リースバックに審査はあるのか?契約時に注意する点から利用条件・審査基準まで解説

リースバックに審査はあるのか?契約時に注意する点から利用条件・審査基準まで解説

 

リースバックは、不動産を活用した資金調達手段の一つです。
金融機関から融資を受ける際に審査があるのと同様に、リースバックを利用する時はリースバック会社が審査をします。では、どのような内容の審査が行われているのでしょうか。
今回は、リースバックの審査を中心に、契約時に注意する点や確認すべきポイントについても解説していきます。

  リースバックとは  

リースバックとは、所有している不動産を売却するのと同時に、賃貸借契約を結んで不動産を利用し続ける商品です。

 

不動産を売却することでまとまった資金を得ることができ、売却後は賃料を支払えば不動産を継続して利用することができます。住み替える必要はありません。

 

金融機関から資金調達をしようとしても、審査が厳しいため融資を受けられないことも少なくありません。その場合の資金調達手段の一つとしてリースバックを利用する方がいます。具体例としては、高齢の方が老後資金を確保した場合や、住宅ローンの返済が厳しくなった場合などです。

 

金融機関からの融資とリースバックの大きな違いは、不動産の所有権を失うことです。

金融機関から不動産を担保にして融資を受ける場合には、不動産に抵当権等の担保設定をし、融資金を受け取り、その後は利息を支払います。

リースバックの場合には、不動産を売却して所有権を移転し、売買代金を受け取り、その後は賃料を支払います。

融資とリースバックを比較すると、担保設定の代わりに所有権を移転し、融資金の代わりに売買代金を受け取り、利息の代わりに賃料を支払う仕組みとなっていることがわかります。

 

リースバックの仕組みについては、リースバックとは?その仕組みやメリット・デメリットについてご紹介で詳しく解説していますので、ご覧ください。

リースバックを提供しているのは、主に不動産会社です。対象不動産を購入するか、購入した後にいくらの賃料で貸すかは不動産会社が決めます。不動産会社からすると、アパートなどの収益物件を購入するのと同じ感覚です。その購入するかどうかの判断が、リースバックの審査と呼ばれています。

  リースバックの審査とは?  

リースバックの審査は、不動産会社が購入するかどうかの判断に委ねられることになります。

 

金融機関の融資審査は、借主が返済できるかがポイントになりますが、リースバックの審査は、不動産会社が利益を出せるかがポイントになります。どういうことでしょうか?

 

金融機関は様々な人から預金を集め、そのお金を融資しています。金融機関は預金者に対して預金の払い出し義務があり、融資金が返済されないと義務を履行することが難しくなります。それを防ぐために厳しい審査基準が設けられ、返済能力があるかどうかを判断しています。

 

不動産会社の場合、融資を受けた資金か自己資金かの違いはありますが、基本的には自社の手元にある資金で不動産を購入します。不動産を購入する目的は、利益を生み出すことです。リースバックで不動産を購入しても、最終的に利益を出すことができなければ、購入する意味はありません。
したがって、毎月の賃料が支払われるか、支払いが滞った場合に不動産を第三者にいくらで売却できるか、という観点で審査をしています。賃料が支払われなかった場合でも利益を出せるように、取り扱う不動産の属性や購入価格を決定している、というわけです。

 

また、リースバックの審査では、融資審査で使われるローンの延滞情報が出てくる信用情報機関の審査はされません。ただし、賃貸借契約の保証人として登場する家賃保証会社の審査がありますので、収入に関する書類は求められます。

 

このように、融資審査が「人物」の審査をするのに対し、リースバックの審査は「不動産」の審査をしていることが特徴です。

  リースバックを利用するための条件とは?  

