容積率オーバーの問題とは?建ぺい率との違いやメリット・デメリットを解説

容積率オーバーの問題とは?建ぺい率との違いやメリット・デメリットを解説

 

容積率(ようせきりつ)とは、建物を建てる際の敷地面積に対する延べ床面積の割合を示す数値です。都市計画や建築基準法で定められており、土地の利用効率や周囲の環境との調和を図るために使われます。用途地域ごとに上限が定められていて、市街地では高め、郊外では低めに設定されることが多いです。これは過密な都市開発を防止したり、日照・通風・景観の確保などを行うためです。容積率の計算の仕方、容積率オーバーの場合のデメリットなどを踏まえ、くわしく説明していきます。

 

 

 容積率オーバーとは

容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す数字です。地域ごとに指定容積率が定められている他、前面道路の幅員による制限等で最終的な上限容積率が決まります。

その容積率を超えてしまっている状態を『容積率オーバー』と言います。

容積率の具体的な計算方法は次条で詳しく説明いたします。

 

容積率の計算方法と上限

<容積率の計算方法>

基本的な計算式は次の通りです

容積率(%)= 延べ床面積÷敷地面積×100 

延べ床面積:建物すべての階の床面積の合計(例:1階100㎡+2階100㎡=200㎡)

敷地面積:建物を建てる土地の広さ

 

■計算例:敷地面積150㎡ 延べ床面積300㎡

容積率:300÷150×100=200%

 

<容積率の上限>

容積率には法的な上限があり、次の要素で決まります。

 

① 用途地域による制限(基本上限)

建築敷地となっている土地が、都市計画上どの用途地域に属しているかで、指定容積率(容積率の最高限度)の上限が決まります。

用途地域 一般的な指定容積率
低層住居専用地域 50~100%
住居地域 200~300%
商業地域 400~1,300%
工業地域 200~400%

※具体的な数値は、不動産を管轄する市区町村にて確認できます。

 

② 前面道路幅による制限(道路制限)

前面道路が狭い場合、建物を高くしすぎないように容積率の上限が制限されます。

計算式(住宅系用途地域の場合):前面道路の幅員(m)×0.4(または0.6)×100 

住居系用途地域(低層・中高層)→0.4

商業・工業系地域など→0.6

 

例:前面道路が4mの住宅地の場合⇒4m×0.4×100=160%

<容積率の最終的な上限>

用途地域で定められた指定容積率(上記①)と前面道路による上限(上記②)のうち、小さい方が容積率の最終的な上限となります。

 

例:用途地域が第二種住居地域で指定容積率が200%、前面道路の幅員が4mの場合

⇒指定容積率200%>道路制限による容積率160%のため、最終的な上限は160%

 

既存不適格と違反建築物の違い

「既存不適格建築物」と「違法建築物」は、どちらも現行の建築基準法に適合していない建物ですが、法律的な扱いや原因が大きく異なります。

 

1. 既存不適格建築物(きぞんふてきかく)

建築当時は合法だったが、その後の法改正によって現行法に合わなくなった建物。

例:建築当時は指定容積率が200%のため180%の建物を建築した。その後指定容積率が150%に変更されたため、現行法のもとでは容積オーバーとなっている。

→合法に建てたのに、ルール変更で「今の基準に合っていない」だけであり法的には違法ではない。

 

2. 違法建築物(いほうけんちく)

建築当初から建築基準法などに違反して建てられた建物。例えば、指定容積率を超えて建築または建築確認を取らずに増築した場合などがそれに該当します。

法的には、最初から違法であり行政指導や是正命令の対象になる可能性があります。

 

  既存不適格建築物 違法建築物
建築当初の法適合 適合していた 適合していない
現在の法適合 適合していない 適合していない
法的扱い 合法 違法
増改築 一部制限有 原則不可・是正対象
売買・融資 可能(条件次第) 難しい(リスク大)


 

 容積率をオーバーしてはいけない理由

容積率をオーバーしてはいけない理由は、都市計画や住環境を守るための法律(建築基準法)による制限だからです。以下に具体的な理由を説明します。

 

