リースバックのトラブル事例11選 契約時のポイントや対策を解説

リースバックのトラブル事例11選 契約時のポイントや対策を解説

 

近年何かと話題になっているリースバック。検索エンジンの数字を見てみても、3~4年前と比べて2倍以上の検索量が見られるようになりました。それだけ世間の注目を集めているということでしょう。
ただ、利用する人や検討する人が増えれば増えるほど、懸念されるのがトラブルです。

リースバック取引は通常の不動産売買や融資での資金調達のいずれとも仕組みが異なる取引であり、リスクも多く隠れているため注意が必要です。
今回はリースバックのメリット、デメリットの他にリスクやトラブルになった事例、リースバック取引の注意点をご紹介いたします。
トラブルを避け安心してリースバックが出来るよう参考にしてみてください。

  リースバックとは何か  

リースバックとは自己が所有する不動産を売却して現金化し、なおかつ売却した不動産に賃料を支払い住み続けることができる形態の取引のことを指します。
通常は不動産を売却すると、それに伴い不動産を明け渡し転居する必要がありますが、リースバックという手法を使えば、不動産を売却して売却代金を得ながら賃料を支払って同じ場所に住み続けられるというメリットがあります。
また、住宅ローンや固定資産税などの支払いが無くなることで、売却金額とそれに伴う家賃によっては毎月の金銭的負担が軽減される可能性があります。
そのため、最近では資金調達の手法としてリースバック取引が注目を集めています。
詳しくは、「リースバックとは?その仕組みやメリット・デメリットについてご紹介」をご参照ください。

  リースバック取引のリスクについて  

まずはリースバック取引におけるリスクを、売主(居住者)側、買主側双方の側面から見て行きましょう。

 

売主側(居住者)のリスク

・賃貸中にオーナーが変わることがある
売却時に将来的な買戻しを約束していたとしても、買主が法人の場合には業績不振や倒産、個人の場合には死亡等のリスクがあります。オーナーが変われば賃貸経営の方針が変わる可能性があります。

 

・相場よりも売却金額が低くなる恐れがある
後述しますが、買主側は通常の不動産売買と違い様々なリスクを抱えた状態で対象の不動産を購入します。リスクが金額に転嫁され、普通に不動産を売却したときよりも低い金額になる可能性があります。

 

・相場よりも家賃が高くなる恐れがある
リースバックの賃料は、周辺家賃相場ではなく売買金額の利回りから計算されることが一般的です。そのため、売買金額が高いとそれに応じて家賃も高くなる傾向があります。

 

・ずっと住み続けられるとは限らない
リースバックは一般的に「普通借家契約」ではなく「定期借家契約」が多く用いられます。普通借家契約と違い定期借家契約は契約更新という概念がなく、原則的には期間満了を以て退去が求められます。双方合意の上で再契約を結ぶこともできますが、原則的には期日が来たら退去するものであるという認識でいた方が良いでしょう。

 

・修繕費用は居住者持ち
普通賃貸借契約の場合には、建物の付帯設備等の修繕費用は貸主側が負担する義務がありますが、リースバックの場合には借主側の負担となるケースが多いようです。

 

・買戻し金額は売却金額よりも高くなる可能性がある
売却金額は相場よりも低くなる恐れがあることには言及しましたが、買戻し金額は1.1~1.3倍程度になると言われています。リースバックが長期にわたる場合には、それまで支払った賃料に応じて減額される可能性もありますが、通常は購入にかかった経費やプロジェクトの利益がプラスされるため、売却金額よりも買戻し金額の方が高くなります。

 

買主側のリスク

・家賃が支払われない可能性がある
通常の賃貸借契約においては家賃保証会社をつけて賃貸契約を行うことが一般的ですが、リースバックの場合には必ず保証がつけられるわけではありません。リースバックを利用する背景にもよりますが、資金的に厳しい状態に陥ってしまい、最後の手段としてリースバックを使う場合には、収入面や信用面において保証会社の審査が通らずに、保証が受けられない可能性があります。

 

・家賃の変更が出来ない
通常の賃貸借契約の場合には、不動産市況(周辺賃料相場)に応じて家賃の上げ下げを行うことがありますが、リースバックの場合には売却した金額から算出された利回りで賃料設定を行うことが一般的です。家賃相場が上がっているからといって家賃を上げることは難しいでしょう。

 

・買戻しに応じる必要性
リースバック契約の締結時、将来的な買戻しに関する条項も付する場合には、不動産を自由に売却することができなくなります。また、不動産が値上がりしている局面だったとしても、当初から買い戻す際の金額を決めていた場合には金額を変更することはできません。

 

・建物の状況が把握しにくい
リースバックの場合には売主がそのまま居住する形となるため、購入前の建物の状態を正確に把握することが難しく、売主が退去することになった際に設備の劣化の判断がしにくい面があります。賃貸契約開始時に預かった敷金は、終了時にそのまま返すケースが多いようです。