リースバックの審査ポイントは、「不動産」と「賃料の支払い能力」の2点です。リースバックを利用するためには、この2点をクリアしなければなりません。具体的にはどのような条件があるのかをご説明します。

 

不動産について
リースバック会社は、売主が買い戻すか第三者に売るかは別にして、最終的には不動産を売却します。
将来的に売却することが見込めない場合には、リースバックを利用することができません。また、不動産売買における買主は、ほとんどのケースで金融機関のローンを利用するため、ローンがつかない不動産は売却自体が難しくなります。
このような売却しづらい不動産を、流動性の低い不動産といいます。具体的に流動性の低い不動産とは、どのようなものがあるでしょうか。

 

・所有権が100%ではない

不動産の所有者が複数人いて、共有持分となっていることがあります。夫婦でお金を出し合って不動産を購入した場合や、相続発生時に法定相続で財産を分けた場合に多く見受けられます。
リースバック会社に売却する際に、共有者全員が持分を売却すれば問題ありませんが、一部の人が反対して売却しない場合には、その持分を取得することができません。第三者が持分を持っている不動産を欲しがる人は少なく、住宅ローンの審査も通らないため、流動性が低い不動産となります。

 

・不動産のある場所

様々なものと同様に、不動産にも人気の有無があります。
駅から近い、都心から近い、ショッピングモールが近いなどの利便性の高い場所は人気があります。反対に、自由に建物が建てられない市街化調整区域や山奥、離島にある不動産は人気がありません。
人気がない場所の不動産は、そもそも欲しがる人がいないため、売却が難しくなります。

 

・不動産の種類

戸建やマンションのような居住用不動産を欲しがる人は多くいますが、工場や特殊な施設などは特定の業種の人しか買いません。また、借地権付建物の場合には、売却時に地主(土地の所有者)の承諾が必要であり、譲渡承諾料というコストもかかります。借地権付建物が築古の場合には、住宅ローンの利用も厳しいため、現金で購入する人を探す必要があります。
このような種類の不動産は、流動性が著しく低いと言えるでしょう。

 

・建物に瑕疵がある

そもそも違反建築物だったり、増改築して建築基準法違反となった建物は、銀行のローンが利用できません。将来的に行政から是正命令が出されるリスクがあり、是正するための費用負担が発生する可能性があります。そのような建物を欲しがる人は稀であるため、買主を探すのは困難になります。

 

・事故物件
事故物件とは、火災や自殺、他殺などの事件が不動産の敷地内で起こった不動産のことです。事故物件を載せている「大島てる」というウェブサイトが有名で、誰でも簡単に検索することができます。事故物件は不動産業界では重要事項に該当するため、買主に対して告知する義務があります。
事故物件を欲しがる人は非常に少なく、通常の相場価格よりも著しく低い金額となることが予想されます。

 

賃料の支払い能力について
一般的にリースバック会社は、家賃保証会社の保証をつけて賃貸借契約を結びます。家賃保証会社とは、借主が賃料を支払えなくなった場合に、貸主に賃料を支払う会社です。

家賃保証会社はリスクを抑えるために、借主の支払い能力の審査を行います。銀行融資における返済能力の審査ほど厳しくはありませんが、安定収入がない場合には審査に通らないことがあります。

家賃保証会社の審査に落ちると、リースバック会社は購入しないか、購入するとしても相応に低い購入金額となります。

これを解決するための手段は、自ら保証人を見つけるしかありません。安定的に収入のある方や高収入の方であれば、リースバック会社によっては保証人として認めてくれることがありますので、検討してみると良いでしょう。

  リースバックの審査に必要なもの  

リースバック会社が審査をする際に必要なものは、不動産関係の書類と家賃保証会社の審査に必要な書類に分けられます。

 

不動産関係の書類とは、不動産を購入した時に交付される重要事項説明書、増改築をした場合にはその図面など、所有者だけが持っている書類です。重要事項説明書には法規制や接道に関する情報、対象不動産にかかる特別な情報などが記載されています。増改築図面は、建物が建築基準法に違反していないかを確認するために必要になります。
リースバック会社によっては、法務局や役所で取得できる書類も求められることがあります。具体的には、登記簿謄本、公図、地積測量図、建物図面、道路図面、上下水道管の配管図などです。リースバック会社の規模によって対応が異なるため、事前に確認するようにしましょう。