1. 良好な住環境・街並みを維持するため

容積率が高すぎると建物が密集しすぎてしまい日照や風通しが悪化する他、圧迫感のある街並みになりやすい。

2. インフラ(道路・水道・下水・電気など)の容量に合わせるため

地域ごとに受け入れ可能な人口・建物規模が計算されており、容積率もそれに合わせて設定されているため交通渋滞、上下水道の負担増加、災害時の避難困難などにつながる。

3. 防災のため

建物が密集しすぎると火災時の延焼リスクが高まる他、緊急車両の通行にも支障が出る。

4. 不公平を防ぐため

一部の建築主だけが容積率を無視すると、他の建築主との公平性が損なわれる。

違反が横行すると、地域全体の住環境が悪化する

 

法的な罰則や行政指導のリスク

<法的な罰則(建築基準法に基づく)>

1. 是正命令・除却命令(建築基準法第9条)

違反が見つかると、まず是正命令(改善命令)が出されます。是正しない場合、除却(撤去)命令が出ることもあります。

2. 使用停止命令

違法建築物の使用を禁止されることがあります(営業中止、住めなくなる等)。

3. 罰金・懲役刑

違反の内容によって、次のような刑罰があります

懲役1年以下

罰金100万円以下

※法人の場合は責任者個人にも罰則が及ぶことがあります。

 

<行政指導のリスク> 

1. 建築確認の不許可

既存の違反があると、新たな建築・増改築の申請が通らない。

2. 住宅ローンが通りにくい

金融機関は違法建築物件に対して融資を拒否する可能性が高い。ローン審査が厳しいため購入できる人が限られ売却時の価格に大きな影響が出ることがある。

3. 重大事故・災害時の責任

火災・地震などの災害時に建物が倒壊・延焼した場合、所有者に民事責任・刑事責任が問われることがある。

 

 容積率オーバー物件のメリット

容積率オーバー(容積率超過)の物件には、違法建築や違反建築というリスクがある一方で、買主・所有者の立場から見れば、次のようなメリットがあると感じられる場合もあります。

 

1. 購入価格が相場より安い

2. 実際の居住面積が広い

3. 投資物件として利回りが高い

 

購入価格が相場より安い

容積オーバー物件が相場価格より安い理由は、シンプルに言えば「法的リスク・制限があるため資産価値が低く評価されるから」です。

一見お得に見える物件でも、将来の価値が下がる可能性が高いことから、価格が割安に設定されるのが一般的です。

 

<容積オーバー物件が安くなる主な理由>

 

1. 違法建築・既存不適格であるため、再建築で同じ建物が建てられない

容積オーバーは現行の法律に合っていないため、建て替え時には同じ広さの建物は建てられません。

例:今180㎡の家でも、建て替え時は150㎡までしか建てられない。

 

2. 金融機関の融資が下りにくいまたは通らない

融資が受けにくいため、現金買いの買主しか対象にならず、買い手が限定されます。買い手が少なければ、市場原理に従って価格が下がります。

 

3. 行政指導・是正命令のリスク

違反部分に対して、使用停止・除却命令などのリスクがあります。

将来的なコストや手間を見越して買主がリスクを避ける為、売主は価格を下げざるを得ない。

 

実際の居住面積が広い

容積率オーバーの物件は、建築基準法の規定を超えて建てられているため、居住面積(延べ床面積)が広いという特徴があります。
これは購入者や利用者にとって、「実質的に広く使える」=見た目以上にお得に感じるポイントでもあります。

条件 法廷通り 容積オーバー物件
敷地面積 100㎡ 100㎡
容積率 150% 150%(制限)
延べ床面積 150㎡(合法) 180㎡(違反)
居住面積 標準的 広い(+30㎡分)

※容積率オーバーの物件は、同じ土地でも広い間取り・多い部屋数・余裕のある動線が得られる可能性が高いです。

 

