不動産担保ローンの一括返済のメリット・デメリットとは?手続き方法や確認事項も紹介

不動産担保ローンの一括返済のメリット・デメリットとは?手続き方法や確認事項も紹介

 

資金使途の制限がなく、高額な金額を低金利で長期間借り入れすることができる不動産担保ローンですが、自己資金や返済条件を改善するための他行借入などで期限前に一括返済を検討する場面もあるかと思います。今回は不動産担保ローンを一括返済した場合のメリット・デメリット、手続き方法や確認しておくべき事項を解説していきます。

 

 

 不動産担保ローンの一括返済の仕組みとタイミング

不動産担保ローンで借入した資金を借入先の金融機関・融資会社へ一括返済をする場合、いつでも自由に出来るわけではありません。多くの場合、まず借入先へ一括返済の申し込みを行って頂くことになります。詳しくはご自身と借入先との契約内容の確認が必要となりますが、返済予定日の何営業日前までに返済の申し出を行うなどの手続き上の条件が契約書面に記載されていますので、一括返済のご予定がある場合、まずはご契約内容を確認しましょう。

 

残債を一度に完済する仕組み

借入金を一括返済する場合、元本や利息のほかに手数料や解約違約金が必要になる場合があります。ご自身の契約内容をご確認のうえ、該当する手数料等がないか確認しましょう。

では、分かりやすい具体例を挙げて一括返済時の必要資金を考えてみます。

 

例)借入金残高1,000万円、金利1.95%、繰上げ返済手数料2%の場合、返済予定日までの利払い必要日数20日の場合

返済元金 10,000,000円
利息(20日分) 10,684円
繰上げ返済手数料 200,000円
合計 10,210,684円

 

借入先に支払う金額についてはご自身の想定より多くなる場合がありますので、一括返済の予定がある場合は早めにご契約内容を確認し、ご不明な点はお借入先に確認をされるのが良いでしょう。

 

一括返済が検討される主なケース

一括返済を検討するケースとしては様々な場合がありますが、ここでは比較的多いケースを挙げてみましょう。

 

<例① 自己資金による完済のケース>

手元資金に余裕ができたため、金利を支払うよりも既往の借入を減らして債務を減らすというような場合に、一括返済を行うことが考えられます。

 

<例② 借り換えするケース>

資金繰りの改善を目的に、金利の低い金融機関へ借り換えするケースは多いと思います。また、追加融資を受けたいが今の借入先では対応が難しいと言われたため、別の金融機関へ借り換えるケースが想定されます。

 

<例③ 担保物件を売却するケース>

担保としている不動産を売却して返済するケースもあります。不動産業者様が商品として購入した物件や、個人の方でも投資用不動産を担保にしているケース、住み替えまでのつなぎ資金など、当初より売却による返済を想定しているケースなどがあります。また、不意の相続の発生により債務を承継した場合に、借入の担保になっている不動産を売却して債務を返済するような場合もございます。

 

 不動産担保ローンを一括返済するメリット

不動産担保ローンを一括返済するメリットとしては以下の点が挙げられます。

 

① 支払い利息の軽減

完済することにより完済日以降の金利負担が無くなります。特に高額借入で長期間の返済を予定していた場合、支払い総額を抑えられるというメリットがあります。

 

② 担保不動産の自由な活用

不動産担保ローンを完済することで、担保物件に設定された登記の抹消が可能になります。これにより、賃貸に出すなどの使用状況の変更や売却行為などを借入先の制限なく自由に行うことができます。再度担保として活用することも自由です。

 

③ 月々の資金繰りなど心理的負担の軽減

借入金が無くなることで日々の資金繰りや将来の返済に対する心理的負担から解放される、あるいは負担が軽減される可能性があります。

 

以上、一括返済のメリットを3点挙げましたが、以下ではもう少し具体的に考えてみたいと思います。

 

