物上保証人とは?連帯保証人との違いもご紹介

物上保証人とは?連帯保証人との違いもご紹介

 

資金調達を検討するにあたり、「保証人」という用語を聞いたことがあるかと思います。
金融機関とのやりとりや金融ドラマでも、「連帯保証人」という用語がよく使われているため、「保証人」と聞くと、「連帯保証人」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。「保証人」の種類には、普通の「保証人」や「連帯保証人」の他に「物上保証人」という形態があります。今回は、「物上保証人」について説明していきます。

  物上保証人とは  

そもそも「物上保証人」とはどのような立ち位置の方を指しているのでしょうか。

 

結論から言うと、「不動産などの財産を担保として提供する人」のことを指します。「提供する」という言葉のとおり、自分ではなく他人のために行われる行為になります。一般的には「担保提供者」と呼ばれますが、契約書上では「(根)抵当権設定者」と記載されます。

 

金融機関などから資金調達を行う際に、担保を必要とすることがありますが、借主に担保となる財産がない場合には、ご親族などに依頼して不動産などの担保を提供していただくことがあります。担保を提供したご親族のことを「物上保証人」と呼びます。

  物上保証人と連帯保証人の違いって?  

それでは、「物上保証人」と「連帯保証人」の違いはどこにあるのでしょうか。
最大の違いは借入金に対する「責任の範囲」です。「連帯保証人」は無限責任、「物上保証人」は有限責任と表現するとわかりやすいのではないでしょうか。

 

「連帯保証人」の場合、「保証人」には認められている催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益という法的権利がありません。その責任の範囲は借主である債務者と同等であるため、自らが保証した債務者の借入金全てに対して責任を課されることになります。仮に債務者が債権者に対する支払いを怠った時には、連帯保証人が代わりに支払いを行わなければなりません。
「物上保証人」の責任の範囲は、債権者に対して提供した担保価値の範囲内となります。

 

具体的な事案で比較してみましょう。

 

借主である債務者(以下A)がご親族(以下B)の所有する不動産(評価額2,500万)を担保提供してもらい、金融機関から4,000万の借り入れを行ったとします。
その後、Aが支払いを行わず債務不履行となった場合、金融機関は担保権を行使してBの担保より債権回収を行うこととなります。その場合、Bが「連帯保証人」か「物上保証人」かによって、支払わなければならない金額が異なるのです。
「連帯保証人」の場合には、所有する不動産の処分価格(ここでは2,500万とします)を超えた借入金が残っていたら、超過している分についても支払いの責任が生じます。一方で「物上保証人」だった場合、不動産の処分価格を超えた金額を支払う必要はありません。あくまで自身が提供した担保の処分価格の範囲に留まります。

 

「責任の範囲」は、連帯保証人は保証した借入金全体、物上保証人は提供した担保の範囲内となることを認識しておくようにしましょう。

  どんな人が物上保証人になるの?  

それでは、「どのような人が、どのようなケースで物上保証人になるのか」について、2つの具体例を先にご紹介いたします。

 

「事業性資金×ご親族」

一番多く見受けられるのは、事業性資金の借入を行う場合です。

 

法人や個人事業主の方が、事業に伴う借り入れを金融機関に打診し、金融機関から担保を求められた際、まずはご自身が所有する不動産を担保にすることを検討されるものです。ところが、住宅ローンの残高が多く残っている場合や既に他の金融機関の担保となっている場合には、担保余力がないことも多いため、借り入れすることができません。

 

事業者の中でも特に家業を承継している方に多いのが、元々その事業を行っていたご親族に協力を依頼し、親族名義の不動産を担保提供してもらうケースです。担保そのものが変更となるため、金融機関によりますが前向きに検討してくれる可能性があります。この場合、担保提供をした親族が物上保証人となります。

 

「建築資金×ご両親」
ご両親が所有する土地の上に、お子様が新居を建築するための建築資金も多く見受けられます。一つの土地の上に、年季の入った建物と新しい建物が並んで建っている光景をご覧になったことがある方は多いのではないでしょうか。

 

住宅ローンなどを利用して建築資金を金融機関から借り入れする場合、土地と建物の両方を担保にする必要があります。通常、親子間で土地の賃貸借契約を締結することはないため、使用貸借という不安定な権利関係となってしまうことから、金融機関は建物だけではなく土地も担保とするよう求めるのです。この場合、土地を担保提供したご両親が物上保証人となります。

 

物上保証人は身内であることが多い

2つの事例をご紹介しましたが、物上保証人は借主の親子または親族の方であることがほとんどです。上記の具体例のケースであれば、皆さんにとっても身近に感じられるのではないでしょうか。

 

反対に、全くの第三者が物上保証人となるケースは皆無と言っても過言ではありません。そもそも借主のために全くの第三者が担保を提供すること自体が不自然であり、何らかのメリットを享受するとしても、リスクを考えると普通のことではないからです。全くの第三者から物上保証人になってほしい、担保を提供してほしいという依頼を受けた場合には、注意するようにしてください。

  不動産担保ローンで保証人は必要?  

