確定申告とは?初心者の人でもわかりやすくやり方や流れを解説!

確定申告とは?初心者の人でもわかりやすくやり方や流れを解説!

 

例年、1月から3月頃になると「確定申告」という言葉を耳にする機会が多くなります。
個人事業主の方には馴染みのある言葉だと思いますが、会社員の方は毎年行う手続きでは無いため、言葉自体は聞いたことがあっても、具体的な方法や何のために行う手続きなのかがイメージしづらいかもしれません。
ただ、普段確定申告をする必要が無い人であっても、今後申告を必要とする状況になる可能性は十分にあります。対象となるケースや申告の種類、方法など、留意するべき事項も多くありますので、本コラムにて説明していきます。

  そもそも確定申告とは?  

「確定申告」とは、一言で言うと「税金を納めるための手続き」のことです。国民の三大義務の一つである納税を行うために必要な手続きであり、1年間の収入から必要経費を差し引き、算出された「所得」に応じて納めるべき税額が確定します。
所得には種類があり「給与所得」「雑所得」「配当所得」「一時所得」「事業所得」「不動産所得」「利子所得」「配当所得」「譲渡所得」「山林所得」「退職所得」に分類されます。
会社員の方は、勤務先の経理担当者が「年末調整」という形で、代わりに給与所得にかかる所得税の精算行っているケースがほとんどです。勤務先の給与以外の収入が無い場合には、年末調整でその年の所得が確定するため、改めて申告を行う必要はありません。

  個人事業主が確定申告を行うメリットは?  

先述の通り、確定申告は納税義務に基づく手続きとして行われることが大前提ですが、申告することで得られるメリットもあります。
確定申告を行うのは個人事業主の方やフリーランスの方が主となりますが、そういった方にとってのメリットは下記のようなものが挙げられます。

 

節税効果
確定申告をすると様々な控除を受けることが出来ます。事業に必要な経費など控除対象となりうるものをしっかりと申告することで、納税額の減額につながることがあります。


赤字を繰り越すことができる
青色申告者に限りますが「繰越控除」という制度を利用することが出来ます。今年が黒字でも昨年が赤字だった場合、黒字額と赤字額を差し引きして納税額を算出します。結果、所得税が軽減されることもあります。


所得税の還付金を受け取れる可能性がある
年の途中で勤務先の会社を退職して個人事業主になった場合、通常は元の勤務先が年末調整をしてくれることはありません。自ら申告を行うことで、所得税の還付を受けられる可能性があります。


確定申告書自体が信用につながる
金融機関から住宅ローン借入れや事業資金の融資を受ける時、賃貸住宅を借りる時など、あらゆる局面で収入証明書が求められます。その際に確定申告書は収入証明書として見なされ社会的信用にもつながります。

  確定申告をしないとどうなる?  

反対に、確定申告をしないことでデメリットとリスクも生じます。

 

国民健康保険税の減税が受けられない
国民健康保険税は所得額によって減税が受けられるか否かが決まりますが、確定申告をしないと所得額が不明と見なされるため減税を受けることができません。
青色申告の特別控除枠が減額される
定められた申告期限内に申告を行わない場合、最高65万円までの所得からの控除枠が10万円まで減額されてしまいます。


追加で課税される可能性が出てくる
税務署の調査で未申告と判断されてしまうと、無申告加算税や延滞税が課税される可能性があります。本来支払うべき税金を納めていないという状況に対してのペナルティの様なもので、結果として損失が大きくなってしまいます。


社会的信用力が弱くなる
確定申告書は自身の所得を表したものです。つまり、確定申告をしていないと所得が無いと見なされ、社会的信用力が弱くなってしまいます。

  青色申告と白色申告  

確定申告の方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
両者の違いを簡単に表すと「手続きは煩雑だが節税効果は高い」のが青色申告、「手続きは容易だが節税効果が低い」のが白色申告です。

 

  条件 メリット・デメリット
 青色申告 

税務署への開業届が必要

・青色申告の事前申請が必要

・帳簿付けは複式簿記

・最大で65万円の特別控除が受けられる

・赤字を3年間繰り越すことができる

・家族への給与を妥当な範囲内で全額経費にできる

・減価償却資産や家賃、光熱費などを経費計上できる

・事前申請や複式簿記など手続きが煩雑

 白色申告 

・税務署への開業届は不要

・青色申告の事前申請も不要

・帳簿付けは単式簿記

・特別控除が受けられない

・赤字を繰り越すことができない

・経費計上に上限がある

・手続きが容易

 

青色申告の方が多くのメリットを享受できることがわかります。青色申告をしている事業者が多いと言われているのは、そういった背景もあります。事業規模や目的に応じて申告方法を選択されることをお勧めします。

  確定申告が必要な人は?  

