不動産担保ローンの審査基準とは?審査通過のポイントをご紹介

不動産担保ローンの審査基準とは?審査通過のポイントをご紹介

 

不動産担保ローンとは、その名のとおり、所有している又はこれから所有する不動産を担保にして融資を受ける資金調達手段のひとつです。銀行だけではなく、不動産担保ローン専門会社やカード・信販会社を含むノンバンクなどの金融機関が手掛けており、本人の「信用力」や担保となる「不動産」についての審査基準が各会社で異なります。
不動産担保ローンで資金調達をする場合、どのような準備が必要になるのか、審査のポイントをわかりやすく解説していきましょう。

  不動産担保ローンの審査を受けるための準備  

  STEP1  

不動産担保ローンの審査を受けるためには、金融機関へ問い合わせ、仮審査の申し込みをすることがスタートとなります。
金融機関へは、「窓口に行って相談する」「直接電話をする」「ホームページ内の申し込みフォームを利用する」などの方法で仮審査の申し込みを行います。
「電話」でのお問い合わせの場合は、お客様のお話やご要望を伺った上で、必要なことをヒヤリングする形となります。
「ホームページ内の申し込みフォーム」でのお問い合わせの場合、下記項目が必要になります。

 

<各金融機関共通>
「氏名」「電話番号」「メールアドレス」「希望金額」「不動産の所在地」

 

<金融機関によっては必要>
「資金使途」「不動産の種別」「不動産の面積」「不動産の利用状況」「不動産の築年数」「不動産の所有者」「不動産を担保にした借り入れ状況(住宅ローン含む)」「無担保ローンの借り入れ状況」「お客様属性」「年収」「家族状況」「会社情報」など
<各金融機関共通項目>は最低限必要になりますので、事前に準備しておきましょう。

 

  STEP2  

仮審査通過後、担当者と面談し、本申し込みを行います。来店型・訪問型・どちらでも可と対応は金融機関によって異なりますので、担当者に聞いてみましょう。金融機関によっては、郵送やインターネットのみしか受け付けていないこともあるのでご注意ください。
本申し込みに必要な書類は下記のとおりです。

 

<各金融機関共通>
「本人確認書類(運転免許証・パスポート等)」「認印」
「収入のわかるもの(確定申告書・源泉徴収票等)」「ローンの返済予定表」
「(法人の場合)決算書・事業計画書・事業内容がわかるもの」

 

<金融機関によっては必要>
「印鑑証明書」「実印」「納税証明書」「土地建物評価証明書」「不動産登記簿謄本」「公図」「地積測量図」「建物図面」「(法人の場合)商業登記簿謄本」
その他、不動産購入の場合には「売買契約書」や「重要事項説明書」、建物新築・増改築の場合には「工事請負契約書」、担保となる不動産が収益物件であれば「賃貸借契約書」、担保となる不動産がマンションであれば「間取図」や「管理費・修繕積立金の金額がわかるもの」が必要になります。

 

事前に全ての書類が必要になるか、面談しよく話を聞いた上で提出する方法でも良いかは、金融機関によって異なります。また、申し込み内容によっては上記以外の書類が必要になることもありますので、担当者に確認するようにしましょう。

  本人の「信用力」についての審査  

「信用力」の審査とは、金融機関では一般的に「与信審査」と言われています。借り入れに対する「信用力」であることから、審査内容は「返済能力の有無」を判断することとなります。金融機関ごとに、法人と個人では異なった基準を設けているため、ここでは法人・個人別にし、銀行とノンバンクの考え方を加えながら説明していきます。

 

法人の場合
事業内容・決算内容・今後の事業計画を基に審査を進めていきます。
どのような事業を行っているのかをヒヤリングし、その業界全体の展望やお客様の事業領域が拡大していく見込みがあるのかを調査します。決算書からは、売上規模・経常利益の金額や変動率、借り入れしている金融機関の返済状況などを確認していきます。事業計画書からは、今後の事業の展望や先々の資金計画などの盛り込まれている内容について、将来性や実現可能性を判断していくこととなります。
業界全体が縮小傾向であったり、直近の決算が赤字だと、お客様の大切なお金を預かり融資をしている銀行は、どうしても慎重にならざるをえません。反面、自社の資金を融資するノンバンクは、ある程度のリスクを取ることができるため、将来の展望や資金計画を記載した事業計画書を重視してくれる傾向があります。例えば、業界は縮小傾向であっても自社の強みやエッジを利かせている部分を説明したり、先行投資が必要なアプリ開発を行ったために赤字決算が続いていたとしても、完成後はどのような展望が描けているのかを説明したりすることによって、柔軟に対応してくれることがあります。
また、現在取引中の金融機関の返済状況から、キャッシュフロー(収入-支出の金額)がマイナスになっていないかも確認します。どんなに金利が低い借り入れであっても、返済期間が短いと毎月の元金返済金額が多くなってしまうため、結果的に会社から出ていく資金が多くなります。決算書上は利益が出ているにもかかわらず、純粋な現金収支であるキャッシュフローがマイナスになってしまうと、黒字倒産する可能性が高まります。
不動産担保ローンは、返済期間を中長期にすることができる特長があるため、融資条件によってはキャッシュフローがプラスになることが期待できます。上手に不動産担保ローンを活用することによって、将来的に「信用力」が高まることにもつながるため、担当者には様々な角度からご相談することをおすすめします。

