不動産担保ローンは共有名義でも借入可能?持分担保の方法と融資額の相場
不動産担保ローンとは、その名称のとおり不動産を担保にして借入することができるローン商品です。「共有名義の不動産」とは、複数の人が1つの不動産(例:土地や建物)を共同で所有している状態を指します。たとえば、夫婦、親子、兄弟姉妹、あるいは友人同士などが1つの不動産を一緒に購入して、それぞれの名義で登記されている場合が「共有名義」です。共有名義の不動産を担保として借入れする場合の注意点を踏まえ、くわしく説明していきます。 |
共有名義の不動産担保とは
「共有名義の不動産担保」とは、複数人で共有している不動産を担保にして、金融機関などからお金を借りる(抵当権を設定する)ことを意味します。通常の担保設定と異なり、全共有者の同意が必要など、特有の注意点があります。
例:夫50%、妻50%の持分でマイホームを共有している。
担保に入れるにはどうすればいいか?
【全持分を担保にする場合】
・全員の同意を得て、持分すべてに抵当権を設定⇒基本的な形であり、金融機関の融資が通りやすい。
【一部の持分だけを担保にする場合】
・共有者のうち1人だけが、自分の「持分だけ」を担保にする。⇒法律上は可能だが、金融機関はほぼ認めないことが多い。(持分のみだと買い手がつきにくいため評価が極端に下がる。他共有者との権利関係が複雑でトラブルになりやすい)
共有名義と共有持分の違い
「共有名義」と「共有持分」は似ていますが、意味や使い方に微妙な違いがあります。それぞれを明確に区別して説明します。
・「共有名義」とは?
不動産の登記簿において、複数人の名前(名義)が記載されている状態を指します。つまり、「その不動産を誰が所有しているか」を表す登記上の状態です。
例:登記簿に「Aさん持分1/2、Bさん持分1/2」と記載されていれば、それは「共有名義」となります。
・「共有持分」とは?
共有名義の不動産における、それぞれの人が持つ所有権の割合のことを示します。
言い換えれば、「その人が不動産全体に対してどれだけの権利を持っているか」を表す法的な割合です。
例:Aさんが全体の6/10、Bさんが4/10を所有していれば、 Aさんの「共有持分」60%、Bさんの「共有持分」は40%となります。
担保として認められる条件
共有名義の不動産を担保にするための主な条件としては、基本的には共有者全員の同意と署名・押印が必要です。1人でも反対すると、不動産全体に担保設定をすることはできません。持分のみを担保にすることは法律的には可能ですが、金融機関はほぼ認めないことが多いのが現実です。
しかしアサックスではお客様の利便性を最優先とし、持分50%以上を担保することができる場合はご融資を前向きに検討さていただいております。持分のみを担保で融資を希望される場合も是非相談下さい。
一般的な不動産担保ローンとの違い
上記の通り、単独所有の不動産を担保にする場合と違い、共有名義の不動産を担保とする場合には原則として共有者全員の同意及び契約書への署名押印が必要となります。全員の同意が取れずに一部だけしか担保に入れられない場合、取り扱いをしない金融機関がほとんどです。
不動産担保ローンは、万が一借主が返済不能となった場合、担保となる不動産を処分して返済に充てる仕組みとなります。
共有名義の一部のみの場合、例えばAさんBさん夫婦で50%ずつ所有しているマンションを想像してみてください。Aさんの持分2分の1のみを担保に融資を行い、返済不能となった場合には、Aさん持分のみが処分の対象となります。Aさん持分のみが不動産売却になった場合、「Bさんと2分の1ずつの共有になる不動産」の買い手を市場で探すことになるため、当然AB夫婦と関わりのない一般購入者からは敬遠されます。
このように、本来は返済不能になった場合に備えた担保であるにも関わらず、持分のみとなると処分の難しい特殊な不動産という扱いになります。貸し手のリスクが非常に高いため、取り扱う金融機関は一部に限られています。
共有名義の担保価値の計算方法
共有名義の不動産の「担保価値」を計算する場合、通常の不動産担保評価とは異なる点がいくつかあります。以下に、その考え方と計算方法を解説します。
担保価値とは?
