不動産担保ローンは残債があっても借りられる?対処法と資金調達のポイント

不動産担保ローンは残債があっても借りられる?対処法と資金調達のポイント

 

不動産担保ローンを検討しているけれど、既に不動産を担保に住宅ローンや事業用ローンの融資を受けており、その状態でも借りられるのかと不安に思われている方もいらっしゃると思います。

この記事では、「不動産担保ローンは残債があっても借りられるのか?」について解説し、残債がある場合の対処法と資金調達のポイントについて紹介していきます。

 

 

 不動産担保ローンと残債の基本知識

まず結論から申し上げると、残債がある状態でも不動産担保ローンを組むことは可能です。

但し、「不動産を担保にした借入れが何も無い状態」で申込を行う場合と、「既に第一抵当で借入がある状態」で申込を行う場合とでは、金融機関の見方が大きく異なります。具体的に言うと審査が厳しく、慎重に行われることとなり、お客様の希望する条件での融資が難しくなる可能性があります。

残債がある場合に借入が出来るか否かは、主に下記の点によって左右されます。

・「不動産の担保評価がどのくらいの金額か」

・「第一抵当の残債がどの程度残っているか」

・「金融機関側の融資条件(第二抵当以下でも取り扱うか否か)」

・「申込人の信用力」

・「新規融資をした場合の返済比率」

 

不動産担保ローンの考え方をおさらいしつつ、これらのポイントについて解説していきます。

 

不動産担保ローンとは何か

不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にすることで資金を借りられるローンのことです。担保があることで貸し手のリスクが抑えられるため、無担保ローンと比べて高額の融資を受けやすく、金利も比較的低めに設定されています。

不動産は高い価値を維持しやすく、担保(=返済が難しくなった際に、換価して返済に充てるための保証)に最も適していると言われており、昔から資金調達の方法としてよく使われてきました。

マイホーム購入のための住宅ローン、アパート購入のためのアパートローンなども大枠で言えば不動産担保ローンの一種となりますが、一般的に「不動産担保ローン」と言うと、先の住宅ローンやアパートローンなどを除いた、「資金使途自由のフリーローン」を指すことが多い印象です。

同じ不動産を担保にしたローンでも、住宅ローンやアパートローン、不動産担保ローンによって審査の考え方は異なりますが、資金使途自由の不動産担保ローンは一般的に下記のような特徴があります。

 

担保評価 積算価格・収益還元法・実勢価格
担保掛目 担保評価の70%~80%
金利 銀行系:1%~8% ノンバンク系:2%~10%
融資金額上限 5億~10億円程度

 

住宅ローンなどの残債がある場合の影響

冒頭に記載した通り、住宅ローンなどの残債がある状態で不動産担保ローンを組むことができるかは、申込をされる方の収入や返済能力、担保となる不動産の価値、残債が抵当権か根抵当権なのかになどによって左右されます。

不動産担保ローンの場合、金融機関が算出した不動産評価額に対し、担保掛目(70~80%)を入れた金額が融資上限金額となります。

残債がある場合、算出した融資上限金額から第一順位の残債額(根抵当権の場合は設定されている極度額)を差し引いて融資枠があるかどうか判断されます。

ですので、残債が少ない(根抵当権の場合は極度額の金額が少ない)ほど、不動産担保ローンを組める可能性が高まります。

※第一順位の残債がある状態で、第二順位から融資をする場合の計算方法については後述します。

金融機関によっては、融資の枠があると判断されたとしても、第一順位とのバランスがあまりにも悪くなる場合には融資自体を断られるケースもあります。

例)不動産評価額:1億円 担保掛目:80% 融資限度額:8,000万円

  第一順位の残債が7,000万円ある状態で、第二順位から300万円の融資申込の場合、不動産の融資枠は確保できるものの第一順位との債権のバランスが悪くなるため断るケースなど。

また、そもそも融資をする条件として、第一順位が絶対という金融機関も多数ありますので、第二順位以下でも検討可能な金融機関かどうかは事前に確認するようにしましょう。

 