個人事業主
確定申告が必要になる代表的な対象者です。事業所得があった個人事業主は確定申告をする必要があります。

 

フリーランス
収入から所得税が源泉徴収されていて、税金の還付を受ける必要のあるフリーランスも確定申告の対象となります。

 

公的年金受給者
年金収入が400万円以上の公的年金受給者も確定申告が必要になります。

 

年収2,000万円以上の給与所得者
会社員であっても2,000万円以上の給与収入がある人は、会社では年末調整をしてもらえない為、自身で確定申告をする必要があります。

 

勤務先の給与収入とは別に年20万円以上の収入がある会社員
副業や掛け持ちで勤務している先からの給与収入、アルバイトでの収入が20万円以上ある会社員も確定申告の対象となります。

 

税金の還付を受けられる可能性のある会社員
「住宅ローンを組んだ」「医療費が多くかかった」「寄付金控除となる寄付をした」などの場合は、控除を受けられる可能性があるため状況次第では確定申告をした方が良いと思われます。

  確定申告が不要な人は?  

会社で年末調整をしている会社員
1年分の所得が確定し、還付や徴収を会社が年末調整という形で行っている会社員は確定申告をする必要はありません。


所得が少額である人
年間所得が48万円以下の人は確定申告をする必要はありません。基礎控除を差し引くことで課税所得額が0円となるため課税がなくなります。


本業が会社員であり、他にアルバイト等をしていても収入が20万円以下の人


年金収入が400万円以下の年金受給者

  確定申告の期限  

例年、確定申告の申告期間は2月中旬から3月中旬です。ただし、その時期になると税務署の窓口は、相談や問い合わせ対応を行うため非常に混雑します。
ここ最近では新型コロナウイルスの影響により、その期間内での申告が難しい人を対象に期限を延長しています。来年度も同じように申告期限が延長されるかどうかは現在のところ不透明なので、事前に国税庁のホームページをチェックするなどして確認しておきましょう。

  確定申告の流れ  

それでは実際に確定申告をするにはどのようにすればいいのでしょうか?
実際の手順を、準備する必要がある書類と一緒に説明していきます。

 

必要な書類を準備する

1. 確定申告書
毎年申告をしている人は、その年度の11月~1月頃に税務署から郵送されてきますが、直接税務署で入手することや国税庁のホームページからダウンロードすることも出来ます。
》申告書第一表・第二表


≪青色申告を行う場合≫
「青色申告決算書」という書類を作成する必要があります。帳簿の内容を決算書の形で記入したものです。一般用様式や不動産所得用様式などの種類がありますが、それぞれの事業実態に合わせたものを使用します。通常、4ページで構成されています。

》青色申告決算書

 

1ページ目:損益計算書
「売上」「原価」「経費」「各種引当金・準備金」「青色申告特別控除」の5項目に分かれているもので項目ごとに1年間の合計金額を記載します。

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2ページ目:損益計算書の内訳①・・・こちらも5項目に分かれています。

「月別売上金額および仕入金額」
月ごとの売上と仕入の金額を記載します。売上については本業での売上に加え本業以外の収入である雑収入も計算します。

「給料賃金の内訳」
従業員の氏名や給与額などを記載します。

「専従者給与の内訳」
家族への給与が発生した場合に記載します。

「貸倒引当金繰入額の計算」
売掛金や貸付金の内、回収が不可能だと想定される金額の見積額を記載します。

「青色申告特別控除額の計算」
1ページ目の青色申告特別控除枠と同じ数字を記載します。

 

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3ページ目:損益計算書の内訳②・・・事業上でかかった減価償却費などについて記載します。

「減価償却費の計算」
事業で使用している資産の取得額を一括ではなく、決められた耐用年数に応じて段階的に経費計上します。

「利子割引料の内訳」
金融機関からの借入の際に発生する支払利息や手形割引利息の割引料の金額を記載します。

「税理士・弁護士の報酬、料金の内訳」
帳簿付けの依頼や法律相談などでかかった費用を記載します。

「地代や家賃の内訳」
店舗や事務所を借りている場合の賃料や駐車場代などを記載します。自宅で事業を行っている場合は生活と事業のかかる割合に応じて家事按分を行うことができます。