担保価値とは、金融機関が担保として評価する価値のことです。売買価格や公示地価とは異なり、金融機関独自のリスクを加味した保守的な評価になります。
共有名義の担保価値の評価方法
共有名義の不動産は、原則として共有持分ごとに評価されます。
不動産全体の時価 × 持分割合 = 共有持分の理論的な評価額
ただし、実際の担保評価ではこのままの評価にならないケースが多いです。
それは、共有持分のみでは自由に利用・処分が難しいため、前記理論的な価格よりも低い金額の査定となることが一般的です。
持分割合による評価額の計算
共有不動産の持分割合による評価額の計算方法は、次のとおりです。
1.不動産全体の評価額を求める
周囲の売買事例、路線価、固定資産税評価額、不動産業者の査定などを参考に、全体の担保評価を算出します。
例:土地+建物全体の担保評価額・・・ 5,000万円
2.持分割合を掛け、理論評価額を求める
持分評価額=不動産の評価額×持分割合
例:持分 1/2(50%)
評価額 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円(理論評価額)
3.流動性や制限を考慮して減額
実際に売却・担保化する際には、「共有持分」には制限があるため、流動性や制限リスクを反映して減額評価するのが一般的です。
例:減額率の目安(概算)
共有者が親族で協力的:10~30%減
共有者との関係が希薄・不明:30~50%減
トラブルや使用不可:50~70%減
4.注意点
共有持分だけを担保とするには、前記の例だけに限らず特殊な要因が多く、個別検討の色が強くなります。いざというときに換価できないケースもあるため、金融機関は減額後の評価でしか見てくれないことや、そもそも取扱いしないことが多くなります。
共有名義不動産を担保にする融資方法
共有名義不動産を担保にする主な融資方法
1.共有者全員の同意を得て「全体」を担保にする(通常の担保設定)
特徴
・共有者全員が同意し、それぞれの持分に抵当権を設定する
・全体の評価額に対して融資額の算出が可能(担保価値が最大化)
メリット
・通常の不動産担保ローンと同様に融資を受けやすい
・金利や条件が一般的
デメリット
・共有者全員との面談、契約参加が必要
・相続などで所有権が分散している場合など、全員の合意が難しいと実現困難
2.自分の「共有持分のみ」を担保にする(単独持分担保)
特徴
・自分の持分だけに抵当権を設定
・他の共有者の同意は不要(民法上可能)
・一部の金融機関(信用金庫、ノンバンク、専門業者)で利用可能
メリット
・他の共有者の協力が得られない場合でも融資の道がある
デメリット
・評価額が大きく下がり、希望の融資金額まで届かないこともある。
・金利を含めた条件が厳しくなる。金融機関によっては、取扱いしないことも多い。
3.他の共有者の持分を買い取って「単独名義」に変更し担保化する
特徴
・単独所有になることから、通常の担保融資を利用できる。持分の買取資金も同時に融資を受けることも可能。
メリット
・融資条件が良くなる(担保評価、長期ローン可)
・所有権が明確になり、自由に売却・処分できる
デメリット
・他の共有者が売却に応じないと成立しない
全共有者の同意を得る手順
1.まず、不動産登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、次の項目を確認します。
・誰が共有者か(名前・住所)
・持分割合
・既に担保設定(抵当権など)があるかどうか
2.次に、各共有者に以下の点をしっかり説明し、合意してもらいます。
・担保設定の目的(例:融資額や使用目的)
・返済計画
・どの金融機関で借入する予定なのか
・担保設定後のリスク(例:返済できないと不動産が競売にかかる可能性)
ポイント:誤解や不信感を避けるために、借入先の会社概要がわかる書面や資料を使って説明するとよいでしょう。
自分の持分だけで借入する方法
共有物件において「自分の持分だけ」で借入(ローンや担保設定など)を行うことは可能ですが、いくつかの条件や注意点があります。
金融機関によっては「共有持分のみを担保にする」ローン商品を提供している場合がありますので取り扱いしている金融機関に相談するようにしましょう。
ただし、銀行では取扱をしていないことが多いのでノンバンク(消費者金融や貸金業者など)にも相談するのが良いでしょう。
【特徴と注意点】
・他の共有者の同意が不要。
・担保設定も自分の持分のみにされる。
・借入できる金額は持分評価額によるが、市場価値より低く見られる傾向がある。
・通常の不動産担保ローンより審査は厳しい傾向がある。
・金利が高め、毎月の返済金額が多めなど、融資条件が厳しくなる傾向がある。
・他共有者とトラブルがある場合は融資が難しい。
