不動産担保ローンで開業資金を借りることはできる?開業資金の相場や借りるための手順を紹介

不動産担保ローンで開業資金を借りることはできる?開業資金の相場や借りるための手順を紹介

 

これから開業を目指している方のなかには「開業資金をどこから調達しようか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。なかには、不動産を所有しており「不動産担保ローンを開業資金に活用できないだろうか」と気になっている方もいるかもしれません。

この記事では、開業資金として不動産担保ローンを活用できるかをみていき、業種別の開業資金の相場や、審査に通るためのポイントなどを解説していきます。

これから開業を予定しており、資金調達を検討している方にとって参考になるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

 

 

 不動産担保ローンで開業資金を借りることはできる?

結論からいうと、不動産担保ローンを開業資金として活用することは可能です。

不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にすることで資金を借りられるローンのことです。担保があることで貸し手のリスクが抑えられるため、無担保ローンと比べて高額の融資を受けやすく、金利も比較的低めに設定されているのが特徴です。

 

また、不動産担保ローンは資金の使い道に細かい制約がありません。そのため、店舗の内装費や設備投資など、開業に必要な幅広い用途に充てることができます。

 

不動産を所有している場合は、不動産担保ローンは開業資金の調達手段として有効な選択肢となるでしょう。

 

 開業資金はいくら必要?業種別の相場

ここからは、業種ごとに異なる開業資金の相場についてみていきます。

 

参考までに日本政策金融公庫が発表した「2024年度新規開業実態調査 」によると、開業費用の平均は985万円となっています。

ただし、実際に必要な金額は業種によって大きく異なるため、自身の業種に合わせた目安を把握しておくことが重要です。おおよその目安は以下のとおりです。

 

  • 飲食店:300〜1,000万円
  • 小売店・物販店:500〜2,000万円
  • 美容室・サロン:300〜1,500万円

 

業種ごとに具体的な費用の内訳や目安をみていきましょう。

 

飲食店開業に必要な資金内訳

飲食店の開業には、おおよそ300~1,000万円程度の費用を見込んでおく必要があります。ただし、必要な資金は店舗の広さ、立地、業態(テイクアウト専門・居酒屋・カフェなど)によって大きく異なります。

 

以下は、飲食店開業にかかる主な費用項目とその内容です。

 

費用項目 詳細 費用相場(目安)
物件取得費 保証金・礼金・仲介手数料など 約100万~400万円
内外装工事費 床・壁・照明・厨房スペースなど 約100万~700万円

厨房機器費

冷蔵庫・コンロ・シンクなど 約50万~150万円
空調設備費

エアコン・換気設備など

厨房排気を含むと費用が上がりやすい

約20万~80万円
備品類 食器やユニフォーム、レジなど営業に必要な道具類 約20万~50万円
広告宣伝費 開店チラシやSNS広告など、集客のための初期費用 約10万~30万円
当面の運転資金 開業直後の家賃や人件費・仕入れ費など 約100万~300万円

 

このように、物件取得や内装、厨房機器といった店舗の立ち上げに関わる費用が大半を占めるのが特徴です。とくに物件取得費は、家賃の10カ月分程度を求められるケースもあるため、あらかじめまとまった資金を確保しておく必要があります。

 

続いて、店舗の規模別に必要な開業資金の目安をみてみましょう。

 

店舗の規模 座席数 開業資金の目安
小規模 10~15席 300万~500万円
中規模 15~30席 600万~1,000万円
大規模 30席以上 1,000万~2,000万円

 

座席数が増えるほど、内装費・設備費・人件費なども増加するため、開業費用の幅も広がります。とくに都市部や駅近エリアでは、物件取得費だけで予算の半分以上を占めることも珍しくありません。

 

小売店・物販店の開業費用相場

小売店や物販店を開業するには、一般的に500万〜2,000万円程度の初期費用が必要といわれています。この幅が広いのは、出店する地域や物件の広さ、取り扱う商品の単価や在庫量によって必要な設備や仕入れ規模が大きく異なるためです。

 

まずは、小売店開業に必要な主な費用の内訳をみてみましょう。

 