 

個人の場合
個人事業主なのか、給与所得者なのかによって異なります。

  個人事業主  
法人と同じく「事業者」となるため、審査ポイントは類似しています。事業内容のヒヤリングや事業計画書については同じですが、唯一違う項目は決算書です。法人ではないため決算書自体がありませんので、年度末に税務申告をする「確定申告書」の内容から売上や利益などを確認していきます。法人の決算書と比べると、取引先がわかりにくいため、主要取引先を説明したり、固定的な収入がある場合には業務委託契約書等を提出したりして、金融機関担当者が理解できるように工夫をすることも必要になってきます。

  給与所得者  
住宅ローンと同じく、現在の収入や勤続年数、過去に借り入れしたローンの返済状況、他の金融機関からの借り入れ状況がポイントとなります。

  • 現在の収入は、源泉徴収票等から確認することとなります。収入が多いことは重要なことですが、一般的に金融機関は「返済負担率(返済比率ともいいます)」をポイントにしています。「返済負担率」とは、収入に対する借り入れの返済金額の割合であり、高収入であっても返済金額が多い場合には評価が低くなります。
  • 勤続年数からは、継続的に安定収入が得られているかを確認します。「継続的に」という部分が非常に重要です。退職してから転職するまでの期間が長く、無収入状態が長く続くと、返済能力に疑義が生じてしまいます。勤続年数が長ければ、勤め先の会社にとっても有用な人材であることが想像されるため、安定収入が継続する見込みが高いと見なされるでしょう。
  • 過去に借り入れしたローンの返済状況からは、主に延滞履歴を確認します。返済状況は信用情報機関に登録されており、金融機関はその記録を閲覧することができます。連続性のない数回以内の延滞であれば、不注意によるものと捉えられることもありますが、それ以上の場合は返済能力がないと見なされてしまいます。最近は、身近にある携帯電話も割賦販売(分割払い)となり、通話料金と一緒に銀行口座から引き落とされることから、分割払いが遅れていることに気がつかないケースも増えているため注意が必要です。
  • 他の金融機関からの借り入れ状況からは、借り入れ金額や借り入れ先の数を確認します。上記同様、信用情報機関の記録を金融機関が閲覧し、借り入れ状況を確認することとなります。借り入れ金額・借り入れ先が共に多いほど、信用力はマイナスとなります。

法人と同様に個人の場合でも、過去・現在の状況を確認し、将来の返済能力を判断していくこととなりますが、ある程度のリスクを取ることができるノンバンクの不動産担保ローンは、どちらかというと過去よりも将来の返済能力を重視する傾向があります。
個人事業主の場合、現在の取引先とは良好な関係を維持しつつ、更なる業容拡大のために取引先を広げ、利益が増加していく見込みがあることを担当者に説明しましょう。
給与取得者の場合では、何年も前に延滞履歴があるものの現在は安定収入が得られているのであれば、延滞した時の状況を担当者に説明しましょう。当時勤めていた会社が倒産した・親の介護が必要になった等の一過性の理由であれば、柔軟に対応してくれるかもしれません。

  担保となる「不動産」についての審査  

不動産の担保評価は、各金融機関で何を基準にするかが違い、算出方法も「積算価格(原価法)」や「収益還元法」等の様々な手法があります。ここでは一般的な「積算価格」による評価方法を、土地・建物別にご紹介します

 

土地の評価方法
土地の価格には、2種類の指標があります。行政が発表している価格と実勢価格(実際の売買価格)です。
行政が発表している価格の目的・名称・管轄官庁は、下記の4種類です。

  • 相続・贈与税算定のための「路線価」(国税庁)
  • 固定資産税算定のための「固定資産税評価額」(市区町村)
  • 一般の取引価格の目安となる「基準地価」(都道府県)
  • 公共事業の買取価格の目安とした「公示価格」(国土交通省)

