リバースモーゲージのデメリットは?「やばい」と言われる理由と罠を解説
リバースモーゲージは自宅に住み続けながら老後資金にゆとりを持たせることが可能な一方で、「やばい」「罠」といったネガティブな意見が聞かれることもあります。高齢者がターゲットとなる商品の設計上、他の融資商品と比べて「長生きリスク」や「金利上昇リスク」等の影響を大きく受けやすいという面があるため、そういった意見が聞かれるのかもしれません。本コラムでは、リバースモーゲージのメリットに加え、「やばい」と言われる理由となるデメリットや注意すべきポイントについて解説していきます。 |
リバースモーゲージとは何か
リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関から融資を受ける金融商品で、主に高齢者の生活資金確保を目的としています。
一般的なローンが「借り入れた元利金を決められた期間の中で分割して返済していく」のに対し、リバースモーゲージは「原則、契約者の死亡時に元金償還が行われる」という点が大きく異なります。
融資金の受け取り方も、年金のように毎年(毎月)一定額を受け取る方法と、融資時に融資金全額を一括して受け取る方法を選ぶことができます。
融資限度額は不動産の担保評価額や掛目、契約者の年齢、そこから想定される寿命などをもとに設定されますが、一般的な住宅ローンや不動産担保ローンと違って元金償還が無いため、将来的な不動産価格の下落なども考慮して、掛目はやや厳しめに設定されることが多くなります。
(一般的なローン:評価額の70~80% リバースモーゲージ:評価額の50~60%が目安)
契約期間中は利息や必要経費の支払いを除き、大きな返済は発生せず、契約者が亡くなった後に自宅を売却して元金を一括返済します。不足しがちな老後資金を確保しながら、住み慣れた家で最後まで生活を続けることが可能となります。
※基本的にリバースモーゲージ商品は契約者の死亡までの終身契約が多いですが、一部の商品は一般のローン商品のように期間が定められており、存命中であっても期間満了時に一括返済を行うという商品もあります。
※商品によって「死亡までの間は利息だけを支払い、死亡時に元金を返済する方法」、「利息を含め期中の支払は一切なく、死亡時に期中利息と元金を一括返済する方法」に分かれます。
リバースモーゲージが「やばい」といわれる理由
リバースモーゲージは生活資金が心許ない高齢者にとっては便利なサービスと言えますが、リバースモーゲージを調べてみると「やばい」、「罠だ」などといった言葉を目にすることがあります。
便利なサービスである一方、「やばい」「罠」と呼ばれる所以は、いくつかのリスクやハードルがあるためです。
代表的なものとしては、下記4点が挙げられます。
・金利上昇で返済負担が増えるリスク
・不動産価格下落で追加返済が発生するリスク
・長生きで借入限度額を迎えるリスク
・相続人全員の同意が必要
以下、詳しく説明していきます。
金利上昇で返済負担が増えるリスク
リバースモーゲージは多くの金融機関で、「変動金利」が採用されており、市場の金利動向によって毎月の利息の支払い額が変わる仕組みとなります。金利が低い時期には負担が少なく利用しやすい一方、金利が上昇すると支払う利息が増加し、生活費を圧迫する可能性が出てきます。
仮にリバースモーゲージで1,500万円の借り入れがあった場合、金利が1%上昇すると、年間15万円、月に均すと12,500円の返済額増加となります。
月々の返済は利息だけとは言え、リバースモーゲージ商品のメインターゲットは収入面に不安がある高齢者です。年金は受給しているものの、年金だけではゆとりを持った生活が送れず、リバースモーゲージで生活費の補填をしているようなケースが多く見受けられます。
生活にゆとりがない高齢者の方とって、月々12,500円の負担増は大きな痛手と言えるでしょう。
また、期中の支払が無く、契約者の死亡時に元金と利息を全て清算する契約だった場合、金融機関は「元金+期中発生する利息」の合計額を、担保不動産の価値の範囲内で賄えるよう計算しています。もし適用金利が上昇した場合には最終的に支払う利息の割合が増え、将来的に融資を受ける予定だった元金部分が減額される可能性もあります。
不動産価格下落で追加返済が発生するリスク
リバースモーゲージは、不動産の評価額及び担保掛目によって融資限度額が決まります。そのため、地価が下落すると担保評価が下がり、連動して限度額も減少します。
金融機関は原則、定期的な担保価値の見直しに加えて追加借入申請時・金利改定時・年齢帯の区切り到達時・物件の劣化や災害発生時などに不動産の再評価を行います。
再評価の結果、借入残高が新しい限度額を上回る(また上回る見込み)と、①新規の受取停止、②元金の一部繰上返済の要請、③追加担保の提供、等を求められる場合があります。物件の維持管理・火災保険継続・固定資産税納付などを怠ると評価がさらに下がり、追加返済リスクが高まる点にも注意が必要です。
例を挙げます。
・不動産評価5,000万円 担保掛目の上限50% = 2,500万円が限度額
↓
・既に2,200万円をリバースモーゲージで借り入れ、余剰枠が300万となった状態で、金融機関の再調査
↓
・再調査の結果、不動産評価が4,000万円に下落 = 2,000万円が上限
↓
・上限を越えてしまっている200万円については、金融機関に一括返済する、もしくは何か別の不動産を担保として提供する必要が出る
当初の予定では毎年年金のような形で資金を受け取れる予定だったにも関わらず、途中から受け取れなくなり、且つ百万円単位の元金の償還を求められたとすると、契約者にとっては人生プランが大きく変わる事態となります。
長生きで借入限度額に到達するリスク
他のローンにはなく、リバースモーゲージ特有のリスクが「長生きリスク」と呼ばれる問題です。
リバースモーゲージは契約時に「想定寿命」を基準に限度額に至るまでの融資のシミュレーションを行います。