費用項目 詳細 費用相場
物件取得費 保証料・礼金・仲介手数料など 約100万~400万円
内外装工事費 床・壁・照明・厨房スペースなど 約100万~700万円
仕入れ費 初回の商品仕入れ費用 約50万~700万円
集客費 チラシ・SNS広告・ウェブサイト・店舗看板など 約10万~50万円
設備・備品費 棚・レジ・冷蔵什器・ディスプレイ用品・包装資材など 約30万~200万円
当面の運転資金 開業直後の家賃や人件費・仕入れ費など 約100万~300万円

 

このように、小売業では物件取得費と内外装工事費、仕入れ費の3つが大きな割合を占めます。とくに商品の仕入れは、在庫をどの程度抱えるかによって数十万円〜数百万円単位で変わるため、事前の計画が重要です。

 

ほかにも都心部や商業施設内に出店する場合は、家賃や保証金が高くなりがちで、費用がかさむ傾向があります。一方、地方や住宅街にある路面店舗であれば、比較的低コストで始められる可能性もあるでしょう。

 

美容室・サロン開業の必要資金

美容室やサロンの開業に必要な資金は、400万〜1,500万円程度といわれています。

費用の幅が広いのは、店舗の立地や規模、座席数、内装のこだわり度合いによって大きく変動するためです。

 

以下は、美容室・サロンの開業にかかる主な費用項目と相場の目安です。

 

費用項目 詳細 費用相場
物件取得費 保証金・礼金・仲介手数料など 約100万~300万円
内外装工事費 床・壁・鏡・照明・シャンプースペースなど 約100万~700万円
設備・備品代 セット面、シャンプー台、タオルウォーマー、レジなど 約100万~500万円
広告宣伝費 チラシ、SNS広告、看板、ホームページ制作費など 約10万~50万円
当面の運転資金 開業直後の家賃や人件費・仕入れ費など 約100万~300万円

 

店舗の座席数が多いほど、設備費や工事費、運転資金も増加する傾向にあります。以下に、座席数ごとの必要資金の目安をまとめました。

 

規模 セット面の数 必要資金の目安
個人サロン 1~2席 約300万~600万円
小規模 3~7席 約600万~1,000万円
中規模~大規模 8席以上 約1,000万~1,500万円

このように、美容室・サロンの開業には内装と設備に大きな投資が必要です。とくにセット面やシャンプー台といった設備は高額なため、初期費用を抑えるには居抜き物件の活用も有効な選択肢となります。

 

 所有物件で調達できる開業資金の上限は?

不動産担保ローンで開業資金を調達する場合、借入可能額の上限は「担保評価額」によって決まります。

 

担保評価額とは、保有している不動産の評価額に「担保掛目」をかけて算出される金額で、金融機関が貸し出せる金額の基準になります。担保掛目はおおむね70〜80%程度に設定されることが一般的です。

 

担保評価額の計算式は以下のとおりです。

担保評価額=不動産評価額(土地評価額+建物評価額)×担保掛目(70〜80%)

 

次項では、この担保評価額の具体的な算出方法から、どのように借入可能額が決まるのかをみていきます。

 

担保評価額の計算方法と借入可能額

不動産担保ローンでは、市場価格=借入可能額ではありません。

 

市場価格は売買で成立する価格ですが、担保評価額は金融機関が融資判断のために独自に算出する評価額であり、通常は市場価格より低く見積もられます。

 

担保評価額は、一般的に「再調達価格(原価法)」や「収益還元法」「取引事例比較法」により算出されます。そして不動産の評価額に、金融機関が定める掛目をかけて算出される仕組みです。今回は、原価法にあたる「再調達価格」を用いた評価方法を参考に解説していきます。

 

担保評価額の計算では、土地と建物それぞれの評価額を出し、合算した金額に掛目を乗じるのが基本です。これに申込者の年収や信用情報などを加味して最終的な借入可能額が決まります。

 

以下で、土地と建物の具体的な評価方法を見ていきましょう。

【土地の評価方法】

土地の評価は、主に以下のいずれかを基準に行われます。

 

固定資産税評価額

・路線価

・公示地価

 

例えば、土地面積200㎡、路線価10万円/㎡の場合の土地評価額は以下のとおりです。

 

土地評価額:200㎡ × 10万円=2,000万円

 

【建物の評価方法】

建物は、再調達価格に基づき以下の式で算出されます。

 

建物評価額:(再調達価格 × 建物面積 × 残存年数) ÷ 法定耐用年数

 

例えば、再調達価格20万円/㎡、建物面積200㎡、残存年数12年、耐用年数22年の場合でみてみましょう。

 