「特殊事情」
売上や経費が前年と比較して大きく変動があった際には簡単に理由を記載します。

 

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4ページ目:貸借対照表・・・バランスシート(B/S)と言われるものです。1年分の結果報告が損益計算書なのに対して、期末時点での事業の財政状態を一目で表したものが貸借対照表になります。「資産の部」「負債・資本の部」「製造原価の計算」の3ブロックに分かれており、最終的には資産の部と負債・資本の部の合計金額が一致する形になります。

 

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≪白色申告を行う場合≫
「収支内訳書」という書類を作成する必要があります。勘定科目ごとにその年度の集計を出します。「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」の3種類があり所得に合わせたものを使用します。

 

》一般用
》農業所得用
》不動産所得用

 

2. 本人確認書類
マイナンバーの記載及び本人確認書類の提示もしくは写しの添付が必要です。番号確認書類・身元確認書類で構成されているので、マイナンバーカードと運転免許証があれば全てを網羅できます。運転免許証以外には、パスポート、在留カード、公的医療保険の被保険者証、身体障碍者手帳なども本人確認書類として使用することができます。

 

3. 所得書類
給与所得や公的年金収入がある人は源泉徴収票が必要になります。それ以外にも収入がある場合はその収入金額や必要経費がわかる書類を求められることがあります。

 

所得種別 必要書類
不動産所得・事業所得  確定申告書
不動産の譲渡

 ・売買契約書

 ・仲介手数料などの領収書

給与や年金など  源泉徴収票
配当などの一時的な所得  該当する所得の内容を証明するもの
株取引  年間取引計算書


4. 控除書類
代表的な書類は保険会社から送られてくる生命保険料の支払い控除証明書です。その他にも以下のような書類があります。

控除の種類 書類 内容
社会保険料

・控除証明書

・源泉徴収票

国民年金保険料や社会保険料の支払額に応じて控除を受けることができる
生命保険料 ・控除証明書 生命保険料の支払額に応じて控除を受けることができる
医療費

・医療費控除の明細書

・医療費通知書

年間の医療費が一定額を超える場合に控除を受けることができる
住宅ローン

・住宅借入金等特別控除額の計算明細書

・借入金の年末残高証明書

住宅ローンの支払額に応じて控除を受けることができる
地震保険料 ・地震保険料控除証明書 地震保険料の支払額に応じて控除を受けることができる
寄付金

・自治体から発行される受領書

・ふるさと納税の特定寄付金証明書

公共団体などに寄付(納税)をした場合に受け取ることができる


5. 提出する確定申告書の控えと返信送料分の切手を貼付した返信用封筒
必須ではありませんが税務署の受付印のある確定申告書を手元に置いておきたい人は必要となります。借入をする金融機関によっては受付印のある確定申告書でないと収入証明書として見なしてくれない時があります。

 

税務署に提出をする
確定申告に必要な書類が揃ったら税務署に提出をします。提出期限は通常であれば3月15日ですのでそれまでに提出をするようにしましょう。

 

税務署に直接提出する
納税地を管轄する税務署に持ち込むことができます。期限ぎりぎりだと非常に混みあっていますので、持ち込む場合は少し早めに提出することをお勧めします。尚、夜間や休日などは時間外収受箱というものが設置されているのでそこに投函することで提出が可能です。

 

・郵送する
郵送提出も認められています。ただし、送付方法には注意が必要です。確定申告書は信書にあたるため宅配便やゆうパック、ゆうメール、クリックポストなどは利用ができません。普通郵便もしくはレターパックで郵送するようにしましょう。

 

・e-Taxで提出する
e-Taxとは国税庁のシステムのことです。確定申告書やその他の添付書類のデータをインターネットで提出することができ、非常に便利な方法です。ただし、利用にはマイナンバーカードとマイナンバーカードを読み取れる機器類(一部のスマートフォンやICカードリーダライター)が必要となります。コストは多少かかりますが、将来的に継続して確定申告をする予定の人にとっては、時間と手間を考えると十分おつりがくる計算です。

  まとめ  

一言で「確定申告」と言っても様々な種類や方法があることを説明してきました。自身に課税される金額を正確かつ適正に計算・納税するための作業が「確定申告」です。年々、働き方が変わってきている中で所得や控除の対象も変動しています。納税において損や不利な状況にならないためにも普段から視野を広げて税金に関しての知識を情報として持っておくことは非常に大切なことです。

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