 残債があっても不動産担保ローンを借りられる条件

先述の通り住宅ローンなどの残債がある場合には、その分融資枠が圧迫され金融機関の審査も厳しくなりますが、以下のようなケースでは不動産担保ローンを組める可能性があります。

・ローンの残債が少なく不動産の価値が高い

・収入が安定しており、第二順位から融資したとしても返済能力に問題がない

・既存債務の返済状況が良好

以下、簡単にポイントについて解説していきます。

 

担保余力の計算方法と重要性

不動産担保ローンの融資上限金額は、【担保不動産の価値×70~80%】が目安となりますので、不動産評価額が5,000万円の場合は、3,500万円~4,000万円が融資上限となります。

住宅ローンなどの残債がある場合は、ここから残債額(根抵当権の場合は極度額)を差し引いた金額が第二抵当から融資できる金額となります。

 

◆不動産評価額:5,000万円 担保掛目:70%場合 → 融資可能金額:3,500万円

・例1 残債が抵当権 残高1,000万円の場合

 3,500万円 - 1,000万円 = 融資可能金額:2,500万円

 

・例2 残債が根抵当権 極度額2,000万円の場合

 3,500万円 - 2,000万円 = 融資可能金額:1,500万円

※根抵当権は将来発生しうる不特定多数の債権を担保するための枠で、極度額はその範囲を示したもの。実際には極度額いっぱいまで借り入れをしているケースばかりではありませんが、現在の借入残高に関わらず将来発生する借入も見込んで極度額の金額を優先債権として見なすのが一般的です。

 

残債をそのままの金額で見るのか、損害金などを考慮して少し大きめに見るのかなど、厳密には各金融機関で計算方法の違いはありますが、計算を入れた上でそれでも担保掛目が適正な範囲内に収まっていることが一つの条件となります。

 

返済能力の審査基準

担保不動産の評価余力があると判断された場合でも、新規の融資を行うことで申込人の返済能力を超えると判断された場合には、融資自体を断られることもあります。

審査基準は各金融機関によって異なりますが、一般的には返済負担率(返済比率)が一つの目安となり、融資可否が判断されます。

 

・返済負担率(返済比率)

申込人の年収に対し、返済金額がどの程度の割合を占めるかという割合で、一般的に返済金額合計で年収の30~35%までが限度の目安と言われています。

例)年収1,000万円の申込人であれば、他の借り入れ(不動産担保ローンだけではなく、自動車ローンや教育ローンも含む)を含めた返済額のトータルが300万円(月々25万円)を超えると、返済能力をオーバーするという考え方。現在の借り入れが既にこの水準に達している場合には、新規融資を断られる可能性がある。

返済比率がオーバーする懸念がある場合、既存債務の支払方法変更(ボーナス払いを無くすなど)や、保証人をつけて返済能力を上げるなどの対策があります。

 

補足として、年収が高く、安定した企業に長く勤務していることは金融機関にとってプラス要因として判断されることが多く、通常30~35%程度が目安と言われる返済比率を40%程度まで引き上げられる要因となることもあります。

 

信用情報と審査への影響

金融機関が審査を行う際、返済能力に加えて信用情報も大きな審査項目となります。

信用情報とは個人の金融取引の履歴が記録されているもので、現在ある債務の返済状況や過去の延滞情報などがわかる仕組みとなっています。

過去にローン返済を延滞していたり、債務整理歴がある場合は、たとえ担保余力があり現在の収入が高かったとしても審査通過が難しくなる可能性があります。

特に、直近1~2年の返済状況は厳しくチェックされるため、遅れがある場合には返済実績を高めてから申込することもお勧めします。

 

 残債がある場合の不動産担保ローンの申込戦略

残債がある状態で不動産担保ローンの審査を有利に進めるためのポイントを説明します。

・余裕があれば第一抵当を繰り上げ返済し、残債を少なくしておく(=融資枠確保)

・第一抵当以外にも借り入れがあれば、可能な限り完済する(=返済比率改善)