 

それでは、これらのリスクを踏まえ具体的にリースバック取引で起こりうるトラブルについて見てみましょう

  リースバックでよく起こるトラブル事例  

1. 提示金額が低くても受け入れてしまった
⇒リースバックは買主にとっても相応のリスクを負った購入となる点、投資目的で買取を行う側面が強い点から、市場での売却よりも低い金額を提示されることも多くあります。当初の目的が達せられない金額だったとしても、知識量の差や立場の違いから買主側に言われるがまま契約をしてしまうケースもあると聞きます。リースバックの目的となる不動産が市場価格でどの程度の金額で取引をされているのか、その上で提示された金額が許容できるものなのかを判断し、納得がいかなければ複数の事業者を当たるという選択肢も必要です。

 

2. リースバックで売却する際に鑑定費用、測量費用、事務手数料などの高額の手数料が差し引かれてしまった
⇒リースバック取引は売主都合の条件付きの売買取引となるため、適正価格であることを証明するための鑑定評価費用や、測量等で間に入った業者が諸手続きを行うための事務手数料を別途請求されることがあります。
通常の売買ですと測量が必要な場合はその分差し引いた売買価格で契約することはありますが、それ以外は仲介手数料と登記費用しか掛かりません。
また、通常の売買は最も高い金額を提示してくれる購入希望者へ売却すれば良いものですが、リースバックは自身の賃貸条件や買戻しの条件が付いてくることから、通常の売買に比べて売主が主体的に買主を選ぶことが難しいケースが殆どです。そのため間に入った仲介業者や買主に高額な諸経費を請求されても断りづらいというケースが多いようです。
実際に測量や鑑定に動いてからでは遅い場合もあるので、一社話を聞いて鑑定や測量の費用がかかるとわかった時点で、複数の業者に打診。そもそも鑑定や測量が必要なのか、費用はどの程度かかりそうなのかを把握するようにしてください。

 

3. 修繕費用の負担で揉めてしまった
⇒ 先述の通り、通常の賃貸借契約の場合には、建物の通常使用にかかる損耗は貸主側の負担となりますが、リースバックの場合には借主が負担する範囲が広くなります。この線引きを巡って両者でトラブルになることもあります。当初の契約時にどの範囲までを貸主側が、どの範囲からを借主側が負担するのかを明確にしておくことで、避けられるようになります。

 

4. リースバックの購入者から賃料の引き上げ請求をされた
⇒リースバックは不動産の売買契約と賃貸契約を同時に行う契約ですが、賃料設定は売買金額に応じて決定されます。(売買金額の7~13%程度が相場と言われています。)
先述の通り、賃貸借契約は2年~3年の定期借家契約が多く用いられますが、契約を更新するという概念が無く、契約満了時に新たに再契約を行う形となります。再契約を行うか否かは貸主(買主)側の意思が強く反映され、再契約の条件として当初の賃料設定よりも高額な賃料を求めるケースもあると言われています。当初提示される条件が長期に渡って適用されるわけではないという認識を持っておくことが大切です。
最近ではリースバックを行う事業者も増えてきており、再契約の際に賃料変更を行わない旨の特約が付されていたり、期間の定めのない契約が可能な商品も出ています。いくつかの業者の条件を比較してみるのが良いでしょう。

 

5. 定期借家契約の更新を断られた
⇒普通借家契約の場合には、貸主側から賃貸借契約を解除したり、満期時の更新を拒んだりすることは容易ではありませんが、定期賃貸借契約の場合には更新の概念が無く、契約満了時に再契約を行うか否かは貸主に委ねられます。
日常生活の中では定期借家契約に触れる機会が少ないと思いますので、普通借家契約と同じイメージで契約をしてしまい、満期時に実態を知り泣く泣く退去をするというケースも散見されます。
また、知識量の差を把握した上で詳細な説明を省き、短期での退去および売却を考える業者もいるようですのでご注意ください。

 

6. 売却により貸主が変更となってしまった
⇒当初口頭では他社への売却はしないと言っていたものの、約束を反故にされ第三者に売却、貸主が新所有者に移るというケースもあります。
ただし、元々の売主(借主)がご自身の意思でご自宅を売却し、リースバックという選択を取られたのと同様に、買主側も自身の意思で第三者への売却を行うことはできます。買主側の事情もその時その時で変わりますし、資産の処分に制限をかけることはできません。
資金が困った時に親族が買い受けてくれるようなケースと違い、リースバックの買主はボランティアではなくビジネスで取り組んでいるという認識を持ってもらった方が良いでしょう。ただし、貸主の変更があっても当初の契約内容が承継される旨を契約書に記載しておくことは可能ですので、契約時によく条件を詰めておくようにしましょう。