将来の利息負担を大幅にカット

上記一括返済のメリット①将来の支払い利息の軽減について。

具体例を挙げてどの位の効果があるのか考えてみましょう。

 

例)借入内容:借入金2,000万円、金利2%(固定)

元利均等返済360回、支払額 月73,923円

上記条件にて30年利用して完済した場合と、10年後に一括返済した場合で比較してみます。

まず、360回の元利均等返済で完済した場合の返済総額は下記の通り。

返済総額 月73,293円×360回=26,612,280円

 

次に、120回返済後に繰上一括返済を行った場合の返済総額を計算してみます。

月73,293円×120回=8,795,160円

120回返済後の借入残高 14,612,834円

返済総額 8,795,160円+14,612,834円=23,407,994円

 

以上より、上記条件にて一括返済した場合、返済総額は3,204.286円軽減されます。

 

担保不動産の自由な活用が可能に

上記一括返済のメリット②担保不動産の自由な活用について。

不動産担保ローンを完済することで、担保物件に設定された抵当権や根抵当権といった登記の抹消が可能になります。登記設定をされていても担保物件を賃貸に出したり売買をすることはできますが、債権者の同意を得ずに行うと期限の利益を失う可能性がありますので注意が必要です。一方、一括返済した後は債務が無くなりますので、賃貸に出すなどの使用状況の変更や売却行為などを借入先の制限なく自由に行うことができます。もちろん再度担保として活用することも自由です。

 

毎月の返済ストレスからの解放

上記一括返済のメリット③月々の資金繰りなど心理的負担の軽減について。

個人にしても会社にしても、借入金があると月々の資金繰りに四苦八苦したり、将来の返済に対する不安で頭を悩まされるというようなことがあり得ます。家計においては住宅ローンや子供の教育資金、医療費や介護資金など、家計の負担が大きくなるタイミングで借入金の返済が生じると、大なり小なり精神的にストレスとなるでしょう。一括返済により借入金が無くなることで、このような心理的負担から解放される、あるいは負担が軽減されるという可能性があります。

 

 不動産担保ローンを一括返済するデメリット

不動産担保ローンを一括返済するデメリットとしては以下の点が挙げられます。

①   一括返済手数料や解約違約金の負担

借入先との契約内容により繰上げ一括返済の際に、手数料や解約違約金などの支払いが必要になる場合があります。

②   手元資金の減少

主に手元資金で借入金を一括返済する場合、金利負担は軽減されますが、手元資金が減少するため、不意な支出や資金繰りに支障を来す可能性があります。

以下では、もう少し具体的に考えてみます。

 

想定外の違約金・手数料が発生する可能性

借入先へ一括返済する際に一括返済手数料や解約違約金といった費用が必要になる場合があります。お客様にとっても重要な事項ですので契約書にも記載されていますし、担当者から説明を受けたうえでご契約するのが通常です。しかしながら、契約期間が長いとお客様の方で覚えておらず、元金と利息の支払いだけを考えて、いざ一括返済の手続きをした際に、想定していなかった手数料などが必要になることがありますので注意が必要です。ご自身の契約内容は定期的に確認されることをお勧めします。

一括返済の場合の手数料や解約違約金は、金融機関や融資会社によって異なります。金融機関の場合、住宅ローンや事業資金といった資金使途、固定金利と変動金利、店頭手続きとインターネットバンキングなど様々なケースで割合が異なります。概ね0円~数万円という割合が多いようです。また、融資会社などのノンバンクでは返済元金に対し手数料や解約違約金が発生することが多く、割合として0%~3%位が多いようです。

計算例)

 

  残元金 手数料割合 手数料(税込み)
金融機関A 2,000万円 固定 3.3万円
融資会社B 1,000万円 2% 20万円
融資会社C  500万円 3% 30万円

 