不動産担保ローンを利用して資金調達を行う場合、保証人の要否については金融機関のスタンスが現れやすい部分と言えるでしょう。ここでは「連帯保証人」と「物上保証人」についてご説明します。

 

「連帯保証人」が必要とされるのは、借主の返済能力が不安定な場合や年齢が高い場合、金融機関からみて保全上必要な特殊事情がある場合であることが一般的です。
返済能力が不安定な場合には、連帯保証人の要否ではなく、そもそも取り組むか否かを金融機関ごとに個別に判断されます。高年齢者の場合には、不動産担保ローン以外でも住宅ローンや投資用ローンの中に親子ローンという形態の商品もあり、借主は親、その子供は連帯保証人であることが一般的です。また、法人が借主の場合には一昔前までは代表者が連帯保証人となることが通常でしたが、2013年に金融庁が「経営者保証に関するガイドライン」を公表して以降、代表者を連帯保証人とすることが少なくなっています。
一方、「物上保証人」が必要とされるのは、借主以外の方が担保を提供する場合に限られます。

 

したがって、借主がご自身で所有している不動産を担保として資金調達を行う場合、年齢などの特殊事情を除いたほとんどのケースで連帯保証人や物上保証人は必要ありません。
借主以外の方に担保となる不動産を提供してもらう場合には、必然的に物上保証人として契約に参加することになるため、物上保証人は必要と言えるでしょう。

 

金融機関から保証人を要請された場合には、保証人の種類について問い合わせてみてはいかがでしょうか。保証人となる方は、どの範囲で保証することになるのかを事前に理解しておきたいと考えていらっしゃると思います。前述のとおり、責任の範囲が異なるため、保証人となっていただく方に説明するためにも確認しておくべきです。

  不動産担保ローンならアサックス  

アサックスでは、担当者がお客様のご要望をお伺いした上で、お借入の形態をご提案しております。「自分名義の不動産を担保提供するので、保証人はなしで取り組んでもらえないか」「担保不動産の所有者である両親に連帯保証人まではお願いしづらいので、物上保証人での取り組みを検討してくれないか」などのご要望を真摯に受け止め、できる限りご希望に沿う形でのご融資を検討させていただいております。

 

私達は、連帯保証人はもちろん物上保証人であっても、それぞれにリスクは存在すると考えております。保証人をお願いする場合には、丁寧にお客様にご説明させていただき、ご理解いただくことが非常に重要だと認識しており、ご理解いただけないままご契約することはございません。

 

特に、事業者の方の場合には、前述のとおり家業を承継していらっしゃる方も多くいらっしゃいます。先代であるご両親が物上保証人として契約に参加されることもあり、ご両親が高年齢者であることは少なくありません。ケースバイケースではありますが、私達が一度のご説明だけでは不十分だと感じた場合には、複数回のご面談をさせていただき、丁寧にご説明することを心がけております。

 

また、銀行などの金融機関では年齢だけでお断りすることもあるようですが、アサックスでは年齢制限を設けておりません。意思能力が明瞭で契約行為に問題のない方であれば、どなたでも契約に参加することができます。是非ご検討くださいませ。

  まとめ  

今回は、物上保証人について連帯保証人との比較を交えながらご説明いたしました。
保証人というだけで、抵抗感を持つ方もいらっしゃるかと思います。リスクはあるものの、保証人の種類によって低減することができることはご理解いただけたのではないでしょうか。
融資を受ける金融機関から保証人を依頼された時には、「依頼されているのが物上保証人なのか連帯保証人なのか」や「そもそも保証人とはどういった立ち位置なのか」など、後々のトラブルを回避するためにもよく理解した上で検討することが必要となります。不動産担保ローンを利用する際には、借入形態についてはしっかりと確認するようにしてください。説明の丁寧さの度合いによって、借り入れをする金融機関を選んでよいかもしれません。

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