 

7. 倒産や相続等で貸主が変更となってしまった
⇒6.のケースと一部重なりますが、買主が個人の場合には死亡等のリスク、法人の場合には倒産等のリスクは必ずついて回ります。通常の賃貸借契約と同様、賃貸契約自体は新所有者に引き継がれますが、新所有者がどういった方針で賃貸借を行っていくかは借主側でコントロールすることはできません。
契約満了までは現在の契約内容が適用されたとしても、満期時の再契約の可否や賃料設定等、新所有者に委ねられます。
リースバックの買主が個人の場合には難しい部分がありますが、法人の場合には倒産等の恐れの無い先かどうかを見定めておくことが良いでしょう。

 

8. 相続人に話をしていなかった
⇒売主(居住人)が契約後に死亡してしまったケースで、その相続人と買主側で揉めてしまうことも良く聞くトラブルの一つです。リースバックは居住実態が変わらない為、周囲の人に売却が悟られないというメリットはありますが、ともすれば家族であっても売却に気付けない可能性もあります。
行く行くは相続する予定だった自宅がリースバックによって第三者の手に渡ってしまっており、死亡後にその事実に気が付いたとしたら、買主とトラブルになることは目に見えているでしょう。
リースバックを行う場合には、少なくとも同居の家族や相続人予定者には話を通しておき、承諾を得ておくことが重要です。万が一相続があっても賃貸借契約自体は相続対象となるので、退去を求められることはありません。

 

9. 家賃の支払いが出来なくなってしまった
⇒高値での売却を求め過ぎたが故に、リースバックの賃料も高くなってしまい、最終的に賃料が支払えなくなってしまったというケースも耳にします。
家賃滞納は貸主から退去を言い渡される要因にもなります。もし当初の目論み通り進まずに契約途中で退去することになった場合、そもそもリースバックではなく通常の不動産売却をしておけばよかったという結末になることも考えられます。売却金額とその後の賃料設定をもとに、無理なく支払うことができるかどうか入念にシミュレーションを行うようにしてください。

 

10. 買戻しが出来なかった(買主が応じてくれない)
⇒将来的な買戻しを口頭のみで済ませており、契約書を取り交わしていなかった場合には、買戻し自体に応じてもらえない可能性や、当初約束していた金額とかけ離れた金額を請求される場合もあります。
こういったトラブルにならないよう、きちんと当初の売買契約書の特約に盛り込んでおく、別で再売買の予約に関する契約書を結んでおくという手続きは踏んでおきましょう。
前提として、買戻しの条件は「売却から〇年以内」、「賃貸中に家賃の○ヶ月以上の家賃滞納をしない」「買い戻しは〇〇さんだけに権利があり、親族を含めた第三者は対象とならない」など、いくつか条件が付されますので、自身の将来設計と照らし合わせて履行可能な条件を買主とすり合わせるようにしましょう。

 

11. 買戻しが出来なかった(資金手当てができない)
⇒同じく買戻しが出来なかったケースとして、買戻しの資金手当てができないというケースもあります。リースバックは一時的な手元資金を得る、住宅ローンの返済が厳しいため償還を行うなどのケースで用いられることが多いものですが、契約内容によってはリースバック前よりも資金繰りが厳しくなる可能性もあります。
また買戻しの際に住宅ローンが組めるか否かは別問題です。
住宅ローンの返済を滞納した状態でリースバックを行った場合、買戻しの際に住宅ローンを使おうと思っても、以前の滞納が響き審査が通らないというケースもあります。また、一般的な銀行ではリースバックの買戻しのような、特殊な事情がある売買に対して消極的になる傾向があります。
買戻しを考える場合には、何年後に誰の名義で買い戻すのか、その資金手当てはどのようにして行うのかを事前にきちんと計画を立てておくことがが非常に重要です。

 

以上が主なトラブル事例となります。 リースバックでの売買を選ぶ方は、資金繰りが厳しくなり急いでいる方や金融機関から借入を断られてしまった方が多いのが現実です。
このような状況下で落ち着いて検討する余裕がなく、時間が無い事から他社と条件を比較することもできず言われるがまま契約してしまっているケースが多いようです。
以下の章でリースバック取引において検討すべきポイントをお伝えしますので、落ち着いてしっかりと検討し納得がいく取引を実現してください。

  リースバックを行う上で押さえておきたいポイント  

1. 自宅の適正価格を把握する
大手不動産仲介会社に相談したり、インターネットサイトの一括査定システムを使い、リースバックではなく一般市場に出した際にどのくらいの価格で売れる見込みがあるのかを把握しましょう。その上で、リースバック業者から提示される金額がどの程度かを判断するようにしてください。リースバックにこだわらずに普通に売却をして住み替えた方がメリットがあるケースも多々あります。リースバック業者間で査定価格と条件を比べることも大事ですが、それと同時に市場価格で売却した場合の価格も参考にして総合的にどちらを選ぶか検討した方が良いでしょう。

