財務分析・・・商品別・顧客別・チャネル別収益性、業務プロセス、組織、人員配置、市場・競合・顧客ニーズ
② 課題の構造化
・売上不足型、粗利不足型(値付け・原価)、固定費過多型、複合型
→ 赤字の原因、どこにメスを入れると最も効くかを特定する
③ 数値目標の設定
・売上高、粗利率、固定費、営業利益
・月次・四半期単位で管理可能なKPIに分解
④ 改善施策の立案(優先順位付き)
・即効性(短期)× 持続性(中長期)の両立
⑤ 実行・モニタリング
・責任者・期限・KPIを明確化
・月次で進捗確認・修正
これらを循環させて経営改善を進めていきます。
売上向上と収益性改善のための具体的手法をそれぞれ以下に挙げます。
■売上向上のための具体的手法
① 既存顧客からの売上最大化(客単価向上、購入頻度向上、重点顧客の深掘り)
② 商品・サービス別の選択と集中(利益が出ていない商品・取引の整理、売れていてももうからない商品の改善)
③ 価格戦略の見直し(価値に見合う価格への見直し、小幅な値上げ)
④ 営業・マーケティングの効率化(見込み客の質向上、成約率・リードタイムの見える化、勝ちパターンの標準化)
■収益性改善のための具体的手法
①粗利益率改善(仕入条件の見直し、外注→内製(または逆)の見直し、作業時間の短縮)
②固定費の見直し(人件費、間接費の見直し。単純なコストカットではなく無駄を削減する)
③損益分岐点の引き下げ(固定費削減・変動費比率の見直しにより少ない売上げでも黒字化できる体質へ)
よくある質問
会社が赤字決算だとどうなる?
資金面では、キャッシュが減るため資金ショートを起こす可能性が高まります。利益が出ていないため、法人税・地方法人税の支払いはありません。対外的には信用力の低下になります。特に連続赤字の場合には、取引先の金融機関の評価が下がり、融資条件の悪化や新規融資の停止など資金繰りに影響が出る可能性があります。また、取引先顧客からの信用が下がると支払い条件などが厳しくなる可能性があります。税務・会計上の扱いは、最大10年間繰越欠損金として残せるため、将来の黒字と相殺できます。他にも従業員のモチベーションへの悪影響などが起こり得ます。
わざと赤字にする理由は?
将来の黒字が見えている場合に、費用を前倒して計上し、法人税の支払いを抑える選択をするケース。大型の設備投資による減価償却費負担を初年度に大きくして、将来の利益率を上げる狙いのケース。新規事業での市場獲得・シェア拡大を目的とした利益度外視の価格戦略を取るケース。不採算事業や資産の整理のため、一度に負担を重くし翌期以降の負担を軽くするケースなどが考えられます。
赤字の会社が潰れないのはなぜ?
会社の倒産は現金が足りなくなって、支払い不能になって起こります。赤字は会計上の損失(利益がマイナス)の状態であって、赤字=現金が無い、ということではありません。したがって、会計上は赤字でも、手元に現金があれば支払いが出来るため倒産はしません。逆に黒字であっても、手元に現金が無く支払いができなければ、黒字倒産になる可能性があります。
赤字決算は個人事業主に関係ある?
大きく関係します。影響があるものを以下に記載します。
・税金への影響・・・赤字(事業所得がマイナス)の場合、所得税・住民税はほぼかかりません。また、サラリーマンの副業なら給与所得と相殺できます(損益通算)
・国保・年金は別・・・国民健康保険料、国民年金保険料は赤字でも基本的に支払いがあります(軽減される場合はある)。
・資金繰りへの影響・・・法人と違い、個人事業主は赤字=自分のお金が減ります。銀行からの融資も個人の信用頼みのため、赤字が続くと融資が受けられないばかりか、自分の資金が枯渇してしまう恐れがあります。
・青色申告していると救済がある・・・青色申告なら純損失の繰越(最大3年)ができる。
3期連続で赤字だとどうなる?
法人が3期連続で赤字の場合に考えられる影響は以下のようなものです。
・銀行・取引先・・・3期連続赤字→銀行の融資ストップまたは融資条件悪化。取引先からは支払いサイト短縮や前金要求をされる可能性。
・債務超過リスク・・・赤字が積み重なることで純資産が減少、債務超過になると倒産の可能性が大きく上がります。
・上場企業の場合でも3期連続赤字は起こりますが、現金資産が潤沢ある、親会社・投資家からの支援が受けられる、銀行融資が受けられる、将来の黒字化が見えている場合には倒産せず持ち直します。これらが何もなければ上場会社でも倒産する可能性は高い状態と言えます。
まとめ
法人の赤字決算について解説してきました。単に利益が出なかったではなく、どの段階で赤字になったかを分析・原因の特定を行い、黒字化するための改善を行うことの重要性が理解いただけたのではないでしょうか。また、キャッシュフローの見直しは最重要と言えます。黒字でも資金ショートを起こせば倒産しますが、資金繰りが安定していれば赤字になっても経営を続けられます。
収益性の改善、資金繰りなどは、すぐには変えられず時間がかかるものです。経営状態が良いからといって現状維持ではなく、余裕のある内に様々な手立てを検討し、悪くなった場合の対策を準備しておくことが会社を存続させていくうえで大切です。