投資物件として利回りが高い

容積オーバー物件は投資物件として利回りが高くなる傾向があります。
ただし、それは「リスクの裏返しとして高利回りになっている」側面があるため、慎重に見極める必要があります。

 

<なぜ容積オーバー物件は投資利回りが高いのか?>

1. 延床面積が広く、賃貸収入を増やせる

容積率を超えて建てられているため、本来の規制以上に部屋数・面積が多い。

そのため家賃設定が高くなり収益が増える。

2. 物件価格が相場より割安

容積オーバー物件はローン利用が難しく買い手が限定されるため、価格を下げて売られるケースが多い。そのため物件価格が安く利回りが高くなる。

 

 容積率オーバー物件のデメリット

容積率オーバー物件とは、建築基準法で定められた容積率を超えて建てられている建物のことです。これは法律違反である可能性があるため、以下のようなさまざまなデメリットがあります。

 

1.住宅ローンが組みにくい

銀行などの金融機関は、容積オーバー物件に対して融資を避ける傾向があります。

担保価値が低く見られるため、ローンが組めなかったり、借入額が制限されたりします。

 

2. 建て替え・リフォーム時に制約がある

容積率がオーバーしているということは、再建築時に現状より小さい建物にしかできない可能性が高いです。そのため、資産価値が下がりやすく、売却しにくいです。

 

住宅ローンが組みにくい

1. 担保価値が低いとみなされる

銀行は物件を「担保」として評価します。

容積率オーバーは建築基準法違反の可能性が高く、再建築不可・現状復旧不可となることが多いため、将来的な価値が低いとみなされ担保評価が下がり、融資金額が減額されることが多い傾向にあります。

 

2. 違法建築物には融資しない方針の金融機関が多い

多くの銀行・信用金庫・フラット35などでは、「違法建築物(容積オーバー含む)」は原則融資対象外です。

とくにフラット35は「建築基準法に適合していること」が前提なので、適合証明が取れない容積オーバー物件はNGです。

 

建て替え・リフォーム時の制約

① 再建築時に同じ広さの建物が建てられない

容積率オーバー物件は、現行と同じ広さの建物は再建築できません。よって建て替えると床面積が小さくなるため家の使い勝手が悪くなる、または賃貸する場合は賃料が下がることがあります。よって、再建築後は資産価値が下がる可能性があります。

 

② 違法建築または既存不適格となり、法的リスクを抱える

多くの容積オーバー物件は、違法建築(建築時から法律違反)あるいは既存不適格(建築当時は合法 → 現行法では違反)に該当します。現在は黙認されていても、将来的に是正指導や使用制限がかかる可能性があります。

 

③ 増改築・リフォームが制限される

建築確認が必要な増改築では、既に容積オーバーしていると許可が下りない為、思うようなリフォームができない場合があります。

 

 容積率と建ぺい率の違いとは?

「容積率」とよくセットで扱われるのが「建ぺい率」です。

容積率が敷地面積に対する建物全体の延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合を示しているのに対し、建ぺい率は敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た時の面積)の割合を示しています。

建ぺい率は、容積率と同様に都市計画によってその上限が定められています。

商業地域などは都市機能を最大限生かすために建ぺい率が高めに設定され、住宅地域は敷地内の日照や風通し、緑化などを考慮して建ぺい率が低めに設定される傾向があります。

 

建ぺい率の基本的な計算式は次の通りです。

建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100

 

容積率と合わせて考えてみます。

例えば敷地面積200㎡に対し、1階が150㎡、2階が100㎡の2階建て住宅を建築する場合、

容積率 :250÷200×100=125%

建ぺい率:150÷200×100=75%

この建物は建ぺい率75%、容積率125%相当の建物という計算になります。

 

建ぺい率・容積率については、当社サイト内の用語集の中でも簡単に解説をしておりますので、是非ご参照ください。

【建ぺい率】

【容積率 】

 

 容積率を守りながら広くするコツ

容積率を守りながら、建物を「広く・快適に」するには、延べ床面積を増やす以外の工夫が重要です。以下に、設計や建築の観点から実用的なコツをまとめます。

 