建物評価額=(20万円 × 200㎡ × 12年)÷ 22年 ≒ 2,181万円

 

【担保評価額の計算】

土地と建物の評価額を合算し、金融機関ごとに定めた掛目を乗じます。掛目が80%の場合は以下のようになります。

 

(2,000万円+2,181万円)× 80%=約3,345万円

 

これに申込者の年収や信用情報などを加味して最終的な借入可能額が決まる仕組みです。

 

 開業資金のための不動産担保ローン審査のポイント

不動産担保ローンは、万が一返済が滞った場合でも担保物件の売却によって貸付金を回収できるという特性があるため、無担保ローンに比べて比較的審査に通りやすいといわれています。

 

とはいえ、すべての申込者が必ずしも審査に通るわけではなく、不動産の評価や申込者の信用状況によっては、融資を断られるケースもあります。

 

ここからは、審査に通過するために押さえておきたいポイントをみていきましょう。

 

審査で重視される3つの要素

不動産担保ローンの審査で重視されるのは、主に次の3つです。

 

担保価値

・事業計画の実現性

・返済能力

 

不動産担保ローンを利用する際は、担保にする不動産の「価値」が審査結果を左右します。不動産の価値が高いと判断されれば、審査に通りやすく、より多くの資金を借りられる可能性が高まります。

 

以下に、担保価値が高いとされる不動産の特徴を紹介します。

 

・築年数が浅い

・駅から近い

・都心にある

・土地の形状が整っている

 

次にチェックされるのが、事業計画の実現性です。単に夢や想いを語るだけでは不十分で、立地や競合環境、売上見込みの根拠が明確であることが求められます。現実的な収支計画があるかどうかもポイントになるでしょう。効果的な事業計画書の作成方法は次項で詳しく解説します。

 

最後が返済能力です。個人で申し込む場合は、年齢・年収・勤続年数がチェックされ、とくに安定した職業や長期勤務は高評価につながります。また、過去のローン返済履歴や延滞の有無などの信用情報も審査の対象です。

 

審査通過率を高めるには、これらの要素を事前にチェックし、見直しや改善に取り組むことが重要です。

 

事業計画書の効果的な作り方

不動産担保ローンの審査に通過するには、評価されやすい事業計画書の作成が重要です。金融機関は、貸し倒れリスクを避けるために、その事業に収益性と継続性があるかどうかを事業計画書で見極めます。

 

評価されやすい事業計画書を作成するためのポイントは以下のとおりです。

 

・わかりやすく簡潔にまとめる

・具体的な数字を入れる

・競合他社や自社の強みを分析する

 

文章だけで構成された計画書では、読み手に意図が伝わりにくくなるため、図表や箇条書き、画像などを活用し、視覚的に伝わりやすくすることが大切です。

 

売上や利益の見込みなどについては「増加を見込む」「順調に推移する」といった曖昧な表現ではなく、数値を用いて明確に示すことで説得力が増します。

 

また、競合分析が不足していると「市場を理解していない」と判断される可能性もあります。競合の現状を把握し、自社との違いや優位性を具体的に示すことで、金融機関からの評価が高まりやすくなるでしょう。

 

なお、事業計画書に記載すべき項目は主に以下のとおりです。

・事業の概要

・開業の動機

・経営者の経歴

・取扱商品やサービス

・差別化ポイント

・従業員体制

・取引先・仕入れ先

・借入状況

・必要資金と調達方法

・収支見込み

・集客・販売戦略

・競合分析

・想定されるリスクと対策

 

これらの項目を不備なく、正確に記載することが大事です。なお、日本政策金融公庫の公式サイトでは、実際に使える事業計画書のテンプレートも配布されているため、作成の際の参考にするとよいでしょう。

 

日本政策金融公庫 事業計画書テンプレート

 

審査通過率を上げる申込み前の準備

不動産担保ローンの審査通過率を上げるためには、事前の準備が重要です。

 

とくに以下の3つのポイントを押さえておくことで、金融機関からの信頼度を高め、スムーズな審査通過につながります。

 

必要書類の完璧な準備

・面談対策

・物件評価の事前確認

 

まず、必要書類の不備や記入ミスは審査落ちの原因になります。確定申告書、収入証明書、本人確認書類などは、最新のものを提出しましょう。書類がきちんと揃っているだけでも「この人はしっかりしている」という好印象を与えることができます。

 

次に、面談対策も忘れてはいけません。

 