「固定資産税評価額」は納税通知書に記載されているため所有者のみが知ることとなりますが、それ以外の数値は公表されているため誰でも閲覧することができます。一般的に、「公示価格」に対し「路線価」は8割程度、「固定資産税評価額」は7割程度と言われています。

 

実勢価格とは、実際に成約した売買事例に基づくものです。
実勢価格を調べる方法として、2つのデータベースが主流となっています。
国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム「レインズ(REINS、Real Estate Information Network Systemの略)」と、不動産専門のデータ会社「株式会社東京カンテイ」がそれぞれデータを保有しており、会員であればデータの閲覧が可能になっています。

 

「行政発表の4つの指標」と「実勢価格」は何が違うのか。
一番のポイントは、「実勢価格」は現在の事例であることに対し、「行政発表の4つの指標」は現在の指標ではない、ということです。例えば、同じ毎年1月1日を基準日とし、「路線価」は7月1日に公表され、「公示地価」は3月下旬に公表されます。基準日から公表までにタイムラグがあるのに加え、その時期は年1回であるため、情報としては古くなってしまいますが、税金算定や公共事業での買取価格の目安を公表することが目的なので、目的に沿った公表時期と言えるでしょう。
金融機関によって採用する指標は違いますが、概ね銀行系は「路線価」「公示価格」、ノンバンク系は「実勢価格」を用いているところが多いようです。また、外部の不動産鑑定会社に鑑定評価を出してもらう、といったプロの目線を導入することもあるようです。

 

建物の評価方法

建物の価格は、主に「再調達価格」を基に算定します。
「再調達価格」とは、同一の建物を新たに建築した場合に必要となる建築コストを指します。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等の構造によって、「再調達価格」は異なります。構造ごとの法定耐用年数から現在の築年数を差し引いた残存法定耐用年数を算出し、それに「再調達価格」と「延べ床面積」を乗じた金額が建物価格となります。従って、法定耐用年数が超過していると建物価格はゼロとなります。
上記はあくまで一般論です。
ご存知のとおり、建物は「メンテナンスが如何にされているか」が重要になります。建築後全くメンテナンスをしていない建物と、定期的にメンテナンスをしている建物では、劣化速度が違うため、法定耐用年数で一括りにしてしまうことは正しいことなのか、ずっと議論されています。近年では新築のようにリノベーションをする工法もありますので、もし建物について大規模な修繕工事を行われた場合には、その資料を金融機関に提出することをおすすめします。

 

最後に、区分マンションについてです。
「固定資産税評価額」は土地と建物に分かれており、それぞれの決まりに従って算出されています。建物は毎年減価償却されていくため、毎年評価額は下がっていきます。
しかし、マンションの「実勢価格」も毎年同じように下がるか、というと必ずしもそうではありません。
立地が良く人気があるエリアのマンションは、築年数が経過していても価格が上昇することがあります。管理状況が良好で、管理費・修繕積立金等のランニングコストも相応であり、大規模修繕もしっかりされていることが加わると尚更です。ヴィンテージマンションと言われているマンションもあります。
従って、マンションの評価方法は「実勢価格」とすることが一般的です。過去のデータも閲覧し、価格形成がどのようにされてきたのかを分析することで、その区分マンションの評価をすることができます。

 

以上、「積算価格」の評価方法についてのご紹介でした。 オフィスビルやアパート等の収益物件と言われている不動産については、「積算価格」に加えて、「収益還元法」という手法が用いられることが多いため、別の機会にご紹介いたします。

  不動産担保ローンの審査を受けるときのポイント  

担保不動産の対象エリアや属性を確認する
金融機関によって対象エリアが異なります。
全国、政令指定都市、首都圏、関西圏など、各金融機関によってバラバラですが、店舗展開している場所を参考にするとおおよその判断はできます。首都圏に店舗が多いのか、関西圏や政令指定都市・全国に店舗があるのかが目安となります。事前にホームページを見るか、直接問合せをして担当者に確認しましょう。
また、不動産の属性によって取り扱いの有無が異なります。
一般的な土地・戸建・区分マンションはほとんどの金融機関が取り扱っていますが、築年数が古い・既存不適格や違反建築など遵法性に問題がある・隣地建物に越境されている又は越境している等のネガティブ要素がある不動産については、対象外としている金融機関もあります。さらに、共有持分や借地、底地など権利関係がやや複雑な不動産となると、選択できる金融機関も一層狭まるため、担当者に確認してみましょう。
アサックスでは、上記のネガティブ要素がある不動産や権利関係が複雑な不動産でも取り扱いをしておりますので、是非お問い合わせください。