1. 地下室を有効活用する

一定の条件(地盤面からの高さが1m以下など)を満たす地下室は、容積率に不算入とされる場合があります。地下室を設けることで利用できる延べ床面積を増やすことができます。

 

2. ロフトを設置する

建築基準法上、天井高1.4m以下・直下階の床面積の1/2以内のロフトは床面積に算入されません。ロフトを設置することで利用できる延べ床面積を増やすことができます。

 

 

地下室を有効活用する

建築基準法に地下緩和という制度があり、地下室を設置する場合に特定の条件下で床面積を容積率の算定に含めなくてよいことになっています。

地下室は、住宅全体の延床面積の3分の1を上限として容積は計算されません。例えば敷地面積100平方メートルで容積率100%の家の場合、50平方メートルの地下室を作ることで最大150平方メートルの延床面積の家を建てることができます。

地下室を作らなければ延床面積100平方メートルまでしか建築できませんが、地下室を作ることで50平方メートルも広い住宅を建築することができるのです。ただし地下緩和を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

 

<条件>

①  地階であること:床が平均地盤面より下にある階が対象です。

②    地盤から出ている地階の天井高が1メートル以下であること

③    住宅として使われ、地下室の面積が延べ床面積の3分の1以下であること

 

ロフトを設置する

ロフトは、建築基準法上「小屋裏物置等」として扱われます。一定の条件を満たせば床面積に算入されません。

床面積に入らないことで利用できる床面積が増える他、固定資産税が安くなるといったメリットがあります。但し、床面積に含まれないようにするには次の条件があります。

 

<条件>

①    天井の高さを1.4m以下にする

これ以上高い天井高にすると「階」としてカウントされてしまいます。天井高1.4mだと大人は腰をかがめて入る必要があり不便ですが、収納等の用途で使われることが多いです。

 

②    床面積を直下階の床面積の1/2未満にする

あくまでも「居室ではなく物置」という位置付けにするため、こういった規定が設けられています。以前は直下階の床面積の1/8以下というルールでしたが、2000年の建築基準法改正により要件が緩和されています。

 

③    居住仕様にしない

ロフトには「居室として利用可能となる要素を設けない」といった決まりがあります。住宅の小屋裏部分等の余剰空間を利用するものであり、居室的な利用は認められていません。ロフトへは固定式の階段ではなく、取り外し可能なはしごで出入りする必要があります。

 

 よくある質問

容積率オーバーの中古物件は買っても大丈夫ですか?

絶対に買ってはいけないというものではありませんが、リスクや購入後の建物活用に対し制約がある点は事前に把握するようにしましょう。

 

1.購入、売却時の制約

建築基準法に定められた制限を超えている物件であり、違反建築物もしくは既存不適格という扱いになります。通常銀行ローンは使いにくく、現金か一部ノンバンクの融資などを利用して購入することになります。売却時も同様で、気に入ってくれた方がいても購入に際してローンが付かない可能性が高いため、価格を下げざるを得ないかもしれません。

 

2.再建築の際の制約

再建築の際は、現在建っている建物よりも規模の小さいしか建てられませんので、家の使い勝手が悪くなる可能性があります。

 

3.安全性の問題

建築基準法は、防災面や地域インフラ等も考慮した上で、その地域の建造物の構造や規模を規定しています。地域のキャパシティを超えるような建物は、火災等の災害鎮静化や避難について支障を及ぼす可能性があります。

 

 まとめ

容積オーバー物件のメリット・デメリットについて説明してきました。一見割安な物件に見えても建替えの際には同規模の建物建築ができないなどデメリットもあるため、購入を検討する時には将来的な資産価値も十分考慮した上で判断することが必要です。しかしその一方で、立地の良さからその物件を購入し将来的には建替えを計画する人もいることでしょう。ほとんどの金融機関は現行建物が違法であるとローンが組みにくい傾向ですが、アサックスではさまざまなニーズに対応するため現行建物が違法建築となっていても融資は柔軟に検討させていただきます。是非一度、相談してみて下さい。

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