・信用情報を良好に保つ

・資金使途や返済計画を根拠を持って説明できるようにする

 

第二抵当から融資をする場合、金融機関の審査は第一抵当の残債によって融資枠を算出します。そのため、申込時点では正確な残債、正確な返済状況の申告が必要となります。(虚偽の申告で審査が通ったとしても、契約時に提出する書類と整合性が取れない場合には融資は否決となります)

第一抵当が変動金利型の住宅ローンの場合、半年に一度金融機関から返済予定表が送られてきますが、最新の予定表を紛失してしまったというケースも見受けられます。お手元に最新の返済予定表が無い場合には、第一抵当の金融機関から取り寄せるようにしましょう。

 

必要書類と事前準備

金融機関によって細かな違いが出る可能性はありますが、申込時に求められる書類は下記が中心となります。

・本人確認書類(免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)

・収入証明(確定申告書や源泉徴収票、法人の場合は決算書や事業計画書など)

・納税証明書

・住民票

・第一抵当の残高証明書及び返済予定表

 

第一抵当の残高証明書と返済予定表は、金融機関によっては依頼してから手元に届くまで1~2週間ほどかかるケースもあります。急ぎの資金で融資を申込する場合でも、第二抵当の場合は必須の書類となりますので、早めに準備することをお勧めします。

また、保有する資産をどう活用するかは、本来所有者が自由に判断できることになりますが、中には「自社以外の担保(抵当権)をつけるには事前の同意や通知が必要」とする金融機関も存在します。契約書にこれに類する文言があった場合、第一抵当権者に無断で第二抵当を入れて借り入れをすると契約違反として一括返済を求められることもありますので、事前に契約書をよく確認するようにしてください。

※第一抵当の金融機関の担当者に直接聞くことも可能ですが、一般的に金融機関は自社以外の抵当が設定されることを好ましく思わない場合が多いため、第一抵当権者との関係性が悪化する可能性もあります。

 

 よくある質問

住宅ローンが残っていても不動産担保ローンは組めますか?

 組むことはできますが、全ての金融機関が対応しているわけではありません。第一抵当でないと取扱いしない金融機関、第二抵当までに限定している金融機関など、抵当順位に制限を設けている金融機関も多数あります。これは担保順位が下がることによって金融機関側のリスクが高くなるためです。アサックスでは担保順位の制限はなく、第二抵当・第三抵当およびそれ以外の場合でもご相談を承っております。

 

不動産担保ローンを返済できなくなった場合どうなりますか?

返済できなくなった場合には、最終的に不動産を売却して返済を行う必要があります。不動産に担保権(抵当権や根抵当権)が複数設定されている場合、まずは第一抵当権者から優先的に弁済が行われ、残った金額が第二抵当権者への弁済に充てられます。(第三順位以降も同様です)

もし不動産を売却しても借り入れが残る場合には、債権者に対して返済を継続する必要があります。

 

 まとめ

記載してきた通り、住宅ローンなどの残債がある場合でも、不動産担保ローンの利用は可能です。

ただし、

・全ての金融機関が第二抵当以下での融資に対応しているわけではないこと

【担保不動産の価値×70~80%-第一抵当の残債】を融資可能額と見なしますが、担保評価の算出及びどの位の掛目まで許容するか(リスクをどの程度取るか)は金融機関マターとなり、第二抵当以下での融資はその目線がさらに厳しくなること

・現在のお借入れ+αの返済を考えた際、収入状況や信用情報から金額を絞られる可能性もあること

これらを勘案すると、現在住宅ローン等の残債があり第二抵当以下でお借入れを検討される場合には、ご自身が想像される以上に厳しい回答をもらう可能性があることは認識しておいた方が良いかもしれません。

 

第二抵当以下での融資に関しては、金融機関によって積極的に行うのか消極的になるのか方向性が大きく分かれる部分となりますので、よくご検討をいただいた上で複数の金融機関に簡易審査を依頼するのも良いでしょう。

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