必要書類と申込み手続き
アサックスにて持分担保での融資申込をする場合、通常の不動産担保ローンを申し込む際と必要書類は同じです。本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)、収入証明書類(決算書、確定申告書、源泉徴収票、給与明細など)、認印が必要になります。また、法務局関係の書類や市区町村関係の書類は、お客様の希望があればアサックスが代行取得することも可能です
必要書類の詳細:
・本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど、顔写真付きのものが望ましいです。
・収入証明書類:
給与所得者:源泉徴収票、給与明細書、確定申告書など。
個人事業主・法人代表者:確定申告書、決算書など。
・認印:シャチハタは不可。
・その他:物件に関する書類(登記事項証明書、評価証明書など)は、アサックスが代行取得することも可能です。
共有名義特有のリスク
共有名義物件を担保にする場合、一般の不動産担保と異なる特有のリスクがあります。以下に主なリスクをわかりやすく整理します。
共有名義物件を担保にする主なリスク
【共有者の同意が必要な場合が多い】
• 銀行など一般的な金融機関では担保設定に共有者全員の同意が求められます。
• 同意が得られなければ、融資自体が不成立になります。
【持分単独の価値は著しく低い】
• 市場流通性が低いため、担保価値が下がります。不動産全体に対する評価と比較して、5割~場合によっては2割程度まで落ちることもあります。
【競売リスクと第三者共有の可能性】
• 万が一返済不能となった場合、借主の持分だけが競売にかけられ、第三者が落札する可能性があります。その場合、知らない他人と共有状態になります。
【共有者との関係悪化リスク】
• 担保設定や借入によって、他の共有者との信頼関係が壊れるケースがあります。
• 特に相続や離婚で共有している場合、感情的な対立に発展しやすいです。
他の共有者への影響
共有名義物件において、自分の持分のみを担保に借入れする場合、他の共有者に直接的な権利侵害はありませんが、次のように間接的な影響は大きいため注意が必要です。
【競売・持分売却による第三者の「新たな共有者化」】
• 債務不履行で借主の持分が競売になると、他人が落札する可能性があります。
• 結果、他の共有者にとっては見知らぬ第三者と不動産を共有するリスクが発生します。
• 第三者が共有者になると、売却・管理・利用における意見の対立や訴訟リスクも高まります。
【共有物の使用・管理に制限が加わる可能性】
• 担保設定された持分がある場合、他の共有者は抵当権者(金融機関など)との調整を強いられる場合があります。
• 特に賃貸・売却・改築などの意思決定に影響が出ることがあります。
返済不能時の担保処分問題
共有名義不動産の担保ローン返済が不能になった場合、借主の持分に設定された担保がどう処分されるか、そして他の共有者にどんな影響があるかは非常に重要です。以下、流れとリスクを詳しく解説します。
返済不能時の担保処分の流れ(共有持分のみ担保にしている場合)
担保処分の対象:あくまで担保設定した「債務者の持分のみ」
⇒他の共有者の持分には影響なし(直接的には)
1. 債務不履行・延滞が発生
• 債権者(金融機関)は、債務者の持分に設定された抵当権を実行しようとする
2. 持分の競売申立て
• 債権者は、裁判所に持分の競売申立てを行う(対象は担保設定した借主の持分)
3. 競売 → 第三者が落札
• 入札で持分を購入した第三者が新たな共有者になる
• この第三者は、不動産全体を利用・売却しようとする可能性が高い(トラブルが発生する可能性がある)
よくある質問
不動産担保ローンの共有名義とは?
不動産の「共有名義」とは不動産の登記簿において、複数人の名前(名義)が記載されている状態を指します。つまり、「その不動産を誰が所有しているか」を表す登記上の状態です。
例:登記簿に「Aさん持分1/2、Bさん持分1/2」と記載されていれば、それは「共有名義」となります。
不動産担保ローンは配偶者名義でも受けられますか?
不動産担保ローンは配偶者名義でも受けることはできますが、配偶者の同意が必要です。夫婦であっても、同意なしに勝手に融資を受けることはできません。
まとめ
共有名義の不動産を担保として借入する場合の方法やリスクについて説明してきました。本来は共有者全員の同意・担保提供を受け担保にすることが望ましいでしょう。どうしても自分の持分だけで借入を検討する場合はこれまで説明してきたリスクを考慮すると借入先(担保の設定先)の選定が重要であることがわかります。アサックスでは持分のみを担保とする融資についても柔軟に対応していますので是非担当者に相談してみてください。