例えば、融資限度額1,500万と設定し、70歳~毎年100万円ずつ受け取るという想定で契約を行った場合、84歳までは毎年100万円の融資を受けることができますが、その時点で限度額の1,500万に到達してしまっているため、それ以降は融資を受けることができなくなります。それどころか、上限金額1,500万円分の利息を毎月出費するだけとなりますので、生活の圧迫は必至と言えるでしょう。
また、契約期間を予め設定するタイプの契約だった場合には、84歳、残高1500万の時点で一括返済を求められることとなります。当然難しいケースが多く、存命中にもかかわらず自宅を売却せざるを得ないという可能性が出てきます。契約更新が可能なケースもありますが、その際には不動産評価の見直しを含む審査が行われ、条件が厳しくなるのが一般的です。
長寿は本来喜ばしいことですが、リバースモーゲージ利用者にとっては「資金が先に尽きる」というリスクにつながるため、どのように資金を受け取るかを含め、契約前に十分な理解と準備が求められます。
相続人全員の同意が必要
リバースモーゲージは、原則契約者死亡後に自宅を売却して返済する仕組みのため、相続人全員の同意を求める金融機関が多くあります。これは、相続時も不動産が遺産として残らず、処分されて借入金の返済に充てられるためです。
事前に同意を得ていないと、契約終了時に「家を残したかった」「売却反対」といった意見の対立が起こり、家族間のトラブルにつながる恐れがあります。また、法定相続人にとっては、実家を相続できずに売却代金の残余金が分配される形になるため、相続財産の内容や分配方法に直接影響を与えます。そのため契約前に家族と十分に話し合い、相続人の理解を得ることが重要です。
リバースモーゲージ以外の資金調達方法
高齢者が老後資金や生活費を確保する方法としては、リバースモーゲージ以外にもいくつかの選択肢があります。たとえば、自宅を売却してそのまま賃貸として住み続ける「リースバック」や、住宅ローンをより低金利のものに借り換えて負担を軽減する方法、自宅を売却してより安価な住まいに住み替えるといった手段があります。
リースバックで現金化する
リースバックは、自宅を売却して資金を得た後も、その家に賃貸として住み続けられる仕組みです。現金化が早く、資金使途に制限がない点が特徴です。
リバースモーゲージと比べたメリットは、年齢や担保物件の制限が少ないこと、まとまった資金を一括で受け取れること、将来の相続や借入金返済の心配が不要なことが挙げられます。また、所有権が移るため固定資産税の支払い義務もなくなります。
一方デメリットとしては、市場価格よりも安価な売却(市場価格の60~80%が目安)となること、家賃の支払いが発生するため長期的には負担が大きくなる可能性があることです。また、契約内容によっては長く住み続けられないケースや、退去を求められるリスクもあります。
住宅ローンの借り換えを検討する
住宅ローンの返済が厳しいため資金確保ができないという場合には、借り換えによって返済負担を軽減する方法もあります。
「リ・バース60」は、住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して提供する高齢者向けの住宅ローン(フラット35の派生商品)です。特に60歳以上の方が対象で、住み替えやリフォーム、住宅ローンの借り換えなどを目的に利用されます。
リ・バース60はリバースモーゲージと住宅ローンを組み合わせて出来た商品で、最大の特徴は契約期間中は利払いのみであるという点です。
住宅ローンは原則的にはローン契約となりますので、返済が進んでも毎月の負担額はほぼ一定となります。現役を退いた方からすると、返済が重く感じられるケースも多いかと思います。最終的に売却して返済という選択肢が取れるならば、既存住宅ローンをリ・バース60に切り替えて、毎月の負担を軽減して手元資金を確保するという方法を取ることも可能です。
自宅を売却して住み替える
自宅を売却して安価な不動産や賃貸住宅に住み替える方法も、老後資金確保の有効な選択肢の一つです。
メリットはまず、自宅売却によりまとまった資金を一括で得られる点です。通常の市場価格で売却することができるため、リースバックと比較して手元により多くの資金を残すことが可能です。また、維持費や固定資産税の負担から解放されるほか、手元の売却益でバリアフリー仕様や利便性の高い住宅に住み替えることも可能になります。
一方でデメリットとしては、住み慣れた自宅や地域を離れる心理的負担が挙げられます。さらに、不動産市況によっては希望価格での売却が難しかったり、すぐに売却できずに資金化が長引く可能性があります。加えて、新居の購入費用や引っ越し費用が掛かるため、売却益の一部が相殺される点にも注意が必要です。
よくある質問
リバースモーゲージは死亡時どうなるのか?
リバースモーゲージでは、契約者が死亡した時点で契約が終了となります。
その際の返済方法は、相続人の方が担保物件を相続し売却代金から返済する、もしくは相続人の方が自己資金で返済する、いずれかの方法となります。
もし売却しても借入金が完済できなかった場合には、原則相続人の方が債務を引き継ぐ形となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
リバースモーゲージは高齢者の老後資金確保のための手段として有効な方法ですが、記載した通り「金利上昇リスク」「不動産下落リスク」「長生きリスク」といった各種リスクを事前によく把握する必要があります。特に長生きリスクについては、リバースモーゲージ特有のリスクと言え、計画的な利用を心がけたとしてもコントロールできない部分でもあります。
リバースモーゲージは契約者の死亡を前提とした仕組みであり、利用にあたっては推定相続人全員の承諾が必要という金融機関が主です。まずは相続人の方と「自宅を遺産として残すか否か」をよく話し合っていただいてから検討を始めるようにしてください。