審査担当者は、数字だけでなく事業に対する熱意やビジョンも見ています。売上見込みや利益率などの「根拠ある数字」を使って説明すると同時に、自信と誠実さが伝わる話し方を意識しましょう。

 

物件評価の事前確認も重要な要素です。

 

固定資産税評価額や路線価を事前に確認しておくことで、担保価値のおおよその目安がつかめます。また、不動産ポータルサイトを活用して、同じエリアの売買事例を調べておくと、市場価格の相場を把握する参考になるでしょう。

 

 不動産担保ローンで開業資金を調達する手順

不動産担保ローンを活用して開業資金を調達する場合、事前準備から融資実行までの流れをきちんと把握しておきましょう。

 

申込みから融資の実行までにはいくつかの工程があり、必要書類の提出や契約確認なども求められます。

 

ここでは「審査の流れ」「書類の準備」「契約時の注意点」という3つのステップに分けて、実際の進行プロセスを詳しく解説していきます。

 

申込みから融資実行までのタイムライン

不動産担保ローンで融資を受ける場合、基本的には以下の流れで手続きが進みます。

1.申込み(即日〜数日)

本人確認書類や収入証明書、不動産の資料などを用意し、ローンの申込みを行います。オンラインでの仮審査が可能な金融機関もあります。

 

2.審査(数日~2週間)

金融機関が担保となる不動産の評価や、申込者の返済能力・事業計画の内容などを審査します。

 

3.契約(審査後数日)

審査通過後、融資条件や担保設定に関する契約書を締結します。司法書士による抵当権設定の手続きも行われます。

 

4.融資実行(契約日当日から数日以内)

契約手続きが完了すると、融資実行日に指定口座へ融資金額が振り込まれます。

金融機関によってスピードは異なりますが、全体として、申込みから融資実行までの期間はおよそ1週間〜3週間が目安となります。書類の不備や物件評価の調整により融資が遅れる場合もあります。

 

必要書類の収集と準備チェックリスト

不動産担保ローンの審査をスムーズに進めるためには、必要書類の事前準備が欠かせません。必要書類の不備や不足は審査遅れや審査落ちの原因となるため、以下のチェックリストをもとに早めに準備しておきましょう。

書類 備考 取得方法
本人確認書類 運転免許証、パスポート、マイナンバーカード 各発行機関、自治体
実印 市区町村に登録した印鑑が必要 事前に役所で印鑑登録を行う
印鑑証明書 実印の登録を証明する書類 市区町村窓口、またはコンビニ
納税証明書・固定資産税納付書 所得や不動産の納税状況を示す 税務署や自治体
収入証明書 源泉徴収票、確定申告書など 勤務先または税務署、市区町村
不動産登記簿謄本 所有権や抵当権の有無を確認 法務局の窓口、郵送、オンライン
不動産権利書 登記済み祥または登記識別情報 登記時に交付されたものを保管
借入残高証明書 他のローン残高を証明 借入先の金融機関に発行を依頼
商業登記簿謄本(法人) 法人の登記内容を確認 法務局の窓口、郵送、オンライン
事業計画書 収支状況や今後の経営計画を示す資料 自身で作成
確定申告書または決算書 直近2~3年分 自身で保管

 

書類は最新のものを揃え、不明点があれば早めに金融機関や専門家に確認を取りましょう。とくに事業計画書の内容は審査に大きく影響するため、簡潔かつ具体的にまとめておくことが重要です。

 

また、提出時にはコピーを控えておくと、再提出が求められた際にも対応しやすくなります。

 

契約時の注意点と確認事項

不動産担保ローンの審査に通過した後は、いよいよ融資契約の締結です。

 

このとき、契約書をよく読まずに署名してしまうと、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。内容をしっかり確認し、納得したうえで手続きを進めましょう。

 

とくに確認すべきポイントは以下のとおりです。

 

  • 契約書に記載された金利や返済条件
  • 返済期間・返済方法
  • 遅延損害金や期限の利益喪失条項
  • 特約条項
  • 連帯保証人がいる場合はその責任範囲

 

これらの項目は、将来的な資金繰りの悪化やトラブルにつながる可能性があるため、少しでも不明点がある場合は、担当者によく確認するようにしましょう。

 