 

保証会社の審査には、収入のわかる書類が必要になります。給与所得者の場合には源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書、年金収入の場合には年金証書や年金通知書などが求められます。主に安定収入があるかが審査されるため、継続的に収入を得ている証明が必要になります。

 

その他の重要書類として、本人確認書類が必要です。写真付き本人確認書類として運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどが、写真付きのものがない場合には健康保険証や年金手帳、印鑑証明書、住民票などが求められます。

  リースバックの契約時に注意する点  

リースバックの契約をする時に、気をつけておく必要がある項目を3点ご紹介します。

 

ローン残高は売却価格を下回っているか
不動産の売却価格よりも住宅ローンなどのローン残高が上回っている状態をオーバーローンと言います。具体例としては、買主の希望購入価格が3,000万円、ローン残高が4,000万円ある状態です。

 

オーバーローンの状態ですと、売買代金を支払っても担保抹消ができないため、基本的にリースバックを利用することはできません。

 

オーバーローンの状態でリースバックを利用するためには、差額分の自己資金が必要になります。
前述の例の場合、差額1,000万円の自己資金を用意することとなります。自己資金があれば、売却価格と合算してローンを返済し担保抹消することができるため、リースバックを利用することができます。

 

また、まとまった資金を得るために不動産を売却するのであれば、リースバックではなく、一般的な不動産の売却活動をすれば解決できるかもしれません。なぜなら、リースバック会社は周辺相場よりも低く購入価格を提示するためです。通常の不動産売却であれば、周辺相場で購入してくれる人がいる可能性があります。売却を前提とするのであれば、検討する価値はあるでしょう。

 

賃料を支払う資力があるか
リースバックは、不動産の売却と同時に買主であるリースバック会社と賃貸借契約を結び、賃料を支払う仕組みです。一般的な不動産の売却ではなくリースバックを使う目的は、売却した不動産を継続して利用するためです。結果的に賃料が支払えず、退去を迫られて住み替えるのであれば、リースバックを使う意味がありません。

 

継続的な安定収入が見込めなかったり、収入よりも賃料が高額の場合には、将来的に賃料の支払いができなくなるリスクが高まります。したがって、リースバック会社から提示された賃料は、継続的に支払っていける金額なのかを冷静に考えなければなりません。

 

その際に、一般的な不動産の売却方法で売却し、普通の賃貸物件に住み替えた場合と比べると経済合理性の判断がしやすくなります。リースバックと大きく違うポイントは、売却価格と賃料の2点です。普通に売却すればリースバックよりも高く売れる可能性があり、場所にこだわらなければ賃料が低い賃貸物件が見つかるかもしれません。

 

売却した時にどちらの方が手元に資金が残るか、賃料はどの程度差があるのかを比較し、収入に見合った方法を選ぶべきです。金融機関から融資を受ける時と同じように、収入と支出のバランスを考慮した上で選ぶようにしてください。

 

必要書類を用意しておく

リースバックを利用することになった場合、一般的な不動産売買に必要な書類が全て必要になります。どのようなものがあるかを事前に知っておきましょう。

・権利書または登記識別情報通知
・本人確認書類
・印鑑証明書
・住民票
・実印
・固定資産税評価証明書
・確定測量図(筆界確認書や越境の覚書など)
・(マンションの場合)管理規約、理事会の議事録写し、管理費や修繕積立金のわかるもの

手元にあるものや、役所に取りに行く必要があるもの、マンションの場合には管理会社に請求しなければならないものがあります。一定の時間が必要なものもあるため、事前に準備しておくとスムーズにすすめることができるでしょう。

  リースバックを契約する前に確認すべきポイントは?  