必要書類を確認する
「不動産担保ローンの審査を受けるための準備」でもご紹介しましたが、金融機関によって申し込み時に必要となる書類は違います。本人確認書類や収入のわかる書類など、手元にある資料で良い場合もあれば、担保となる不動産の資料を法務局で取得しなければならなかったり、税務署・都道府県税事務所・市区町村役所で納税証明書を取得しなければならなかったりする金融機関もあります。法務局関係の資料や納税証明書については、委任状を提出すれば代理で取得してくれる金融機関もありますので、担当者に確認しましょう。申し込みをする時の必要書類だけを見ても、その金融機関が柔軟に対応してくれるスタンスかを見定められるかもしれません。
アサックスでは、法務局関係の資料や納税証明書の代行取得は行っておりますので、お気軽にお申し付けください。

 

根拠を持った事業計画を作成する
法人や個人事業主の場合には、事業計画書の提出を求められます。金融機関の担当者は、審査に説明をしなければなりませんので、お客様の事業内容や事業の見通し、資金調達後にどのような展開を予測しているのか、返済計画はどう考えているのかといった情報が必要になります。現在までの状況を俯瞰し、資金調達後の将来を見据え、実現可能性の高い事業構想を考える必要があります。書面に記載する方法がわからなければ、担当者に事業構想や計画をキチンと説明することによって、どのように記載すればよいかのアドバイスをくれる金融機関もあるでしょう。また、顧問税理士や中小企業診断士等の専門家が身近にいれば、記載の仕方を教えてくれるかもしれません。


担当者にはなるべく多くの情報を与える
どの金融機関の担当者も、お申し込みいただくお客様とは初めて面談をします。金融機関の担当者は、お客様が初めて不動産担保ローンでの資金調達をご検討されていることを前提に、自社の会社概要や商品説明をお客様にとってわかりやすく説明するでしょう。担当者によっては自社の強み・弱み・有用性なども含めて説明してくれるかもしれません。それと同じように、担当者はお客様のことを知りません。審査に必要となる事項については、質問をしてくれますが、お客様自身が担当者に熱意を持って説明をすることも必要です。お互いに虚偽の説明はせず、お互いがありのままを説明することによって、信頼関係が構築されていきます。資金調達は目的ではありますが、取引関係のスタートでもあります。資金調達後に、信頼関係のある良好な取引関係とするために、申し込み時から将来を見据えて説明するように心掛けるといいでしょう。

  不動産担保ローンの申し込みから借り入れまでの流れ  

事前審査の申込
金融機関の窓口に行くか、直接電話をする又はホームページにある申し込みフォームから申し込みします。

 
本申込
審査結果の連絡を受け、本申し込み手続を行います。郵送手続きのみの金融機関もあれば、来店型・訪問型を選択できる金融機関もあります。その際に金融機関に要請された必要書類も併せて提出します。

 
本審査
不動産の調査及び評価、信用力の調査を行った上で審査をします。事前審査同様に審査スピードに差があります。早ければ2営業日、遅ければ2週間程度かかる金融機関もあります。

 
契約条件の説明
審査により決定した借り入れ条件の説明を受けます。金額を始め、金利・期間・手数料等の諸条件の説明と、契約時に必要となる書類の説明がされます。内容で不明な点があれば、必ず質問し確認しましょう。

 
契約
必要書類を持参の上、金融機関へ訪問し契約します。契約時にも契約書の内容について説明がされます。上記同様不明点があれば、遠慮なく質問をしましょう。

 
借入
金融機関より、指定した銀行口座に融資金が振り込まれます。それと同時に担保となる不動産にあらかじめ合意した抵当権又は根抵当権が設定されます。

  まとめ  

不動産担保ローンの審査基準とポイントをご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。想像していたよりも審査項目や必要書類が多いと感じられたかと思いますが、お客様自身で行っていただくポイントは3つ、「問合せ」「申し込み手続」「契約」です。また、審査ポイントは2つ、「不動産に対する審査」「お客様ご本人に対する審査」です。
審査の早さや申し込み時に必要となる書類については、金融機関によってバラバラですので、事前に担当者にご確認されることをおすすめします。
審査とは画一的なものですが、柔軟な借り入れ条件を提示してくれる金融機関もあります。担当者との会話や質問内容、申し込み時に必要な書類の多さなども含めた様々な情報から、その金融機関のスタンスを確認できるかもしれません。
借り入れ後からお取引が始まることを念頭に、信頼関係を構築することができる金融機関を見つけられるといいですね。

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