 銀行融資と不動産担保ローンの比較

起業や開業時にはさまざまな資金調達手段がありますが、そのなかでも「銀行融資」と「不動産担保ローン」は多くの事業者に活用されています。双方には審査の難易度や借入期間、返済条件などに違いがあり、目的や状況に応じた使い分けが重要です。

 

ここでは、それぞれの違いや特徴、どのような方に不動産担保ローンが向いているかについて解説していきます。

 

審査難易度の違いと通りやすさ

銀行融資と不動産担保ローンでは、審査基準や通過のしやすさに違いがあります。

 

銀行融資の審査は厳格で、主に以下の点が重視されます。

 

  • 信用情報(過去の延滞・事故歴)
  • 返済能力(年齢、勤続年数、年収など)
  • 事業計画の実現性
  • 過去の業績や税務状況

 

一方、不動産担保ローンは担保物件の評価を重視するため、比較的柔軟な審査が行われます。重視される点は主に次のとおりです。

 

  • 担保物件の評価額
  • 返済能力(年齢、勤続年数、年収など)
  • 信用情報(過去の延滞・事故歴)
  • 事業計画の実現性

 

また、銀行融資と不動産担保ローンでは、審査に必要となる書類に若干の違いが生じます。以下で双方の必要書類を一覧にまとめました。

 

  銀行融資 不動産担保ローン
必要な書類 ・本人確認書類 ・本人確認書類
・印鑑証明書 ・印鑑証明書
・納税証明書 ・納税証明書
・収入証明書 ・収入証明書
・借入残高証明書 ・不動産登記簿謄本
・商業登記簿謄本(法人) ・不動産権利書
・事業計画書 ・借入残高証明書
・確定申告書または決算書 ・商業登記簿謄本(法人)
  ・事業計画書
・確定申告書または決算書

業間もない事業者にとっては過去の実績が乏しいため、銀行融資の審査通過は難しい傾向にあります。そのため、担保となる不動産を所有している場合は、不動産担保ローンの方が現実的な選択肢となるでしょう。

 

借入期間と返済条件の差

銀行融資と不動産担保ローンでは、借入期間や返済条件にも違いがあります。資金繰りやキャッシュフローに直結する要素のため、きちんと比較しておくことが重要です。

  銀行融資 不動産担保ローン
借入期間 一般的に5年~15年 一般的に5年~30年
返済方法 元利均等返済または元金均等返済 元利均等返済や元金一括返済等
繰上返済 原則可能 原則可能

  

銀行融資は短期~中期向けで、返済期間が短いと毎月の返済負担が重くなります。一方、不動産担保ローンは借入期間を長めに設定できるため、月々の返済額を抑えやすい点が特徴です。

 

どれくらいの収益がいつから見込めるのか、初期費用に余裕があるかどうかを確認したうえで、自身のキャッシュフロー計画に合った返済方法を選ぶことです。

 

短期間で返済できる見込みがある場合は銀行融資、長期で安定的に返していきたい場合は不動産担保ローンを選択するとよいでしょう。

 

どんな起業家に不動産担保ローンが向いているか?

不動産担保ローンは、以下のような条件に当てはまる起業家にとって有力な資金調達手段となります。

 

  • 自身または家族名義で不動産を所有している
  • 銀行融資よりも高額な資金を希望している
  • 起業間もなく、信用実績や決算書がない

 

以下で不動産担保ローンを活用した成功事例を紹介します。

カフェを開業したAさんは、自己資金だけでは設備資金が足りず、銀行融資を申請しましたが「実績不足」を理由に審査落ちとなりました。しかし、自宅不動産を担保にしたことで不動産担保ローンの審査には無事通過。希望通りの資金を調達でき、無事に店舗オープンへこぎつけました。

 

このように、過去の実績や信用情報よりも担保価値を重視する不動産担保ローンは、早期にまとまった資金が必要な起業家や、銀行融資が難しいケースで有効です。

 

 まとめ

不動産担保ローンは、不動産を所有している方であれば、事業の立ち上げに必要な資金を柔軟に確保できる有効な手段です。とくに、創業初期で実績が乏しい起業家にとっては、銀行融資よりも現実的な選択肢となるでしょう。

 

また、資金用途に制限が少ないため、内装や設備、人件費など多岐にわたる開業資金に対応できるのも特徴です。

 

ただし、融資実行までは一定の時間がかかるため、計画には十分な時間の余裕を持つことが大切です。自身の状況に適した資金調達手段を選び、スムーズな開業を目指しましょう。

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