手元資金が大きく減少するリスク

主に手元資金で借入金を一括返済する場合、金利負担は無くなりますが、手元の流動性資金が減少してしまうというリスクがあります。そのタイミングで不意な支出が生じた場合、資金繰りに支障を来す可能性があります。

金利負担の軽減も大切なことですが、返済した途端に再び借り入れが必要な状況になっては元も子もありません。このようなリスクを避ける対策として、一括返済をするのではなく一定の手元流動性資金を確保しつつ、一部繰上げ返済を行っていくというやり方もあります。また、借入と返済を繰り返すことが予想される場合は、不動産担保ローンでも抵当権ではなく根抵当権での融資枠を利用した借入を行う方法もあります。

 

 不動産担保ローンの一括返済の手続き方法

一括返済までの主な流れは以下の通りとなります。

① 借入先へ一括返済の意思表示と手続き方法の確認

② 完済可能な日程、一括返済金額、返済方法等の確認

③ 案内に従い完済金を返済

一括返済の目途が立ちましたら、まずは借入先に連絡し、必要な手続きを済ませましょう。一般的には書面等による繰上げ返済申し込みや解約申込みが必要になります。その際、借入先が返済を受けられる日程や返済予定日付での完済金額が案内されます。また、完済金の返済方法や手続きに必要なものなどの案内も順次行われます。

 

事前準備:必要な書類と確認事項

金融機関により手続きは異なりますが、一括返済時に必要な手続きとしては、繰上げ返済の申請書や解約申込書といった書類の提出が考えられます。その場合、返済予定日の何営業日前までに書面による提出が必要といった取り決めが契約書に記載されている場合がありますので、契約書の内容に従って手続きを進めることになります。

完済までに確認すべき事項としては、主に次のものが考えられます。

① 完済可能な日程

② 完済金額(元本、利息、繰上げ返済にかかる手数料)

③ 返済方法

④ 返済後に返却を受ける書類の受け渡し手続きなど

いずれにしても、借入先の担当者と連絡を取り合い分からない点は確認しましょう。

 

一括返済後の担保抹消手続きとタイミング

不動産担保ローンの借入れを完済した場合、融資時に借入先の金融機関が設定した抵当権や根抵当権といった登記を抹消するために必要な書類が返却されます。その書類を法務局に提出し登記を抹消することで、借入れ前の権利関係に戻ります。

借り換えや売却による一括返済の際は、借り換え先金融機関の担当司法書士や、買主側を担当する司法書士といった登記の専門家が手続きを行いますので、決済当日に滞りなく手続きが行われます。

一方、自己資金で完済した場合、後で手続きをしようとして申請することを忘れてしまい、書類を紛失してしまうということが稀に起こります。その際は煩雑な手続きが必要になる場合がありますので、登記抹消に必要な書類を受領したら速やかに法務局に申請するのがベストなタイミングと言えるでしょう。

 

必要となる登記費用の目安

抵当権等の抹消登記は誰でも申請することができますが、慣れていないと分かりにくい点も多く、手間と時間がかかります。できれば登記の専門家である司法書士に依頼するのが適切です。但し、司法書士に依頼する場合は費用が掛かります。

抵当権の抹消登記費用の目安は下記の通りです。

・登録免許税・・・土地・建物 各1筆につき1,000円×物件数

・司法書士の報酬・・・概ね15,000~20,000円くらいが目安

例)一戸建てで土地・建物が各1つずつの場合、登録免許税2,000円+司法書士への報酬が登記抹消に必要な費用となります。

 

 まとめ

不動産担保ローンでの借入れを一括返済する場合には、メリットだけでなくデメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか。目先の支払いや心理的負担の軽減なども大事なことですが、返済後の資金状況、市況やビジネス環境など想定外のことが起きても慌てずに済むよう、余裕のある資金計画を立てることが大切です。

アサックスでは資金プランナーの一人一人がお客様の資金の悩みに親身にお応えいたしますので、お気軽にご相談下さい。。

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