リースバックは何度も利用するものではありません。初めての方が圧倒的に多く、何を確認すべきかがよくわからないといった不安な声も多く聞かれます。ここでは、契約をする前に確認すべきポイントを4つに絞ってご紹介します。

 

賃貸借契約について

賃貸借契約は大きく分けて2種類あります。普通賃貸借契約と定期賃貸借契約です。

一般的な賃貸物件を借りる際は主に普通賃貸借契約が使われますが、リースバックの場合には定期賃貸借契約が使われることがほとんどです。

 

普通賃貸借契約の場合には、期間満了時の更新の定めが契約書に記載されています。法的にも貸主は正当事由がない限り更新を拒絶できないため、更新が可能なことを前提とした契約となります。

 

一方、定期賃貸借契約は更新の概念自体がないため、更新することはできません。契約期間満了時には退去することを前提とした契約となります。契約期間満了の6ヶ月前までに、貸主より賃貸借が終了する旨の通知が送られ、終了と共に退去することとなります。
ただし、貸主と借主が新たな賃貸条件で合意できれば、不動産を継続して利用することができます。その場合は更新ではなく、改めて賃貸借契約書を締結する再契約という形になります。

 

売却後も長期間にわたって不動産を利用したい場合には、普通賃貸借契約か契約期間の長い定期賃貸借契約としてくれるリースバック会社を選ぶことが必要です。

 

買戻し条件について
買戻しとは、一度売却した不動産を将来的に自身で購入することです。

リースバック会社によりますが、買戻し条件をあらかじめ定めておくことがあります。不動産の売却時に買戻し条件を決めておけば、手放した不動産を将来的に取り戻せる安心感があることがメリットです。

買戻し条件を明確にするために、買戻し価格や買戻しができる期間などを明記した「再売買の予約契約書」を締結します。買戻し価格は、自身が売却した金額よりも10%~30%割高になることが一般的です。買戻しができる期間は、特定の期日を定めるか期限を定めないかに分かれ、期限を定めない方がいつでも買い戻せるため有利と言えます。

買戻し条件は、リースバック会社によって異なるため、様々な会社を比較してみることをお勧めします。

 

契約書について
リースバックは不動産の売買に関する書類に加え、その関連契約の書類が必要になります。
具体的には、「売買契約書」「重要事項説明書」「付帯設備表」などの売買関係の書類や「賃貸借契約書」「再売買の予約契約書」などが挙げられます。

各契約書の文字は小さく、専門用語が使われているため、読むことが億劫になる方もいらっしゃるでしょう。しかし、ご自身の所有する不動産を売却し、賃料を支払って利用し続けることになりますので、しっかりと内容を把握しておくのは重要なことです。

各契約書には、契約内容の説明を受けて理解した旨の署名をしなければなりません。自身の認識と異なる内容が記載されていたり、説明を受けていなかったとしても、トラブルになった際には不利になってしまいます。

契約内容を確認し、不明点があればリースバック会社に確認した上で契約をするようにしましょう。

 

リースバック後の収入と支出

リースバックでまとまった資金を得ることによって、目先の課題を解決することはできます。しかし、リースバックを利用することになった根本的な原因は解決していません。

リースバックは、金融機関から融資を受けられなかった方が利用することが多く、そのほとんどが収入と支出のバランスが崩れてしまっていることが原因と言われています。

リースバック会社に支払う賃料は、売却価格に対して6%~12%程度です。これは、金融機関から資金調達する場合の利息にあたるものであり、金利と比べるとかなり割高なものです。リースバックを利用したとしても、現状の支出を見直さなければ賃料負担に耐えられず、最終的には退去することになってしまいます。

 

リースバックを利用する前に、支出で削減できるものがないかをしっかりと確認し、賃料が支払える余剰資金を確保した上で契約するようにしましょう。

  まとめ  

今回は、リースバックの審査や契約に関して解説しました。
リースバックは、金融機関の融資とは審査基準が異なるため、比較的審査に通りやすいと言われています。しかし、利息に相当する賃料の負担は重く、支払いが継続できなければ退去して住み替えることになってしまいます。リースバックは利用しやすい商品ですが、金融機関から融資を受ける時と同じように、収入と支出を見直し、支払いができるかを確認することが大切です。

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