 

2. リースバック以外に資金を調達する方法が無いか再度検討する
ほとんどの方が銀行やカード会社に融資を断られ、資金需要に迫られて急いでリースバックを決断しています。しかし、まだ別の方法が取れる可能性があることも認識しておきましょう。
アサックスが専業とする不動産担保ローンやリバースモーゲージなどが候補の一つとなります。早期の決断が必要な状況だと思いますが、不動産担保ローン専業の会社であれば、数日以内に最終的な結論を出せる会社も多々あります。
リースバックよりもコストが安くなるケースも多々ありますので、まずは相談してみるのが良いでしょう。

 

3. リースバックをする場合は売却する先の業者をしっかりと選ぶ
リースバックの買主は特に資格が必要ではありませんので、個人投資家や転売を目的としている不動産会社でも買主となることが出来ます。ただ、その場合は前項でお伝えしたトラブルが発生する可能性が高いと思われます。また、買主が倒産してしまったり、資金繰りに困って転売する可能性は常にあります。会社の規模や実績をしっかり把握したうえでどの業者と契約を結ぶか判断しましょう。

 

4. 契約書の内容をしっかり確認する
まずリスクの点でも記載した通り、賃貸借契約が普通賃貸借契約か定期借家契約かは大きなポイントです。本コラムでも何度か触れていますが、定期借家契約は更新という概念がありませんので、万が一再契約を拒否された場合は必ず立ち退かなければなりません。
リースバックの買主側からすると賃借人を退去させることが容易な定期借家契約の方がメリットがあるため選択されることが多いですが、普通賃貸借契約でリースバックに取り組んでくれる買主もいます。
将来的な買戻しを考えている場合には、買戻しについても契約書内で明文化されているかどうか、しっかりとチェックしましょう。

 

5. 買戻しを希望する際の条件を確認する
買戻しを計画している場合には、時期、人、金額が限定されているかどうかをよく確認するようにしてください。
時期についてはいつでも買戻しが可能な契約、〇年後までというリミットが設定される契約など、リースバック業者によって様々な基準があります。

 

また、買戻しをする権利のある人が限定されていると買戻しが出来なくなってしまうことがあります。
通常、買戻しをする際は買い受ける人が住宅ローンを組んで買い戻すケースが殆どですが、元々の所有者ではなく、その子供が成人して給与所得者となり住宅ローンを組んで買い戻すということも想定されるでしょう。元々の所有者だけしか認められないのか、買戻しの権利を第三者にも譲渡できるのか、自身のライフプランに合わせて選択肢を広げられるか否かもポイントです。

 

買戻し時の金額も明記されていることが望ましいと言えます。
買戻し価格が「市場の適正価格で買戻しに応じる」などとあいまいに記載されていると、後々のトラブルの原因となります。
しっかりと金額を明記してもらえる買主を探しましょう。

 

6. 親族(特に同居の家族)にはきちんと話を通しておく
リースバックを行う場合、周囲の方にはきちんと話を通しておくようにしましょう。
もし賃料不払いによる退去を求められた場合、同居の家族からすると前触れなく住まいを失うことになります。
万が一当事者が亡くなってしまった場合にはもっと衝撃が大きいでしょう。通常の住宅ローンの場合には債務者が亡くなると団信保険でローンを完済し、残された家族は借入の無い自宅を相続するという流れが一般的ですが、リースバックの場合には賃借権の相続が発生し、残された家族は所有者に賃料を払いながら生活していくことになります。住宅ローンとリースバックでは残された家族の生活が180度変わることとなります。
売買や賃貸は所有者の権利であるとはいえ、住居は生活の基礎となる非常に重要な資産です。先々のことも考えながら、少なくとも同居の家族にはきちんと話をして承諾を得ておきましょう。

 

以上がリースバック契約をする際の注意点となります。

  まとめ  

今回は改めてリースバックのリスクを整理し、よく聞かれるトラブルについて記載してきました。
今まであまり取り扱われることはなかったものが、ここ数年で拡大してきた背景があり、メリットやリスクが理解されないまま取引をされている方が多いようです。

通常の不動産売買やローンにも共通して言えることですが、商品・サービスを提供する側と受ける側では必ず情報量の差が生まれますが、リースバックに関してはまだまだ利用が一般的では無い分、よりその差が広いように感じています。
PCやスマートフォンで「リースバック」と検索すれば様々な記事やサービスが表示されると思いますが、リースバック業者が自社のサービスに誘導する目的で書いている記事も多数あります。そういったコラムだけでなく、本コラムのように提供する側以外の会社が書いているもの、不動産鑑定士の方などが書いているものも参考にしてみてください。

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